File126 暴走する音楽業界〜変わりゆく聞き手の状況F


音楽に携わる業界各種が、現状打開のために何をしたらいいのだろうか。今回はこのことについて述べていく。素人の浅知恵であることは重々承知であるが、具体的な行動を目に見える形で行っていない業界の状況を引きずるよりは、少なくともましなのではないだろうか。

@CCCDの即時廃止とコピーされないアーティストの養成
この論考を書いている最中に、「ソニーがCCCDの廃止」、エイベックスが「CCCDの弾力化を行う」というニュースが入ってきた。この結果に関しては、素直に喜ぶべきことであるが、その理由に関しては、実に納得がいかない。結局のところ、飛ぶ鳥を落とす勢いのiPod様の影響を無視できなくなった企業側の一方的なご都合にあるからだ。決してCCCDの戦略が間違いだとか、CCCDでは売上減を食い止められなかったとか、アーティストや聞き手の権利を侵害する方法論だったからとか、動作補償をしていない製品のあり方とか、それらに対する世間からの批判を考慮したとかといったわけではなく、単なる利益一辺倒のご都合主義。音楽やアーティストやファンに対する考え方を改めない限り、他のことで同様の問題を起こすように思う。実際のところ、「取締りが強化された」「権利意識が根付いた」といった理由をメーカー側は示してはいるが、現状を考えるとちっとも当てはまっていないことからも、このことは明らか。導入の理由もいい加減ならば、それを止めるを理由もいい加減。相変わらず愚かさぶりをこの業界は見せ付けている。素直に戦略の誤りを認めれば、こんな文面にはしなかったのに・・・。
話が少しそれたが、ネット時代・コンピュータ社会の現在において、何事にも規制・制約をかけるCCCDのあり方は、実に旧態依然としている。世俗や文化の変化といったものを、ビジネスチャンスに変える努力をするのではなく、自分たちにとって都合の悪いことすべての目を摘み取るだけしかない・文化・芸術たる音楽に対する利益一辺倒の発想、は改めてしかるべきだろう。
こういった時代において、CDやDVDの複製をとめることは恐らく無理だと考える。そして、製品版を買う人の数も、減ることはあっても増大することはないだろう。市場の縮小は当然のこととして覚悟しなければならない。
だが、ここで必要なのは、容易にコピーできる状況であっても、それで済ませられるよう作品ではなく、製品盤を思わず買ってしまいたくなるような作品を作ることのできる優れたアーティストの養成である。つまりは、複製を止めさせることははなから無理なので、アーティストの質を上げることにより、複製を減らすということである。
例えば、私見ではあるが、今年のGIZAの作品だと、竹井詩織里の作品はすべて製品版を購入せずにはいられなかったが、三枝や高岡の作品はたとえ複製でもいらない。今の時代、人々の所得が確実に減ってきていることもあるし、その所得をめぐって他の業界が送り出す様々な商品やサービスといったものともせめぎあわなければならない状況において、購入作品の厳選化はますます強まってきている。他業界はかなり必死の努力を見せてきているが、過去の音楽バブルや再販制度のうえに胡坐をかいていた音楽業界は、CDが売れない責任を人々やデジタル社会に一方的に押し付けるだけで、人々に購入させるほどの魅力あるアーティストとの育成や合理的で有益な販売戦略の研究を、確実に怠ってきた。その罪はあまりに大きいだろう。これからは、実力のないアーティストを有象無象に乱発するのではなく、聞き手に確実に訴えかける本質的な技量を持つアーティストを1人・1組でもいいから、発掘し育てることに邁進すべきである。

A画一的な販売形式を改めよ〜おまけなどをはじめ商品形式の問題
日産のマーチ、ユニクロのフリース、キヤノンや松下のデジカメと、同一の品ではあるものの、カラーバリエーションや機能の微妙な差別化によって、多種多様な選択を可能としている。
20世紀の初頭にフォードによって大量生産が確立してから、少品種大量生産→トヨタの多品種大量生産と代わってきた。そして今は少品種であっても、オプションによって多様性を提示する生産方式になっているといえる。いわゆるオンデマンド方式(受注生産方式)である。思いっきり簡単にいうと、消費者からの要望・注文に合わせ、それに即した商品を生産・提供するという方式である。
既に音楽と同様著作物を扱う業界である書店業界は、学術系専門書出版社を中心にこの方式が取られている。では音楽はどうなのだろうか。
店頭の商品は、せいぜい特典ありと特典なしの2者択一か、そもそもそれすら選択できないかのどちらかである。しかも特典付に関しては、地方の商店とかで出回ることはなく、大都市部の大手量販店でしか入手できないのが現状。これが練りに練られた販売戦略といえるのだろうか。
私はCDの商品形式に関し、オンデマンドを導入し、選択の幅を広げる必要があると考えている。つまりはこういうことだ。
あるアーティストの新譜が出るとする。それに関し、
@CD DVD ポスターなど考えられるだけの特典を付ける (価格設定:4500〜5000円)
ACDとDVD(価格設定:3500〜4000円)
BCDとポスター(価格設定:2500〜3000円)
CCDのみ(価格設定:2500程度)
DCDのみ(歌詞カードなし・紙ジャケなど)(価格設定:1500〜2000円)

というように、商品の形態を広げ価格を分け、それを購入者に選択させたらどうだろうか。
私は、例えばガーネットクロウとか竹井詩織里とか北原愛子とかだったら、値段がどんなに高くても@のものを購入したいと思う。3大アーティストクラスや巨匠とかだったらA、タンバリンズや倉木とかだったらAかB、1作だけ好きな作品があるアーティストや男性アーティストに関してはCかDで十分だと思っている。
もちろん店頭でこんなにたくさんの形式すべてを販売できるはずもないので、ABを主軸とすればいいのだが、発売以前にネットとか電話やファックスで注文をとり、基本セットたるABを主軸とし様々なオプションを選択できるようにし、発売日に確実にそれを購入者に届けるという方式にすれば、生産に無駄がなくなるし、確実に売上の勘定ができるし、大都市だけでしか特典モノが出回らない・地方には品がないのに大都市では売れ残るという貧困な流通事情も解消できるように思う。

次回でこのシリーズは完結。音楽販売店と人々の意識について記していく。





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