File125 暴走する音楽業界〜変わりゆく聞き手の状況E


日本の音楽業界のダウンロードに対する反応は、概ね否定的な見解だといっていいだろう。これは他事争論File75で引用した、各レコード会社の「CCCD導入するに当たって」の文面を見ると明確にわかる。いや、否定的どころか、売上減少の責任がまさにここにあるといわんばかりの文面といっても、言い過ぎではないだろう。
確かにファイル共有ソフトによるダウンロードに関しては、著作権の考えに照らし合わせても、やはり問題がある。しかし、これが一方的に売上を減少させるものかどうかに関しては、果たしてどうなのだろうか。
カナダのPOLLARA社の調査では<http://internet.watch.impress.co.jp/cda/news/2004/07/08/3814.html>、違法ダウンロードが音楽の売上を減少させるとの結果が出た。この結果を見るに、ダウンロードしない人より、ダウンロードしている人の方が17%購入率が下がるということである。しかし、この結果に対し、私は否定的見解よりも肯定的見解を持つ。たった17%下がるだけで、依然として35%もの人がきちんとCDを買っていることをデータが裏付けているからだ。結局のところ曲が良かった場合、製品版できちんと買おうとする人が依然としてかなりの数いるということも数値が示しているのである。
一方で、<http://hotwired.goo.ne.jp/news/news/business/story/20040331105.html>のように、ダウンロードが売上を増加させるという研究報告もある。
ただ、一つ確実にいえるのは、どっちの説を取るにしろ、自分たちの体質改善や何故にCDが売れないのかということに対する真摯な分析のないままに、ファイル共有ソフトやダウンロード行為に売上減の責任を負わせ、一方的に規制する企業側の行為は、あまりほめられたものではないだろう。所詮は一時しのぎのものであり、本質的な対策とは遥かにかけ離れたものである。

そもそも日本においてファイル共有ソフトの利用が、日本の音楽業界において深刻極まりない問題を生じさせているのだろうか。
日本レコード協会の「ファイル交換ソフト利用調査 2003年度」<http://www.riaj.or.jp/report/file_exc/2003.html>よると、ファイル共有ソフトの利用者は、インターネット使用者のわずか約3.4%で約98万人。この数は、上記にもあるが、会社側の言い分にあるような事態を示しているとは到底思えない。98万人という数値をどう捉えるかにもよるが、確かに少なくない数ではあるが、ユーザーに不合理な諸所制作を押し付ける行為を正当化できるものでは到底ないだろう。

何故ここで、ネットワークを介してのダウンロードに関し、規制する、ファイルを作成した人に高額の罰金を課すといった行為しかとることができないのだろうか。これをビジネスに利用しようとする考えはないのだろうか。
アメリカでは、格安な値段での大規模なダウンロードサービスが好評を博し、3日間で100万ダウンロードを突破したという。1曲あたりのダウンロードの値段は、どうやら99セント<http://hotwired.goo.ne.jp/news/news/business/story/20031021102.html>(9・10日付の円相場換算で約106円)ぐらいが一般的な価格らしい。しかも、セール期間には49セント(約52円)<http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20040825-00000005-wir-sci>に下げられることもある。だが、99セントですら高いという意見が存在する。<http://hotwired.goo.ne.jp/news/news/business/story/20030814102.html>。
では、日本はどうだろうか。大手各会社の公式サイトを見て調べてみたが、ソニーは1曲210円、東芝EMIは270円、ビクターは210円、エイベックスは210円という結果になった。いくら日本がアメリカと比べ、まだまだインターネット関連のビジネスや人々の意識が遅れているとはいえ、2〜4倍の価格差は論外だろう。パッケージや歌詞カードがないのにも関わらず、10曲購入したら2100円とはっきりいってかなり高い。逆にコンピュータを操作する行為とか、下手をするとデータを紛失してしまう危険性もあることから、「わざわざダウンロードしてまで曲を購入する意味がない」という考えを持ったとしても何ら不思議ではない。

今回の一連の論考で、CCCD、輸入権、私的ダウンロード、ファイル共有ソフトについて述べてきた。それぞれを検証していくと、レコード会社側の言い分は、確かに事実の一端を示してはいるものの、様々な規制を設け人々を締め付ける行為を正当化できるものでは断じてないだろう。どうも売上減を絶対的な論のよりどころとして、被害妄想意識だけを一方的に形成しているようにしか思えないところがある。前回紹介した森口発言が示すように、90年代前半から98年までの売上がある種「異常」であり、今の売上減の状況は「通常の状態に戻った」だけではないだろうか。かなり酷いたとえになるが、今の音楽業界の「CDの売上が減っている」という主張は、50代や60代の人が「10代の時の体力や容貌と全然違う」と思っているのと同じレベルのように思えるのである。

次回は、業界や人々が現状打開に関し、いったいどうしたらいいのか自分なりの見解を示していけたらと思う。





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