杓子山、石割山

行程 (着/発)(+++:電車、===:バス、---:徒歩)

◆1月3日
立川(5:50) +++ 高尾(6:10/6:15) +++ 大月(6:52/6:54) +++ 富士吉田(7:39/7:45) === お宮橋(8:10/8:15) --- 飯盛山(高座山)(9:25/9:45) --- 杓子山(10:50/11:15) --- 鹿留山(11:50/12:00) --- 内野峠(12:55/13:00) --- 二十曲峠(13:40/13:45) --- 石割山(14:20)(テント泊)

◆1月4日
石割山(7:30) --- 分岐点(8:25/8:30) --- 山伏峠(8:50) --- 高指山(9:55/10:30) --- 鉄砲木ノ頭(明神山)(11:50/12:05) --- 三国山(12:40/12:45) --- 大洞山(13:35/13:45) --- アザミ平(14:10) --- 籠坂峠(14:40/14:58) === 御殿場(15:30/15:38) +++ 国府津(16:28/16:39) +++ 川崎(17:41)

山日記

「ばっかじゃないの!」
僕が正月に山登りに行くと言うと君は決まってそう言う。「なにも正月早々、山なんかに行かなくていいんでないの!」「御来光だったらアパートの屋上で見たら?」と山登りしない人間というのは本当に素っ気ないことを言う、味気ない事をことを言う。
ただ僕としても元旦に山で御来光を見たいのはやまやまだけど大晦日にコタツで紅白を見ながらの年越しそば。。。元旦は朝風呂に入り、髭をそってサッパリとした気持ちでおせち料理というのもやっぱり捨てがたい、なにも元旦を汗臭い格好で迎えるなんてことは。。。という訳で今年もとりあえず元旦は家に居てその後に山登りに行くことにしたのだ。
年初めに見る山、やっぱ、正月は富士山でしょう!という訳で日本人の由緒正しき正月登山は富士山を見に行くで決まりなのだ。
昨年最後の山行に引き続き、早くも富士山包囲網山行の第二段になってしまうのだ。

お宮橋でバスを降りると橋の上で数人の人がカメラを構えていた。レンズが狙う先を見ると、オーッ!良い感じだ。真っ白に霜が降りた川辺、緩やかな水の流れの先には富士山の姿。グレートだぜ!ビックだぜ!やっぱ正月は富士だぜぇ!と早くもご満悦の僕。


富士山を背にして高座山へ向う道 足元は霜で真っ白だけど日差しが温かな日でした
ところで高座山へはどう行くんだろうか?たいていの場所には案内板があったりするけどここには無かったので地図で道を確認しながら進むことにした。
舗装された道路を進んでいくと地元の人が作ったらしい小さな標示が所々にポツポツとあった。それに導かれるように歩いて行くと一旦、舗装された道路に出て鳥居地峠に着き、そこからは広い林道を歩く。しばらく歩くと「高座山Cコース」と標示があり、そこからいよいよ登山道になった。
富士山を背にして登って行くと北の方角には先月登った三ッ峠山が見えてきた。山頂にアンテナが立っているので直ぐに見分けがつく山だ。
やがて目の前が開けて広いカヤトの原、その奥に高座山が現われた。
今日は東京でも最高気温が14℃の予報が出ていたくらいだから天気が良く温かい。こんな温かい日にカヤトの中を歩くのは本当に気持ちが良い。ただこの登山道、平坦な箇所は平坦なんだけれど登りはすごく急な道だ。つまずいて転んだりしたらゴロゴロと下まで転がっていきそうな道を登っていくと高座山山頂に到着。
山頂の真中には測量用らしいポールが一本立っているのがちょっとジャマだけれど富士山の展望は良い。まだ少ししか登っていないのにこの展望!この富士山のでっかさ!。。。グレートだぜ!ビックだぜ!ってこれ、さっき言ったな。
でぇ、ここで休憩にしても良いのだけれど奥には更に高い杓子山が見える。もうこうなったらもっとでっかい富士山を見るしかないでしょう!という訳でちょっとだけ休んで杓子山へ向かう。
杓子山へは一旦、地図に展望地とある箇所まで下って再び登って行く。なるほどここは展望地というだけあって富士山の展望が良く数人が休憩していた。
失敗したと思った。ズボンの下に防寒用タイツをはいて来たらこれが暑くてたまらない。汗が額から噴出す。今日の陽気のせいもあるが、ザックの中の水4リットルが重たいのも原因の一つだ。周りに人がいるので脱ぐことが出来ず我慢して歩いた。
今年最初のトホホになった。

高座山からの富士山。カヤトの原が黄金色に輝いて。。。気持ち良い
グレートだぜ!ビックだぜ!ってまた言ってしまっても良いだろ?。なにしろ杓子山山頂は高座山以上の富士山好展望台だったのでしつこいと分かっていても言ってしまうのだ。
それに展望が良いのは富士山だけではない、富士山の右側には銀色に輝く富士吉田市街地、ぐるりと御坂山地、白く雪に覆われた南アルプス、それから左側には山中湖、明日登る予定の三国山と素晴らしい眺望だ。山頂には木のテーブルが二つ設置してあり、20人くらいの人が休憩していた。

杓子山山頂 この景色を見ながら昼食、単純に良いと思う。これしか言えんわ!
この山は下の展望地からピストンする人、これは家族づれが多い。それと高座山-杓子山-鹿留山とミニ縦走して平野に降りる人とに二分されるようだ。
ただ皆に共通なのはもうここでは全ての人がお弁当タイム、おまちかねタイムなのだ。こんなポカポカ陽気の日に富士山を眺めながらの昼食はしあわせ気分で満ち溢れている。
「さてとぉ!」僕もお弁当を取り出そうとザックを空けた。そしたら「なんだーこれ?」ザックの中がベトベト状態だった。弁当から汁か何かが染み出したのだろうか?と思って調べたら原因はペットボトルのスポーツドリンクだった。粉末のスポーツドリンクを空いたペットボトルに溶かして入れてきたのだけれど蓋とボトルの形が合ってなくて漏れていたのだった。フリースジャケットやコッヘルまでもがベトベトになっていて、早くも今年二回目のトホホ。
トホホ顔をしていると誰かが山頂に設置してある鐘を鳴らした。余りの音の大きさにでびっくりした。「この鐘、”幸せの鐘”って言うんだよ」と誰かが言っている。箸を持つ手がベトベトして気持ち悪い。手を洗いたいが余分な水なんて無い。「あーあ、気持ちわりー!」と思いながら弁当を食べていると登って来た人が次々と鐘を鳴らすのでその度にびっくりする。なんだよーこれって幸せなの?

鹿留山は縦走路から少し外れた所にあったのでザックを分岐点に置いてピストンする。山頂は展望は無いがブナの木が多い。今は葉っぱも全て落ちてしまっているのでどことなく寂しいが春になれば万緑で賑わうてっぺんになるだろう。

ブナの写真を撮っていた男性が木々の真中にシートを敷いてレギュラーコーヒーをいれている。辺り一面にコーヒーの香りが漂う。
男性はハードカバーを取り出して読み出した。こんなお洒落なお正月もあるんだー。

これも杓子山山頂 富士山と富士吉田市街地、御坂山地、その奥には南アルプス
鹿留山から登山道は一気に下がる。せっかく登ったのにもったいないと思うほど下がる。余りに急なので膝痛が再発しないか心配になるほど下がる。だけど直ぐになだらかになって内野峠に着く。内野峠付近はやたらと道が横断していて紛らわしいが地図で見ると登山道は尾根道なのでとにかく高い方へ高い方へ進んで行く。

鹿留山山頂 なぜかここだけぶなの木が多い
なだらかでコリャまた気持ちが良い道、松の木々の間に内野の街を見下ろしながらの散策、太陽が絶えず木々の隙間から差し込んで来て寒さを封じ込めようとする。新緑の頃、もう一度歩いてみたくなる道だ。
そして今日4つ目の峠、二十曲峠に着いて驚いた。なんでこんなに人がいるんだ?
ここはちょっとした展望台になっていて富士山の眺めが良い。だけど他に比べて特質し優れているわけじゃない。それなのに30台ほどの三脚が横一列に並んで富士山を狙っているのはナゼなんだ?
多分、車で来られる場所で富士山が一番綺麗に見える場所なんだろう。
「これさえ、登ったらそこが今日の幕営地だ!」石割山へは今日、最後の登りなので気分的に楽に登れた。ドンドンと高度を上げて行くと後ろに今日一日歩いてきた高座山、杓子山、鹿留山が見える。長くもなく、短くもなく、ハードでもなく、楽でもなく「まー、こんなもんでしょ!」と丁度良い疲労感だ。
石割山山頂へズンズンと登って行くと一歩登るにつれて富士山がてっぺんからズンズンと見えてきた。
山頂は東側の展望が良く、もう真正面が富士山だ。ただ逆光になっているので白っぽくしか見えないのが残念だ。
テントを張ろうと思ったが人が数人いたので、人が居なくなるまで少し待つことにした。草地にシートを敷いて寝っころがる。風も無く、ポカポカと温かく気持ちが良い。ラジオを聞きながらウイスキーを飲んでいたらあまりの気持ち良さに眠ってしまいしそうだ。
3時を過ぎると山頂には誰も居なくなったのでテントを張ることにした。
さてどこに張ろうか?と辺りを見回す。山頂は富士山の方向に傾斜していて水平な所が無い。寝るときに床面が傾いていると寝ている間に体がズレ動いてしまい、すごく寝心地が悪い。山頂から10メートルほど下の送電用鉄塔下が平らになっていたのでそこにテントを張ることにした。
テントを広げて、ぺグを打ったら困ったことに地面が固くて全然入っていかない。地面が凍っているのか?鉄塔を建てるために地固めしてあるせいなのか?は分からないが、思いっきりぶったたいても2,3センチしか入っていかなかった。強風にあおられたらペグが全部抜けてしまいそうだ。今夜、風が強くならないことを祈るしかない。

石割山への登山道から杓子山、鹿留山を振り返る
テントの中でまたまた酒を飲んでいると急に薄暗くなった。「あー、しまった!」カメラをひっ掴むと山頂へ駆け登った。
ダイヤモンド富士、いわゆる太陽が富士山のてっぺんから昇ったり沈んだりした瞬間に太陽がダイヤモンドみたいに輝いてこりゃまた綺麗らしい。この写真を撮ろうと思っていたけど、それはもっと遅い時間だと思ってテントでのんびりと酒を飲んでしまった。富士山を見るとまさに太陽が富士山の稜線に消える瞬間だった。太陽が沈むのはちょうど山頂ではなく、山頂の左側なのはちょっと残念だけどこれでも十分だ。「あー、バカバカ!」慌てて三脚を立て、カメラを取り付ける。ファインダーを覗くとあー!レンズキャップをしたままだ。
キャップを取ろうと前に踏み出した瞬間、三脚につまずいてしまった。カメラが富士山に向かってコマ落しの映画のようにゆっくりとジャンプして行くのが見えた。「あーっ!」僕が次に見た映像はレンズキャップがはじけ飛び、カメラが地面にめり込んだところだった。泥まみれになったカメラを抱きかかえてみると既に太陽は沈み、富士山のシルエットを浮かび上がらせていた。

石割山山頂の10メートル下にテントを張る
地面が硬くて苦労しました!
「今のダイヤモンド富士、良かったですね!」誰かがケラケラと笑って言った。いつの間にか山頂に男性が一人居た。手にデジカメを持っているところを見るとどうやら今の撮影に成功したらしい。「本当は二十曲峠で撮影しようと思って来たんですよ!あそこだとちょうど山頂に太陽が沈むんですよ!」僕は思った「だからあんなに人が集まっていたのか!だけど。。。僕のことはほっといてくれ!」
「ここからでは太陽が沈むのが富士山山頂のすこし左側だったけど、ここからの方が雄大な感じに見えて良かった、ここまで登って来て良かった!」ケラケラと笑った。
「僕のことはほっといてくれ!」
カメラは壊れずにどうにか無事だったが。。。シオシオになって夕食のパスタを食べた。
夕食を食べて山頂に行く。シートを敷いてドッカと座りホットウイスキー片手に富士山を眺めた。お酒を飲みながらボーッと山を眺めるこの一時、いつもながらたまらないっす!目の前にはでっかい富士山のシルエット、白かった西の空が茜色に変わり段々濃い青に変わってゆく。上空を見るとポツンと一つ取り残された雲だけがオレンジ色に光っていた。
「この景色!大晦日に見たらやたら感激するぞ、興奮するぞ!」「今年の大晦日はもう一度ここから富士山の向こう側に太陽が沈むのを見てやろう!」と早くも年末の計画をたてて夕闇の中で一人ほくそえむ僕だった。
それにしても正月に一人で幕営している僕ってもしかしたらとてつもなく暗い奴かもしれない!だけどこの景色を見れるのはこの瞬間、世界中で僕一人なのだ。てっぺんで幕営している奴の特権なのだ!と月に向かって吠えるのだ。
そしてもう一つのお楽しみは夜景だ。西の空は薄っすらと明るいが市街地は富士の影になっているので暗く、5時には銀色の輝きに包まれていった。ここからは富士山の右側には市街地、左側は山中湖湖畔の夜景が見えるのだけれど正面には大平山があるのでそこだけ暗く、文明の灯りを拒絶するように漆黒の闇が覆い被さっていた。

石割山からの夜景 正面には大平山があって光の点は切断されているが空はぼんやりと明るくてなんか不思議な景色
翌朝、5時起床。テントから顔を出してみると空には満天の星、そしてその下には夜景が輝いていた。今日は良い日になりそうな予感。

石割山からの富士山 石割山は夜景も良いし、朝焼けも良い。元旦をこのてっぺんで迎えるのも悪くない。。。とひそかに計画を立ててしまう
朝食は久しぶりのカレーライス。今日は行程に余裕があるので昼食はラーメンを作ることにした。僕の朝食メニューは二通りしかないので必然的に朝はカレーになる。味噌汁に入れようとキャベツを取り出してみると凍って半透明になっていた。特に寒いとは感じないが今は何度くらいなのだろうか?ナイフを入れると葉と葉の間の水滴が氷の粒となってパラパラと音を立てマットの上に零れ落ちる音がした。
ポリタンを見ると5ミリ程度の氷が張っていた。
まだ暗いうちに朝食を食べて、テントを撤収。山頂で御来光を待つ。今日は1月4日だけど山での初日の出だ。段々と東の空が明るくなってゆく。それにつれて西の空が赤みを帯びてきた。その赤い帯が段々と富士山山頂に向かって降りて来る。やがて山頂が赤く染まった。

宝箱は空っぽだ!
こうやって目の前にでっかい富士山を眺めていると新年を迎えたんだ!という気持ちがする。
新たな気持ちでここから今年の山登りが始まるのだという気持ちがする。
山の思い出がいっぱい詰まった心の宝箱を一度空にしてしまおう。そしてその空っぽの箱の中に最初にこの朝焼けの富士山の姿を入れよう。
今年はいくつの思い出を箱の中に入れることが出来るだろう?

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