ちょっクラ
ピンぼけ
Calypso by Hektor
Calypso by Hektor
1961(昭和36)年
カリプソ(Calypso)(スピロテクニーク社)
¥ 不 明
世界最小 、最軽量の本格的水中カメラ。
スピロテクニーク(LA SPIROTECHNIQUE)社は、フランスの潜水用具メーカーであり、 現在のシー&シーなどが水中カメラを販売しているのと同様に、必要に迫られて、設計、製造したのではないか?
 製造台数は不明 ただし、「ニコノス」の輸出仕様に「Calypso / Nikkor」がある。
もちろん、こちらは、日本光学製であり、「カリプソ」とは、別物。
「カリプソ」の由来
 仏海軍退役大佐ジャック・クストー氏の海洋調査船「カリプソ」に由来する。
 クストー氏は、アクアラングの発明者であり、海洋研究の第一人者として活躍しており、この名前から設計に携わったとの標記する本を見うけるが、どうであろう?
 開発、設計と言うより、スピロテクニーク社に、このカメラの作製を依頼したのかもしれない。
 日本でも、映画「沈黙の世界」やTVシリーズ「カリプソ号の冒険」などが公開されていた。
「カリプソ」は、スペック的には1/1000を備えているが、 後期型(シリアルナンバーは不明)から1/500に変更されている。
もちろん、「ニコノス」でも、1/500にスペックダウンしている。
特徴的な「カリプソ」の片持式の縦走りフォーカルプレーン・シャッターには、無理があったのか?
当時の日本光学はコパル社の縦走り金属幕シャッターを採用していたが、コパル社やセイコー社には、売れるかどうかわからない?
(文字どうり、海のものとも山のものともつかないとはこの事か?)
このような特殊なシャッターを開発する意義(余裕)が無かったのではないだろうか?
1/1000秒の実現は「ニコノスIV」まで、待つことになる。
 「カリプソ」には、交換レンズが3種類確認されている。
(注:発表されただけで、すべてが生産されたかは、不明である。)
・35/3.5 SOM Berthiot Flor(標準レンズ)
・28mm SOM Berthiot
・45mm Angenieux
以上の3本である(フランス語なのでなんて読むかわかりません)
 なぜ、生産を疑うかと言うと、拝見した資料には、28mmと45mmには、開放F値が、書かれていないのである。
 もし、生産されたとしても、「カリプソ」発売後、開発等に手間取り、相当遅れて生産されたと思われる。
 また、専用フラッシュも発表されている。
 こちらは、数が少ないが、確実に作られたと思われる。
 なぜなら、「カリプソ号の冒険」に、巨大なフラッシュを持ったダイバーが映っていたと記憶している。
(学術用には、絶対に必要である。もしかしたら試作品または、スペシャルモデルとも考えられるが・・・)
 「カリプソ号の冒険」では、ムービー撮影のため、水中トーチも多用されている。
「カリプソ」の外観
「カリプソ」は一般的に見ても、独特な形をしている。
新規に開発したと思われる、縦走りフォーカルプレーン・シャッターは スーパー・ジュラルミン(商標名ではあるが、便宜上、使用します) 製の2枚羽根を採用したため、背が高く、横幅が少ない。
ほとんど、真四角とも見えるカメラである。
ケース(一般的にはボディか?)は、黒い結晶塗装風の仕上げがなされるが、海水中の使用に対してすべり止めの役割でもさせたのだろうか?
 また、製造番号は不明であるが、1/1000モデルに「ニコノス」 同様のブラックペイント風の仕上げも確認している。
 *こちらが最初期モデルだと思う。
 そして、1/500モデルもあるので、最低でも、「カリプソ」には、3種類のモデルが存在することになる。
 張り皮も特別なもので、グレーのビニールに立て溝がランダムに刻まれている。
 これも、デザインとして、背面中央にむかって流れ、明らかに、水生動物(アザラシなど)の毛皮をモチーフにしていると思われる。
 正面、レンズ下に「Calypso」のネームが付くが、レンズの下にモデルネームや会社名を入れたカメラというのも珍しい。
 しかも、もっとも、ネームを記入しやすい、ファインダー上面には、一切の刻印さえない!
 もしかしたら、ライカコピーと言われるのを避けたと思われるがいかがだろうか?
「Calypso」のロゴも非常に特徴的なデザインで、ロゴの右に4つの波が描かれている。
 このため、「カリプソ」の文字そのものはセンターにきていない、が、違和感がないのは、このロゴのデザイン性の高さであろう。
 結果的にこのモデルのみで、この美しいデザインが消滅してしまったのは、残念である。
 先のブラックペイントモデルが最初期と思われるのは、このロゴが直に刻印されているところである。
 結晶塗装モデルは、プレートに印刷され、張りつけられている。
 また、レンズキャップには、別の書体で「Calypso PHOT」とマークされている。(このレンズキャップのほうが珍品だろう)
 ボディ背面には、信じられない程の大きさで「MADE IN FRANCE」の刻印がある。
「ニコノス」の開発では、ケースの鋳造時に出来るピンホールを埋めるため、含浸処理と言う特殊な製法を行なったといわれている。
 にも係らず、こうした、刻印を彫る事が「カリプソ」にとって良いこととは思われ無い。
「カリプソ」では、特殊な塗装を施したとの話も聞いているが、塗装で保護したのであれば、なおさら、刻印を彫るべきで無い。
 それとも、含浸処理は、「カリプソ」時代から行なわれていたのかもしれない。
 こうした、特殊な加工は、カメラ製造の専門ではない、スピロテクニーク社に製造を断念させたのではないか?
 それとも、「カリプソ」では、ピンホールの出来にくい鍛造で、作製していたのだろうか?と、すれば、非常に高価なケース となり、これが日本光学への技術提携への原因になったとも考えられる。
 レンズも鏡胴に見えるケースは、アルミニューム合金の削り出しに見える。
 「ニコノス」との違いは、前面ガラスが、ケースの最前面に装着されており、フィルターねじの部分が無い。
 また、正面から見ると、レンズ前面パネルは、四角形に切り抜かれており、デザイン的な処置と思われる。
 距離調整ノブと絞り調整ノブからは、白い矢印で誘導表示がなされる。
(「ニコノス」で廃止され、「ニコノスII」で復活する)
 アクセサリー・シューも美しい切削痕が磨き出されている。
 ここにシリアルナンバーが刻印されている。
 シャッター及び巻き上げレバーは黒いプラスティック製。
 レバーのロックは、単純明快にレバーそのものを固定する方式で、白いアルミニュームの削り出しで、作製されている。
 同じ素材を使用しているシャッターダイヤルや巻き戻しノブは、サンドブラストによる、梨地仕上げのようだ。
 この様に、「カリプソ」は、黒を基調にアルミの白が配置されたとても美しいカメラである。
 (さしずめ現代なら「パンダ」モデルといったところか?)
 しかし、残念ながら、白黒写真を見ながら、遠い記憶の銀座ショウウィンドを思い出しながらの説明では、この程度の説明が限界です。
 すでにコレクターズ・アイテムとなって久しい、「カリプソ」。
 この貴重なカメラを所有している友人は無く。ましてや、私に入手出来る可能性は皆無です。
 どうか、「カリプソ」コレクターの方で、写真を貸していただける方が居りましたら、ぜひ、メールを下さい。
 もちろん、所有者のご要望のとおりに掲載いたします。
 (所有者のクレジットを入れる・流用禁止のための斜線を入れる・シリアルナンバーを隠す等)

 カリプソの写真をお借り出来ないか?との、依頼についに、6台ものコレクションを公開していただける方がおりました。
 埼玉県のコレクター氏で、実にカリプソ4台、カリプソニッコール2台という。カメラ博物館でさえ、お目にかかれそうに無いコレクションです。
 写真のご提供に感謝します。
 
 前4台が(オリジナル)カリプソ。中央後が、カリプソニッコール(ニコノスIIのヨーロッパ向け輸出モデル)
 カリプソは、4台とも仕上げに違いが見られる。中でも左から2番目前列は、藍色の結晶塗装である。
 色の違いは、一番左がグレーのモデル。左から3番目(前列右)は、ブラック。銘板も違いがある。
 写真最前列は、フロントレンズキャップと中央はビューファインダー。その後方は、リアレンズキャップである。
 左のモデルは、陸上用皮ケース付きの珍しいコレクション。
 カリプソ 3種。
 マリンブルー、ブラック、ダークグレーの仕上げの違いがある。またネームのエングレーブと銘板も違いがある。
 グレーモデルのみ、銘板が付いているが、エングレーブのモデルがあるのかは不明。以前、見かけたカリプソ(グレー)も銘板付きであった。
 カラーの違いは、生産時期の違いもあるかもしれない。
 張り革は、同じである。
 特徴的な、レンズ開口部の四角形とフィルターねじの切っていないカバーグラスは、すべての同じである。レンズは、生産期間中に変更は無かったと思われる。
 写真下は、カリプソ/ニッコール=ニコノスIIのヨーロッパ輸出仕様。
 銘板のみの違い。CALYPSO/NIKKORには、I型およびIII型も存在する。

 貴重なカリプソ用陸上ケース。往年のドイツコダックを思わせる、立派なレザーケースだ。
 もし、このケースを手に入れたら、中に入れるカリプソが欲しくなるに違い無い!
 ケース下部には、フラッシュ接点用の穴が開いている。しかし、カリプソ専用のフラッシュでないと、装着出来無いはずである。巨大な水中フラッシュを使用したのだろうか?
 この他にも、アクセサリーがあったと思われるが、すでに、幻のカメラとなって久しいCalypso。今後も、資料が入手出来しだい、レポートを続けたい。

 追記;このカリプソを入手したフランス人コレクター氏からメールがあり、このカリプソの張り皮が故意に剥がされた物か、または、このような皮の張っていないモデルがあったのか、現在、調査中とのこと。
 調査結果が報告され次第、ご報告いたします。


カリプソ+LWニッコール

またしても、貴重な情報をいただいた。
「れんずまにあ」さんから提供いただいた写真は、カリプソとニコノスのレンズ完全交換の事実を証明する貴重な写真である。
左の写真は、初期型の1/1000秒シャッターを持つカリプソに、LWニッコール28mm f2.8 を装着した写真である。
もちろん、相互に装着できるという記事は読んで知っていたが、こうして写真を見せられると、さすがに驚きを隠せない。
1961年に発表されたカリプソと遥か極東の日本光学製レンズが使えるのだ。
何を今さら、といわれるかもしれないが、2001年製のレンズが着くのである。
実に40年間もの永きに渡り、レンズマウントが不変であった事実が驚異的である。

ニコノス+ベルチオフロール

こちらはニコノスVにベルチオフロール35mm f3.5 を装着した写真。

改めて、スピロテークス社の設計の確かさを感じる。
特殊用途のカメラとはいえ、これはどの間、実用されるとは、設計者自身、考えもつかなかったであろう。
そのニコノスも、2001年を最後に姿を消してしまった。
ニコノスRSがあまりにも高価だったこと、そして、デジタル写真の時代になったこと。
こうした時代背景に原因することであろう。

ダイバーのみならず、NIKONOS-Dの登場に期待したい。

「れんずまにあ」さんからまたしても貴重な情報をいただいた。

 カリプソとニコノスIの直接比較である。
 レンズマウントは、ニコノスVまで不変であるので、前回の情報どおり交換性がある。
 しかも、フラッシュ接点まで同一だという。
 とすれば、三脚穴の無いカリプソに、ニコノスのソケットカバーを取り付ければ、三脚が使えることになる。
(今や水中カメラとしての実用性は無いカリプソであるが、スローシャッター使用時には役に立つであろう)
 ただし、ニコノスIIまでは、接点形状が同じだが、ニコノスIIIから変更になっていると思う。
 III以降のストロボユニットを使う場合は、変換アダプター(NIKONから純正パーツとして出ていたと思う。入手は困難であろうが不可能では無いだろう)が必要になる。

 アウターシェルの交換性は無いとのこと。
 カリプソとニコノスでは、フィルムカウンターの構造が違うためらしい。
 カリプソでは、シェル側にフィルムカウンターの表示が固定されており、シャーシ側の指針が回転し、撮影枚数を表示する。
 それに対し、ニコノスでは、指針をシェル側に固定して、シャシー側の円形表示板が回転して表示する方法になっている。
 確証はないのだが、カリプソには、回転表示板式のモデルは無かったのだろうか?
 この表示形式の変更は大変有意義な変更である。
 思考能力が低下する水中では、動き回る指針を探してカウンターを読むより、固定された指針のカウンターを読む方が的確に撮影枚数を把握できたはずである。
(あの小さな窓から小さな数字を読むこと自体が、大変なことであるが、潜水ケースに入れたカメラでは撮影枚数を確認することさえできなかった時代である。)
 こうした改良の結果であろうか、シャーシやパトローネ室など同一だというが、シャーシ下部の 固定ピンの数がニコノスの方が多いという。
 また、フィルム圧板は、中央に直径10mmの穴があいており、フォーカルプレーンシャッターの動きが確認できるという。
 この穴は何のためであろう。通常、こうした位置に穴があるのは、製造時のピント確認および調整であることが多い。
 しかし、カリプソはアウターシェルに穴は無い(構造上開けられない)昔のLeicaではないのだ。
 考えられるのは、ダミーシェルを使用して、シャーシのピント調節(確認)を行った可能性があるが、あまり意味が無いであろう。
 もう一つは、カリプソの特徴的なフォーカルプレーンシャッターの調整である。
 構造上、狂いが生じやすいであろうし、出荷時に調整したのではないだろうか?
 アマチュアの使用より、学術研究用の性格が強いカリプソにとって、シャッタースピードの調整は不可欠といえる。
 フィルム圧板を外さずにシャッタースピードに調節を行う必要があったのではないだろうか?

 ファインダーのフレーム表示もカリプソには施されていないという。
 ニコノス Iでは、アルバダファインダーにブライトフレームが入っており、近距離撮影時のパララックス調整表示もある。
 カリプソでは、素通しファインダーよろしく、何も無いという。
 全て勘で撮影ということか?というより、芸術写真のようなフレーミングなど必要ないとばかりにあえて、付けなかったのではないだろうか。
 しかし、ニコノスは立場が違う。あくまで、オールウェザーカメラである。
 もちろん、日本光学の設計陣のプライドもあったろう。
 見比べると、カリプソの方が明るくはっきりと見えるという。
 しかし、ニコノスIの窒素封入ファインダーは、既に曇っているものが多いのも事実である。
 しかも、オーバーホールもできない。大変残念なことである。


カリプソのバリエーション情報が「きこり」さんから寄せられた!

続Calypso