Guild(ギルド) GAD-50 < 音楽とギターとわたし




  











押尾コータローのいわゆる『叩き系』の曲である「太陽のダンス」と「Splash」を練習するようになってから、「やはり叩き系をやるなら、ドレッドノートが一本欲しい」と思うようになった。それまではマーチンでいうところの000タイプのボディを持つアストリアスのE.C.シリーズのギター2本のみで10年近く演奏してきたからである。

ただし、一口に「ドレッドノート」と言っても種類や価格帯は千差万別である。どれが「叩き系」に向いているのかよく分からない。

ギターショップや同好の士のギターを弾く機会があれば出来る限り触らせてもらい、自分が求めている音がどんなものなのか探っていった。いろいろと弾きくらべているうちに、押尾コータローの曲は音数が多いので、鳴りのよい個体より一音一音がはっきり別れて聴こえるタイプの音色の出るギターを使う方が、曲としてきれいに聴こえるのではないか・・・と考えるようになった。

ちなみに試奏のスタイルは、まずネックやサドル、ナット、フレットの状態をしげしげと眺め、次にEコードをジャランと弾き、その後店員さんにひとこと断ってからDADGADにチューニングして「Splash」のイントロを軽く弾いてみるというパターンである。また、低音弦の反応はDADGADチューニングのまま左手で5弦と6弦の3フレットと5フレットを交互にタッピングした時の反応を見て判断した。タッピングの音が「ドン!」と来る感じであれば、5,6弦のタッピングを「ボン、ボン、ボン・・・」と続けながら、1、2弦をシャラシャラ弾いてみてメロディーがきれいに抜けてくるかどうか弦音のバランスをチェックする、というやり方である。



さて。
アストリアスにはD. Pre Warをはじめとするドレッドノートのラインナップがあるので、当然最初のターゲットはアストリアスのドレッドノートに絞った。しかし、地元のギターショップにはまったく在庫がないため、東京や関西に行く機会があると時間を作ってギターショップへ立ち寄るようにしていた。Dカレント、Dプリウォー、Dカスタム、Dカントリー、果ては特注のハカランダモデルまで試奏してみたが、ピンと来る個体に会えなかった。

本当は手持ちのギターと同じ装飾とスペックでドレッドノートのボディを持つ、アストリアスのフォークギター最初期に製造された「ヘリンボーン・ドレッドノート」を狙っていた。ここ2年ぐらい探し続けているのだが、初期物のアストリアスはなかなかインターネットやオークションに姿を現さない。

アストリアスのドレッドノートは1弦から6弦までのバランスがよく、また倍音が出過ぎないために音の分離感があり、フィンガーピッキングに向いていると感じる。なにより手が小さめのわたしにとってネックの形状と側面の仕上げが絶妙で、親指で6弦を押えたりする場合でも弾きやすいことから魅力的だ。押尾コータローでは左手親指で6弦を押えることもあり、ネックの状態は弾きやすさにかなり影響する。

ただし、アストリアスのギターはドレッドノートでもアストリアスらしく上品で落ち着いた音色であることと、手持ちのE.C.ボディのギターでもそこそこガッツのある低音が出てくれるので、そのギターと音色のキャラクターがかぶってしまう点が気になった。試奏で弾く本数が増えていくにつれ、アストリアスとは違うギターが本命ではないか・・・と思うようになった。もし一本目のギターとして買うのであれば、アストリアスのドレッドノートはコストパフォーマンスが高く、かつ弾きやすいので、悪くない選択と思われる。


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ある日、地元でお世話になっているギターショップ「ウッドスピリッツ」さんにふらりと立ち寄り、ドレッドノートをいろいろと弾かせてもらった。ここのお店は試奏大歓迎で、かつキャラクターの違うギターがいろいろと揃えてあるので、試奏していて時が経つのを忘れてしまう。ヘッドウェイ、マーチン、サンタクルーズ、ボジョア、キソ・クライン、ギャリソン、ギブソン、旧Sヤイリ、ギルドと弾かせてもらった。このうち特に低音弦の音の出方の印象から、旧Sヤイリギルドの音が好みと感じた。

旧S.ヤイリはインターネットでよく目にするし、ギターファンの間でも評価が高いようである。また、アストリアスと旧S.yairiのギターはエンドブロックのところになぜか四角い板が貼り付けてあるという共通点があり、どこか設計思想が相通ずるところがあるのでは・・・と勝手に推測していたメーカーであり、親近感がある。



S.yairi YD-304 Sヤイリ アストリアス ヘリンボーン・オーディトリアム
左:S.yairi(S.ヤイリ) YD-304(提供:ギター図鑑)、右:Asturias(アストリアス) ヘリンボーン・オーディトリアム
S.ヤイリとアストリアスのギターのネックブロックの中心にはなぜか薄い板が貼り付けてある。
他のメーカーのギターには見られない特徴。





一方、ギルドについてはまったく意識していないメーカーだった。ただ、サイモン&ガーファンクルからギターの世界に入った自分の音楽履歴を考えると、ポール・サイモンが使用していたギターがギルドだったので、しらずしらずのうちにギルドの音に感化されていたのかもしれない。また、ギター仲間が持っているギルドD-55を弾かせてもらった時にも低音弦の出方がいいなぁ、と感じたのを思い出した。



それから半年ほど過ぎた頃、ギター仲間から「ウッドスピリッツに安くていい音のするドレッドノートが入荷したらしい。」という情報が入った。すぐには行けなかったので、しばらくしてからお店に行ってみると、まだそのギターは売れていなかった。先日試奏して気になっていた旧Sヤイリは売れてしまったのだという。話を聞いてみると、「安くていい音のするギター」はギルドだった。ただし、「Made in China」、すなわち中国製の「GAD-50」というモデルである。どんな製造業でも中国製は脅威の今日この頃であるが、ギターの世界も例外ではないようだ。しかも、オール単板のモデルだという。それが10万円なのだから、すごいコストパフォーマンスである。

「どうぞ・・・」と渡されてボディを見ると、ヘッドはギルドだが、トップは白いし、ピックガードは透明、バインディングはウッドでギルドらしくない。逆にセルバインディング、大きなピックガード、過度な装飾が嫌いなわたしにとっては好みのデザインである。

試しに弾いてみると、「おっ!」と感じるところがあった。ネックの感じも悪くないし、高音弦もそこそこ響いてくれる。定価が102900円(ハードケース込み)のギターだからあまり期待していなかったのだが、期待以上の音色とつくりである。

音色に関しては低音弦はボワンとしてややワイルドな鳴り方だが、高音弦はきっちり抜けてくるすっきりした音色。サウンドホールのふちから見えるトップは見るからに厚いし(これは補強板のためであることが後ほど判明した)、全体にがっちりした作りで叩いても壊れなさそうだったので、思い切って購入することにした。子供がまだ小さいので、叩かれたりマジックで落書きされたり倒されたりしてもショックが小さいということも大事な理由である。高価なギターは思い切って叩けないものだが、これなら大丈夫であろう。前回ギターを買ったのが1997年初めだったから、ギターを買うのは8年ぶりである。



家に帰ってアストリアスと弾き比べると、音色や倍音の響き方がかなり違う。かなり弾きこんだアストリアスと新品のギルドを比べるのは酷だが、このギルドを弾いてアストリアスの音色のよさがよく分かった。

箱鳴りの効いた落ち着いた音色で、どちらかというと「癒し系」の印象があるアストリアスと比べ、今回購入したギルドはちょっと悪っぽくてガッツのある音がする。アストリアスは軽く弾いてもよく響くが、このギルドは低音弦をしっかりピッキングしてあげないと高音弦と低音弦の音色のバランスが取りにくい。2ストロークのバイクと同じで、ある回転数域までグワッとパワーをかけることで、ようやく本来の力を発揮するような感触である。そういう特性のために、今のところ「弾くのに体力を使うギター」という印象であるが、000タイプのアストリアスからは出てこない深みのある低音には満足している。



ギターを購入してからこの「GAD-50」に関して調べてみた。2004年1月にアメリカで発売され、日本では2004年10月に発売予定となっていたことが分かった。日本人の個人のページではまったく情報が出ておらず、ショップの情報のみである。フェンダージャパンに問い合わせたところ、正規輸入された本数は50本前後ということであった。


ギルドは1997年にフェンダーに買収されたのだが、その影響かアコースティックギターにはあまり力が入っていないようだ。日本のフェンダー・ジャパンのHP内にあるギルドのページはなんといまだに「工事中」であり、ギルドのギターを日本で販売したいという意思が感じられない。さすがに本国アメリカのHPにはスペックが出ていたが、10万円のギターとは思えないほどしっかりしたスペックである。実際、塗装がやや厚めであることとグローバーのペグの遊びが大きすぎてレスポンスが悪い点を除けば、あまり気になる問題はない。


なお、スペックは以下の通り。

MODEL NAME: GAD-50
TOP: Solid Sitka Spruce (トップ:シトカ・スプルース)
BRACING : Guild Scalloped (ギルド・スキャロップド・ブレーシング)
BACK : Solid Indian Rosewood  (裏板:インディアン・ローズウッド単板)
SIDES : Solid Indian Rosewood (側板:インディアン・ローズウッド単板)
NECK : 1-Piece Mahogany (1ピース・マホガニー)
FRETBOARD : Indian Rosewood (12" Radius) (インディアン・ローズウッド)
MACHINE HEADS : Grover Rotomatic Die-cast Tuners (グローバー)
BRIDGE : Indian Rosewood Pin Bridge (インディアン・ローズウッド)
FINISH : High Gloss (Polyester)  (塗装:ポリエステル)
UNIQUE FEATURES : Dovetail Neck Joint,
Ebony Bridge Pins with MOP Dots,(エボニー・ブリッジピン)
Ebony End Pin with MOP Dot,(エボニー・エンドピン)
Bone Nut and Saddle,(ナット、サドル:骨)
Mahogany Body Bindings,(バインディング:マホガニー)
Clear Pickguard,(透明ピックガード)
Back Center Wood Mosaic Inlay (裏板中心に木のモザイクインレイ)

なお、店長のお話では透明ピックガードは簡単に剥がせて、粘着材が残りにくいということであった。当初はピックガードを剥がそうと思っていたが、わりと小さめだったのでそのまま残すことにした。



手持ちのアコギマガジンの新製品紹介を調べていたら、アコースティック・ギター・マガジン22号のP.150にレビューがあった。試奏した有田純弘氏によれば、「あまり派手な倍音がない分、中低域にしっかりとしたまとまり感があって、アルペジオなんかに暖かみが出ますね。」とコメントされており、わたしの印象とよく似ているようだ。


アメリカのサイトではGAD-50のレビューがあり、そこでもこの中国製ギターは評価が高いようである。

・MUSIC123
 レビュー

・SAME DAY MUSIC
 レビュー





最近、ヘッドウェイの中国製ドレッドノートを試奏する機会があった。このギターはGAD-50ほど低音は強く鳴らないが、GAD-50と似たやや甘めの音色と弾きやすいネック&弦高設定となっていて、よく考えて作られている印象を受けた。日本メーカーは中国製に負けないよう頑張って欲しいものである。









Guild GAD-50 top back


トップとバック。シンプルなデザイン。













ヘッド。ペグはグローバー。











ネックジョイント部分。(ストラップピンは後から付けたものです。)
バインディングはマホガニーを使用。















バインディング。










1ピースのマホガニーネック。










エンドピン周辺部。












トップの木目。











サウンドホール周辺部。トップは非常に厚く見えますが、実際は補強板が貼ってありました。(単板仕様) しかし、見た目は厚い合板ですね。







Guild GAD-50 Serial number








ラベルとシリアル番号。ネックブロックにも「0505250031」のスタンプあり。
2005年5月25日製造、シリアル0031でしょうか?






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