File113 宇多田VS倉木論 第2部E


今回は楽曲の販売戦略などについて述べていく。

倉木の販売戦略に関しては、当初「コナン」「NHK朝の連ドラ」「海外ドラマ」といった番組のタイアップを始め、それなりに恵まれていたし、GIZAの倉木に対する力の入れようも感じ取ることができた。しかし、当初においても、倉木に対する戦略には問題も多々あったといえる。
デビュー当時のプロモにおいては、その内容に関し、宇多田と比較され叩かれるという問題を起してしまった。ビーイング期から引き続き、成功他者や時流に乗っかるという戦略を踏襲したが故に起きた問題であるといえる。この問題は倉木に対するパッシングを事実・虚関係なく生じさせてしまったが、同時に何の苦労もなく倉木の名と曲を知らしめることにもなった。皮肉なことに倉木の躍進を支えたのは、アンチ勢力の利用ということが少なからずあるのは、否定できない事実であろう。ただ、社としてこの結果は大いに良かったのだろうが、倉木にとってそれがどうだったかというと疑問を感じずにはいられない。
当初の問題に加え、当初にはあまりなかった、曲や販売戦略に関しても問題が生じてきた。
例えば、2ndアルバムにおける「Reach for the sky〜GOMI REMIX」の存在は、アルバムの構成を考える上で、その必要性に関し大いに疑問を感じた。さらに、その後、クリスマスシーズンをすぎてから発売された「Winter Bell」、コナン劇場版エンディング曲なのに、映画公開の何ヶ月も前に発表された名曲「Time after Time」など枚挙に暇がない。なぜこういった戦略をとる必要性があったのか、多くのファンの間で多々批判の種になったが、一向に謎が解けないといっていいだろう。
こういった問題があり、アンチにもファンにも叩かれたにも関らず、GIZAの倉木に対する販売戦略の酷さは一向に変わっていない。極めつけは4thアルバム。詳しくは他事争論File30でも述べているが、4thアルバムを高く評価していない理由として、楽曲の問題も含めた戦略の問題が多々あると考えているからである。

3rdアルバムからわずか6ヶ月少しで発表された4thアルバムは、アルバムオリジナル曲の少なさ・シングル寄せ集め的要素が強いといった問題を生じさせてしまった。また、それだけでなく、大野曲の少なさもあり、アルバムオリジナル曲の質と大野シングル曲との質との差をより浮き立たせる結果にも繋がってしまったといえるだろう。さらに学業とコンサートとを両立させていた倉木の事情もあり、どこまで作品制作に時間をかけることができたのか、大いに疑問がある。このアルバムは過去の作品らに比べ、明らかに作品の練りこみが足りない。また1stの成功にあやかりたかったのか、編曲の殆どをサイバーサウンドに任せたのも、「Make my day」のアルバム版編曲のできの悪さを生み出した要因といえる。
各々の問題が、悪しき相乗効果によって作品全体を悪い方向へと導いてしまったと私は考えている。何故にここまで急いでアルバムを作る必要があったのか、全くわからない。倉木の歌唱や、3rdアルバム時点での「端境期が故の悩み」を乗り越え、20代の大人としての魅力を見せ始めた詞がよく、また、「Time after time」のような和的な曲、「mi corazon」のようなスパニッシュな雰囲気漂わす洋楽、初のコラボ曲「Tonight,I feel close to you」といった今作ならではの要素に加え、より普遍的ポップスとしての音楽性の幅を広げた各曲群の存在もあり、作品の方向性としてはかなりよかったのではと考えている。
この作品の問題点に、倉木のアーティストとしての資質や能力は関係なく、露骨に製作サイドやGIZA側の意向が影響している。かなり厳しい意見になるが、諸諸要素は高水準を保ってはいる4thアルバムであるが、それが3rdや1stのように突き詰められたものを感じず、どうにも中途半端な印象を感じてしまったのには、総じて製作側の作りこみの甘さや戦略の甘さ、それ以前の業界やファンに対する認識の甘さがある。もう少しアルバム製作に時間をかけることが出来ていたら、かなりの名盤になったのではと思わずにはいられない。

4thアルバム発表以降は、紅白出演・ベストアルバム発表・コンサートツアー・NHKドラマの新曲タイアップとGIZAにしてはかなりましな戦略が取れていたといえる。が、ここに来て倉木の戦略が再びおかしくなってきている。それは「新曲」の扱いである。
せっかく上記流れによって倉木を上昇気流に乗せたにも関らず、紅白出演・ベストアルバム発表の余勢をかって出された待望の新曲にしては、タイアップ以外の宣伝やプロモといった販売戦略に関し、問題があるように思えてならない。
繰り返すが上昇気流にのった最中の新曲が故に、もっと題材的な何かがあってもよかったのではないだろうか。例えば豪華特典とかDVD付とかといったものでもいいだろう。ベストアルバムと絡めた複合企画・連動企画でもいいかもしれない。手痛い出費を覚悟で、「倉木麻衣ここにあり」、をGIZAの全面的バックアップのもと、新曲で見せて欲しかったように思う。
他のGIZAアーティストとの絡みの話にもなるが、既に以前からの販売戦略が失敗に終わっていることが明らであるにも関らず、お世辞でも秀逸なプロモとはいえないものをDVD特典として三枝夕夏の新曲につけるなど、一向に理解に苦しむ戦略を相変わらず取り続けている。
ダンスと美貌などおまけDVDで見せる要素や宣伝となる要素を含んでいる岸本とか、今回勝負に打って出なければならない状況の倉木とかを差し置いて、他のアーティストの宣伝やおまけに力を入れまくっているGIZAのやり方には疑問を通り越して怒りを感じずにはいられない。倉木が依然としてGIZAで1番CDを売っている重要なアーティストであるにも関らず、販売戦略はかなりお粗末としかいいようがないだろう。過去の実績や本人の人気・実力から宣伝やおまけなしに売上を伸ばせるとGIZAが思っているとしたら、業界やCD購入層に対する理解があまりに欠けているといわざるを得ない。新曲はオリコン初登場3位とそれでも健闘したといえるが、総売上げに関しては、必ずしも喜んでいられる状況ではないように思う。最大限に努力をした結果それなら致し方ないところもあるが、現状で倉木本人以外に努力の跡を見せたといい切れるものがあるのだろうか。またGIZA側の努力の跡を認識したファンは果たしているのだろうか・・・。少なくとも私はかなり不満がある。曲の内容云々いう前に、GIZAが拡販のための努力を怠らなかったかどうかに関しては、大いに考える必要があろう。新人乱発や大野頼みの曲製作をやる前に、GIZAが業界で生き残っていくためにやるべきことはあまりに多いといえるだろう。

何故に私は多くの分量を裂いてGIZAの戦略的な問題を示してきたのか、ひょっとしたら疑問や不満に思っている人もいることでしょう。しかし、ここに、次回で述べる倉木の課題・問題の最大のポイントととして、今回まで述べてきた「倉木の歌い手としての特性」ならびに「進化・成長をいまだに見せているアーティスト」があるからである。このこととGIZAの組織力の低下、戦略上の問題といった要素が合わさってしまったとき、今まで倉木の長所・美点として列挙していたものが、その逆のものに転じてしまう可能性があると私は考えている。「まじめ」、という人に対する誉め言葉が、時に「堅苦しい」「融通がきかない」といった意味合いを含む非難の言葉になるように、倉木ならではのよさが故に、通常では考えられないような問題を生じさせてしまう可能性がある。「長所は時に短所になる」という点を、ここ2回で述べてきた課題や問題と絡め、次回で述べていく。恐らく次回で本論は最後になる?。






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