File107 宇多田VS倉木論 第2部@


・宇多田ヒカル(宇多田のファンの人にとってかなり厳しい意見になっています。ご注意を)

今回は、宇多田の長所と短所というか、宇多田というアーティストの特性についた述べていく。

宇多田に顕著な特徴として、よくも悪くも典型的洋楽アーティストということができよう。天才ならではの圧倒的なメロディーセンスと聞き手を魅了する扇情的な歌メロと歌唱。そういったものが高次元で融合したシングル曲は、圧倒的な迫力と魅力とをもって聞き手を叩き伏せる。「Automatic」「Can you keep a secret?」「For You」「Colors」といったシングル曲の勢いや完成度の高さにおいて、宇多田に並ぶことのできるアーティストはいないだろう。日本の女性アーティスト史上最高といっても言い過ぎではない。歌の上手さ(技術ではない)、作曲能力、恵まれた製作環境、業界や社からの後押しなどなどで、本場洋楽の有力アーティストに対抗できる唯一にして初の女性ソロアーティストだと今でも私は考えている。
しかし、このよくも悪くも洋楽的スタイルに支配されているという点、並びに天才が故に陥りがちな問題が宇多田に潜んでいると思わずにはいられない。それは、かなり厳しい言い方になるが、天才が故にあまり進化していない、才能だけで曲を作っていると感じることだ。そうであるからして、殆どすべての人間が持つことのできない才能があるにも関わらず、それを多くの曲、特にアルバムオリジナル曲において殆ど反映できてはいない。私がレビューしているアーティストで、宇多田より音楽的資質が上のアーティストは殆どいないが、その結晶体であり最大の判断基準であるアルバムに関しては、その限りではない。今回の宇多田VS倉木論でも書いているが、倉木とは違い、個人的に宇多田のアルバムは殆ど評価していないといってもいいだろう。2ndはそれなりにいい評価をしたが、彼女の資質から考えたら並より少し上といったところだ。
このサイトのいたるところで述べてきたが、宇多田の唯一の欠点であり、最大の問題は、ずばりアルバムの出来の悪さに尽きる。

宇多田のアルバムは何故にダメなのだろうか。一言でいうと「天才のムラっけ」で終わってしまうのだが、それを含め同じくらいに各々アルバムに収録した曲をもって何を提示したいのか・何を訴えかけたいのかといった目的意識ともいうべきものが総じて希薄なことにあると私は考えている。曲順や収録曲の曲種並びに各々の完成度といったアルバムを構成する要素に雑さが目立つ。単に寄せ集めの感がどうしても否めないのだ。問答無用の魅力と勢いとを有するシングルに反し、アルバムオリジナル曲はそのシングル曲らに追随するどころか、やや極論すると引き立て役にすらなっていない。シングル曲があまりに凄いが故に、その問題がより一層悪い形で露見する。倉木は各々のアルバム収録曲ほぼすべて愛聴するが、宇多田のアルバムは3枚すべてにおいてそれを日常的に聞くことはなく、聞くときはシングル曲だけというのが現状。あのすばらしいシングル曲の存在から、あえて時間を割いて他の曲を聞こうとする意欲がわかないのだ。

宇多田は作品性を提示するアーティストではなく、優れたエンターテイメントを見せ付けるアーティストといっていいだろう。だからといって、「シングル曲はいいけど、アルバムオリジナル曲は・・・」といった洋楽王道アーティストに多々見受けられる事例をまんま継承しているのはいただけない。
今まで宇多田の敵は浜崎だけだった。しかし、浜崎が自滅している今、同種の領域に存在するBOAやmelody.、クリスタル・ケイといった若手の台頭の方が恐らく彼女にとって明らかな脅威となろう。しかし、ここで挙げた3者のアルバムに宇多田のそれは勝ててはいない。

但し、これら諸問題をすべて宇多田一人のせいにするのは、あまりにかわいそうだ。というか、明らかに作品作りに関してのプロデュースの問題もある。作品をどのようなコンセプトのもと作り上げていくかは、本人もさることながら、プロデューサーの考えが大きく影響する。つまりは宇多田の父親の問題でもあると私は睨んでいるのだ。この問題の解決の1つの方法として、プロデューサーを代えることが、ある意味最も手っ取り早く最も効果的かもしれない。

長くなってしまったが、もう1つ、上記の最初のことについても記しておく。宇多田の問題として、デビューした当初から完成されすぎていて、なかなか進化発展の余地がないこともあろう。これは音楽に限らずどの業界でも見られるが、きわめて目立った登場をしてその後伸び悩み、果ては消えていく人材は今まで多々いた。流石に宇多田がそうだとは思わないが、伸び悩んでいるとは正直思う。2ndから3rdは、音楽性の幅広がったものの、メロディーの魅力とか切れ味は大幅に後退したと考えている。

シングルの出来は音楽史上最高、音楽的資質も最大級に評価している。だが、アルバムオリジナル曲の出来並びに作品全体を通してのまとまりや完成度のムラといった諸問題が解決されない限り、世間的な評価や業界の評価に反し、個人的に宇多田に高い評価を与えることはないだろう。しかし、その問題が解決され、アルバムアーティストとしての魅力を発揮することが出来たとき、売上とかといった商的な側面や人気だけでなく、一アーティストとして音楽史上最高最強の存在として君臨できると考えている。

次回以降は、倉木麻衣の魅力や問題について複数回にわたって書いていく予定です。えっとただ恐らく上半期総評の総評をはじめ一発ものの連載も入れる予定でもあります。






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