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Leica Ic改 If by Hektor
Leica Ic改 If by Hektor

 

Leica Ic改 If

 ERNST LEITZ による純正改造機


Leica Ic If(BD) If(RD)

メーカー ERNST LEITZ GmbH WETZLAR
発売年 1949年(昭和24年)1952年(昭和27年)
  1951年(昭和26年)1952年(昭和27年)
  1952年(昭和27年)1958年(昭和33年)
型 式 布幕フォーカルプレーンシャッターカメラ
フィルム 24×36mm
  (Kodak 136 35mmダブルパーフォレーションフィルム)
レンズマウント L39 Dー39mm Pー1mm
シャッター速度 B・1/30・1/40・1/60・1/100・1/200・1/500
  B・1/30・1/40・1/60・1/100・1/200・1/500
  B・1/25・1/50・1/75・1/100・1/200・1/500
ファインダー 無し・アクセサリーシューへの別付け
大きさ 横幅136×高さ69.5×奥行き30mm
  横幅136.5×高さ69.5×奥行き30mm
  横幅136.5×高さ69.5×奥行き30mm
重さ 380g
  372g
  372g
その他 アクセサリーシュー×2


   


 IcからバージョンアップされたIfブラックダイヤル

 

「 I 型」ライカの不思議

  Leicaには、レンジファインダー(距離計)を省略したモデルが歴代生産されている。
  0(ヌル)型やI(A・B・C)型の時代は最初からレンジファインダーは別付けであったが、1932年2月に発表されたII(D)型で初めて連動距離計つきのLeicaとなる。
   当時はドイツ本国とアメリカではネーミングが違っており、少々解りにくい。
   A型は、当初Leicaと呼ばれていた。後にI型コンパーシャッター付きが発売され、I型と呼ばれるようになった。
   しかし、アメリカでは、Compur付きをB型と名付けてしまい、I型をA型と呼ぶようになった。
   LEITZでは、レンズ交換が出来るモデルもI型と呼んでおり、少々混乱する。アメリカではこのモデルをC型と呼んだ。
   この通例に従い、距離計連動LeicaはドイツではII型、アメリカではD型となる。
  この名前の混乱はスタンダード(E)型、III(F)型、IIIa(G)型と続き、IIIbあるいはIIIc(IIIbはドイツでは市販されていない)から、呼び名が統一されている。
   呼び名が統一されてからは、III型(連動距離計、スローシャッター付き)II型(連動距離計、スローシャッター無)I型(ファインダー無、スローシャッター無)となる。
   毎年のように新型を発表したLEITZでは名前の混乱を避けるため電信コード考え出したのであろう。
  連動距離計が無い I 型やスタンダード型は、高価な連動距離計付きと別に廉価モデルとして生産が継続されていたが、今回紹介する Ic型 If型は、事情が違う。純然とした特殊用途モデルであるとされている。
     カメラの機能として決して省略できないファインダーを取り去ってしまったのだ。
    レンズ付きフィルムにだってファインダーは付いている。顕微鏡や科学実験の記録用カメラとしてもファインダーさえ無いのは不便と思ったのか、アクセサリーシューが2つも付いている。
    おかげで、実用カメラとして使用できるのだが、それにしても不思議なモデルである。
    あまり、この不思議さに言及された文献は見当たらない。
    本当に特定の用途として開発されたのであればアクセサリーシューなど必要ないのだ。
    LEITZでもポストライカとして知られる、電話交換機のカウンター記録用のカメラを製造している。これはレンズ交換どころか、ピント調節さえできない。(必要ないからである)
    同様に、ロボットでも、レコーダーを含む特定用途カメラはファインダーもアクセサリーシューも無いモデルが多数存在する。
    NIKONもTopconもCANONもOLYMPUSも、数えたら切りがないほどのカメラメーカーが特殊用途モデルを生産している。
    何もLEITZが生産する理由は無いのである。しかも、50mm別付けファインダーやレンジファインダーまで生産している。
    Ic や Ifもスタンダード型同様に廉価モデルではないのだろうか?
    M型時代になって発表されたMD型とは、事情が違うように思う。
    本当に特殊用途モデルであれば、レンジファインダーまで売る必要は無いはずである。
    大学や病院、研究所などに納品されたとされるが、管理番号などを刻印された物は少ない。
    逆に II 型や III 型の方に管理番号や所属を刻印やケガキされている物をよく見かける。
    それにしても、 Ic と Ifを合わせて28987台も生産されている。
    MD型MDa型MD-2型の20117より多く製造期間を考えると3倍以上の売れ行きである。
    相当数が民生用に売られているはずである。MD時代にはレンジファインダーは生産していないこともあろうが、その分、ウ゛ィゾフレックスが生産されている。
    民生用の販売を視野にいれ、II 型 III 型への上位機種改造を期待したモデルであったとも思える。


 

Black Dial If

1188台+1のブラックダイヤル 「 I f 」

   この「If」は初期型ブラックダイヤルで、本来なら生産台数1188台という超珍品である。
   しかし、シリアルナンバーの確認で「Ic→If」の純正改造であるようだ。
   当初、「If」発表と同時にLEITZへ改造依頼を出された物かと想像した。
   しかし、あまりにも「Ifブラックダイヤル」の製造期間が短すぎるのだ。
   同時期に「IIf」が生産されているので、もしや?とも思ったが、やはり改造である。
   1年ほど別の改造「If」を探したが、さすがに数が少なく、ようやくもう一台の「Ic改Ifブラックダイヤル」を確認することが出来た。
   「Ic」は「Ifブラックダイヤル」にしか改造できなかった。
  「Ifレッドダイヤル」への改造を引き受けていなかったのである。
    理由は、シャッターの幕速向上が原因ではなかろうか。
  「IIIf」のブラックダイヤルでは、フラッシュバルブ使用時のシンクロ速度は1/30である。いくらフォーカルプレーンシャッターでも遅すぎる。
    軽便なストロボの登場やユーザーの要望により、シンクロ速度を上げる改良が加えられた。
   LEITZでは、対策としてシャッター幕の幕速をあげ、シンクロ速度を1/50秒へと向上させ対応したと思われる。
   このモデルが俗にいわれる「レッドダイヤル」である。
   もちろん、 「Ic改Ifレッドダイヤル」も技術的には、可能であったはずである。
    しかし、シャッター関係の交換があまりにも高額になるため引き受けていなかった、あるいはシャーシーの交換が必要になるになるかもしれない。
    同じ理由で、「IIc」「IIIc」もブラックダイヤルへの改造のみを引き受けている。
    また、「IIIf」改造の際、セルフタイマーの組み込みが可能であるが、シリアルナンバーが425001以降の物でないとセルフタイマーの組み込みができない。 この番号からシャーシーが違うのであろう。
 



  シンクロコンタクトの追加改造はLEITZのみならず、社外でも大変多く行われている。
    純正改造は、「fモデル」と同じ場所にソケットが取り付けられており、ソケットもロック付きの純正品が使用されている。


「Ic改If」の改造箇所

   一目見ただけでは「Ic改If」と判らないほど改造箇所は多い。
   上部で判るのは、シリアルナンバーのみと言って良い。
   軍艦部(トッププレート)は交換されている。それに伴いシャッターダイヤルも「If」の大型ダイヤル。
   目立つところでは、巻き上げノブは、フィルムインジケーター付き。(フィルムカウンターも違いそうだ)
   シャッターボタンもわずかだが形状が異なっている。


「シンクロダイヤル」の使い方

   シンクロダイヤルの設定のついては、あまり紹介されていないので簡単に説明します。
   現在、フラッシュバルブを使用する方はおられないと思いますし、膨大な量のフラッシュバルブのメーカーに対応する表は大変なので割愛させていただきます。
   ブラックダイヤルとレッドダイヤルで設定値が違いますので、注意して下さい。
   「If」や「IIf」のオーナーはさすがに少ないと思いますので、「IIIf」のスロースピードも並記いたしました。
   また、古い機種からのシンクロ改造もコンタクトナンバーの設定が違います。(シャッター幕速が違うため)
(IIf・IIIfへの純正改造でも、トッププレートにコンタクトナンバーを刻印した物とプレートをビス止めした物があります。)
  

ブラックシンクロ(No360001以降の改造を含む)
シャッター・スピード
T,1〜1/20(IIIf)
1/30
コンタクト・ナンバー
6
2
2
ブラックシンクロ改造(No360000以前)
シャッター・スピード
T,1〜1/20(IIIf)
1/30
コンタクト・ナンバー
6.5
4
0
レッドシンクロ
シャッター・スピード
T,1〜1/25(IIIf)
1/50
コンタクト・ナンバー
2
0
20


ブラックダイヤルとレッドダイヤル、コンタクトナンバーはともに0


「Ic改If」の未改造箇所


底蓋の違い

  「Ic改Ifブラックダイヤル」は、底蓋がオリジナルのままである。
  下の写真で判るとおり、「f」シリーズ以降は底蓋にフィルムの安定板が取り付けてある。
  このため「c」シリーズのシャーシーには取り付けができない。
(三脚穴の違いは判断材料になりません。)
   上部からでは判断に苦しむ「Ic改Ifブラックダイヤル」も裏返せばすぐに判る。


シャーシの違い


  LEITZの純正改造機は多いが、「Ic改Ifブラックダイヤル」の改造はどの程度行われたのだろうか。
   比較的製造台数が多い「Ic」とはいえ、12013台ほどである。
    そのうち、フラッシュシンクロが必要だった人がこの改造を行ったわけだが、その数は決して多くはないだろう。
    事実、改造品とはいえ、「Ifブラックダイヤル」 に行き会うことは稀である。
    しかも、現在ではこの改造は実施できない。

   意外と使い易い「Ic改If」。
   距離計と連動しないが、思い切ってアクセサリーシューに2つの単独ファインダーを付けてしまうのも良い。
   単独ファインダーの種類により2つ装着できない物もあるが、50mmと35mmといった組み合わせで使用するとスナップショットには都合が良い。
   単独ファインダーの視界の良さに助けられて、M3のファインダーさえ見難く感じるほどである。
   標準レンズから広角レンズを使用するのであれば、絞り込んで撮影すれば目測で十分に実用になる。
   1/500秒までのシャッター速度も通常に使用する分にはデメリットにはならない。

 

参考文献
 
ライカ ポケットブック日本版 Dennis Laney編 田中長徳 訳 アルファベータ
ISBN4-87198-513-X


復刻版 ライカの歴史 写真工業別冊 中川一夫 著 写真工業出版社
雑誌 04420-11

クラシックカメラ選書 9 朝日ソノラマ
新バルナック型ライカのすべて 中村信一 著
ISBN4-257-12019-3

取材協力
SSスタジオ 群馬県太田市新井町 TEL:0276-45-2192