File124 暴走する音楽業界〜変わりゆく聞き手の状況D


CCCDといい、輸入権といい、私的複製に対する規制といい、大切なお客様であるはずの購入者・試聴者に対する締め付けをより厳しくしている音楽業界。かなり妥協して、業界やレコード会社が本当にどうしようもない状態であるのなら、まだ論理的に容認できる点もある。しかし、やるべきことを業界はやってきたのだろうか。
90年代半ば、経済のバブルが崩壊し、日本に不況の足音が忍び寄る中、音楽業界では音楽バブルの第一期がやってくる。ビーイング系列アーティストの大ヒット〜小室を中心としたエイベックスアーティストのヒットがそれに当たる。
この時代、音楽のヒットするための最大の要素は「タイアップ」である。レコード会社は、何よりもさてよりも、莫大な資金を使用しての大型タイアップの獲得を重視した。それがヒットのための最短にして最高の方程式であったからだ。また、それに加え、プロモにも広報にも巨額の金が投じられた。しかし、お笑いタレントの作品ですら簡単にミリオンを記録するこのご時世、無計画でずさんなアーティスト育成や販売戦略、企業運営をやっていても、それが企業やアーティスト活動における深刻な問題に発展することはなかった。だが、この時代でのありようが、今日の音楽業界の様々な問題の原点、つまりは業界の暴走の要因になっているのではないだろうか。この時期で培われてしまった販売戦略に対する意識の低さ、無駄遣い・アーティスト乱発体質が、今日の音楽業界に多大な影を落としてしまっている。

1991年、「機動戦士ガンダムF91」の主題歌「Eternal Wind〜微笑は光る風の中」が大ヒットした。それを歌っている森口博子が当時レギュラー出演していたTBSの報道バラエティー番組「ギミアブレイク」(今の「ブロードキャスター」の枠だったと思う。ああ懐かしい。)で、「この業界、3万枚売ったら1人前なのに、60万枚も売れるなんて」というような発言をしていた。既にこの時期、BBクイーンズやチャゲアスや小田和正などミリオンを出したアーティストはいたものの、これらはあくまで特殊な存在であり、この森口発言こそが当時の業界やアーティストの、売上に対する一般認識を端的に示していたといえるだろう。また、2・3万枚の売上程度でも、業界が十分にやっていけることを示してもいる。だが、その数年後に1年に10作、20作とミリオンが出る状況が訪れてしまったことが、音楽業界やアーティスト、果ては一般試聴購入者からまでも、常識的判断や思考を奪い去ってしまったのではないだろうか。
それが顕著に出てしまうのは1990年代後半、日本でもインターネットが一般的なものになってきた時代。インターネットを介した様々なビジネスが華々しく登場し、成功をあげていく中、音楽業界は明らかにその流れに乗り遅れ、旧態依然とした体質を白日の下にさらしてしまう。そしてそれが、98年をピークにして売上が下がり、業績の低下する状況と悪しき相乗効果をあげることにより、救えないほどの愚かさを構築してしまうのである。
その最たるものは、インターネットに隠されたビジネスチャンスやビジネスモデルを一向に有効活用せずに、あいも変わらず、音楽バブル期と同様の「アーティスト乱発」「無駄なプロモ」「非効率的で画一的な販売方法」をとり続けていることにあろう。
どの業種でも会社でもそうだが、かつてない程業績が落ち込む状況においては、今までにはない新たなビジネスモデルの確立や会社の戦略の見直し、体質改善に乗り出すのが普通。まあそのやり方や過程に関し多々問題はあるが、それはさておき、これらことによって業績を回復したところは多いのは周知のことであろう。販売コストの見直しもこの一つといえる。だが、音楽業界はどうなのだろうか。
ネットでの販売はどこでも行うようになっているものの、基本的には販売店店舗での販売、高額コストそのもののプロモ作成によるPRと画一的で芸がない。さらにそれどころか、財政縮小の時代において、高コスト極まりないおまけDVD〜しかもこれまたプロモ映像が主。ポスターやボックスセットや化粧箱入りもそうだが〜を付けるといった間抜け振りを見せ付けている。
他事争論File116・117「プロモ&おまけDVD私論」でも述べているが、高額コストのプロモやおまけDVDが、販売戦略においてそれほど有益ではない。逆に、プロモなどの支出が明らかに負担になっているにも関わらず、売上は上がるどころか下がりまくっているのが現状。さらに元々日本には、アメリカのMTVのようにプロモ専門の音楽番組が存在しないことも、プロモ戦略の無意味さを証明している。この点だけ見ても、業界の愚かさ加減が存分に出ているといえるが、最近はこのことすら問題にならないような、さらなる愚かさを見せ付けている。インターネット絡みだとそれは、ダウンロードに対する規制と、それと同時に合法的なダウンロードで曲を入手するときの値段の高さであろう。
詳細は次回に






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