錬金術




                              2019.2.1

年を取る度に時のたつのがどんどん速くなると、よく母が言っていました

が、その母と同じ年齢に達した私も、時間の速さを実感しています。

今年も二月を迎えました。


人生の時間は、過ぎてしまえばあっという間の出来事ですが、

刻まれた記憶を紐解いていくとき、たくさんのことが起きていて色あせる

ことなく残されていることに驚きます。

過去を見るためだけに記憶を遡るのではありません。

今を最高に生き、起きてくる出来事に立ち向かったり、病を克服したり、

夢を実現することを妨げている部分の多くが、過去にした選択や出来事

と深く関連しているからなのです。


人生の苦しみ・悲しみ・恨み・孤独・絶望などの感情が渦巻く記憶の数々

は、何層ものオーラフィールドを埋めつくしてしまう程です。

この一つ一つを解放していくプロセスは、命が蘇るように感じます。

苦しみというのは、魂が光を取り戻すための生みの苦しみのようにも思え

てきます。


この間、ネルソン・マンデラ氏のことを思い出していました。

南アフリカ共和国の第8代大統領で、ノーベル平和賞を受賞し世界平和に

貢献した方なのでよくご存知かと思います。

人種差別と闘い続け、27年もの間、国家反逆罪に問われ投獄されました。

その後、黒人と白人の全国民による大統領選挙で黒人初の大統領となり

ました。


以前、「インビクタス」という映画でマンデラ氏のことを知りました。

投獄の間もそれ以前も、ずっと黒人として差別を受けてきた彼が大統領に

なった時、白人の補佐官を始め全ての白人たちを暖かく受け入れました。

彼と同様、迫害を受けてきた彼の家族は、そんな彼のことが理解できずに

いました。過去を受け入れることは、決して簡単なことではないからです。

そのためマンデラ氏は孤独な日々が続きましたが、その態度を変えること

はありませんでした。誰よりもその差別や迫害を受けることの苦悩を知る

人だからこそ、それを人にして返すことが出来なかっただろうと思います。


彼は恐ろしい迫害という錬金術をくぐりぬけ、とうとう魂の金を創り上げたの

です。死の淵にあって、生きるということ、人であるということ、それが何を意

味するのかを知ったのだと思います。

奴隷や物のように扱われたり、尊重されないまま生きていくということが、ど

れほど魂や精神を蝕んでしまうことでしょう。

そんな中から人としての尊厳を守るために、何度も立ち上がりました。



その映画の中で出てきた彼の言葉を書き留めておきました。


    夜より出でて私を蔽う
   
    奈落のごとき漆黒の闇

    どんな神であれ感謝する

    征服されざる我が魂

    過酷の魔の手に落ちてなお

    私は怯みも叫びもしなかった

    運命に打ちのめされ

    頭が血にまみれようと 決して屈しまい

    怒りと涙尽きぬ この地のかなた

    死の影が恐怖をほのめかす

    だが幾年月 脅威にさらされようと

    私は何一つとして恐れはしない

    その門がいかに狭くとも

    いかなる苦しみを負うことになろうとも

    私が 我が運命の支配者

    我が魂の指揮官なのだ 






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