File135 GIZAアルバム詳細評論〜竹井詩織里編A


続いて7曲目、カップリングの「夕凪」。この曲は、他の曲と同様伸びやかなサビの部分の歌唱が印象的だが、他の曲と違うのは、竹井のやや太く力強い歌唱を聞けることにある。しかし、彼女の歌唱の魅力を表現しようとすればするほど、その本質とかけ離れていく自分の文章に歯がゆさを感じてならないのだが・・・。
8曲目の「星のかけら」は、非常に短い曲であるが、7曲目「夕凪」と9曲目「時の砂」というダークな曲どうしをつなぐ上で、実にいい仕事をしているのではないだろうか。ボサノヴァ調のイントロから始まるこの曲における竹井の、透明感溢れ且つすさまじく伸びやか&さわやかな歌唱は、もはや形容する言葉が思いつかないほどに美しい。「天使の歌声」と、くさい言葉を使わずにはいられない程の神々しさを有している。
私は歌を歌うのも好きなことから、例え女性ボーカルの曲であっても、好きな曲を聞きながらよく歌うことがある。しかし、この曲に関しては、自分のへぼな歌唱で歌うことが曲に対する侮辱行為ではないか、とすら思ってしまうのである。今作収録曲の中で竹井のもっと素晴らしい歌唱を堪能できる曲ではないだろうか。
9曲目「時の砂」は4曲目「蜜月」と同様、「これこそGIZA」というべき、哀愁漂うメロディーと歌唱がこの上ない魅力となって聞き手を包み込む。サビの部分での竹井の歌唱のもの悲しさに完全にKOされた。この歌唱の魅力は、歌唱技術以上に彼女の生まれもっての声質によってもたらされたものだといっていいだろう。彼女の歌唱を聞いていると、歌は歌唱技術もさることながら、それ以上に「声」の魅力が重要だということを痛感させてくれる。
次曲「君に恋してる」、最終曲「今日」もそのことを証明している。穏やかで伸びやかで、繊細な歌唱は聞き手を問答無用に聞き手を引きずり込む魅力がある・・・。

今作全体が強烈に示している優れた声質と優れたメロディーとの高度な融合、まさしくそれはGIZAのGIZAが故の魅力であり、私が当サイトで掲げている「楽曲至上主義」「声質至上主義」を象徴するものでもある。「今作よりも音楽的完成度の高い作品、バランスのいい作品などは、今年の作品の中でもそれなりにあるが、今作よりも好きな作品は?、というと殆どないといってもいいだろう。GIZAの王道や私の音楽観のツボを見事についた会心の一作であり、自分にとってかげないのない一作なのである。

最後に今作に対しよくある、「1曲くらいロック的な曲があったほうがよかった」とか「同一の曲調で〜」といった批判や今後の竹井に関し自分の見解を述べる。

「同一の曲調で〜」といわれるが、「あの海が見えたら」「新しい季節」「星のかけら」といった「さわやか系」、「蜜月」「時の砂」「二人のSunny day」といった「ダーク系」、「close line」「夕凪」のような「哀愁系」とそれなりに違う曲種があるし、それら曲の見事な配置によって単調になるのを防いでいる。また曲ごとの声音の使い分けもそうだといえるだろう。
それと、これらこと以上に、ある種開き直りともいえる、竹井の歌唱の魅力に特化した曲の収録は、作品全体のまとまり感や魅力の創出に大きな効果を果たしているのではないだろうか(この論考の冒頭に勘違い・思い違いと書いたのはこのことがあるから)。今作に多様性をもたらすために「ロック」的な曲とかを入れたとしたら、かえって作品の雰囲気を崩す結果になったのではないだろうか。
但し、そうであっても、今後は曲種の拡大に努める必要があると考える。彼女の圧倒的な歌唱の魅力があることから、今回のような作品が今後出ても聞き手が飽きる、ということはないと思うが、少なくとも今作を越えるものを期待するのは無理。しかし、この作品収録曲のレベルを維持したまま曲種の幅を広げるのに成功したとき、GIZAの枠を超え彼女はとんでもない存在になることができるだろう。だが、そうはいっても所属組織がGIZAということで、いったいどうなるか全く予想がつかない。竹井に対しGIZAに最もやってほしくないことは、竹井の高い資質に依存した安易な曲ばかりを提供すること。どんなに優れた歌唱も、その土台となる曲の魅力がないことには「魅力」として発揮されることはない。竹井の絶大な歌唱の魅力と高度な次元で融合し、彼女の能力をより引き出すような良曲を与えてくれるのを願ってやまない。

まあ、話はここまでにして、竹井の1stアルバム「My Favorite Thing」。「私の好きなものばかりを集めた作品」というそのタイトルどおり、聞き手にとって「My Favorite Thing」になる作品であることは間違いないだろう。今後の活躍が本当に楽しみである。

年内残りは、「ビーイング変遷史〜2004年」か「GIZAアルバム詳細評論〜ガーネットクロウ編」の2つで恐らく終わりになると思います。
余力があれば、「GIZA詳細評論〜滴草由実編」も・・・。たぶん無理でしょうけど。





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