File87 宇多田VS倉木論@〜序論


宇多田ヒカルと倉木麻衣。1998年から2000年にかけての女性音楽シーンを考えていく上で、この両者の存在を無視してそれを行うことは不可能だといえよう。
宇多田に関しては、今更いうまでもないが、日本においてR&Bというジャンルを一般的なものとして根付かせただけではなく、小室や小林らが築いたプロデューサー制度を突き崩し、業界の流れを変えたという点のみにおいても、その歴史的功績が計り知れないものであることは間違いないだろう。時代はまさにR&B一色に染まっていき、プロデューサの力量だけではなく、アーティスト自身の力量が問われる「アーティスト時代」の幕開けをも、もたらした。それは今もなおシーンの主流として続いており、恐らく今後も変わらない要素であると私は推測する。
R&Bシーンを考える上では、宇多田以前にもLyricoやMISIA(探せばいくらでもでてくると思いますが)などといったアーティストらが、本場のR&Bにも決して劣らないもの〜特に歌唱において〜を見せつけはくれたものの、「曲の完成度」や時代性、話題性といった音楽・非音楽的要素を問わずに圧倒的な魅力を見せ付け、人々に「R&B」を定着させたということに関しては、この両名を始め、日本の音楽史を紐解いても誰も宇多田に及びはしないだろう。
時代と才能とに選ばれた寵児に対する便乗者が出るのは古今東西の必然。宇多田に関しても、当然のことながらそうした動きがでたのは言うまでもない。その最大のものが倉木麻衣である。
1stシングルのPVが宇多田のそれと似ているということから、「宇多田のパクリ」という中傷が、社会現象ともなるくらいに深刻さを増して広がる。当時の倉木の曲や歌に対する冷静な音楽的分析をなしに、脊髄反射の如くこれら言葉らによって散々なまでに倉木は叩かれることになる。皮肉にもそのことが格好の「宣伝」となり、注目を集めたことは周知のことだろう。今にして思えば、事務所側の意図通りの戦略であったのかもしれない。それによって事務所や倉木の評判を落とすことになったということも、大人世界の腹黒い計算の範囲内だったのだろうか・・・。
だが私は、「プロモは酷似。音楽性も類似しているところがあることも否定しない。しかし、それでも音楽的には別物。特にR&Bに対する表現方法に対しては全く違う」という立場を当時より取っている。何故なら倉木に対し、「宇多田も含め本格的・アメリカ的・洋楽的」路線を追求しがちなその他大勢とは違い、これら路線や宇多田が築いたものを継承しながらも、それに加え、日本的な歌謡曲の要素を加味した音楽性であり、さらに本人の外見も合わせ、「親しみ易さ・なじみ易さ・聞きやすさに特化したもの」であったからと考えているからだ。

詳しい話などは本論で行うが、音楽雑誌やネットの掲示板や音楽評論サイトなどで腐るほどに論じられてきたこの両名を、何故今において私が取り上げようとしたのか。その理由は「ベストアルバム」の出来と、それによって両名の存在の重要性を改めて認識したことにある。
倉木は既に発売されており聞いている。宇多田はまだ発売されていないが、元々アルバムを全部持っており、収録予定の曲からその出来は容易に想像できる。
私は、浜崎・小柳・MISIA・島谷らといった宇多田や倉木の対抗的存在や、それ以外にもドリカムやLyricoを始め、いくらかのアーティストのシングル曲集ないしはベストアルバムを昨年や今年に入ってから聞いているが、倉木・宇多田両名のそれに匹敵するものはない、というのが正直な感想だ。収録されている曲の総合的な完成度の高さや豪華さ、そして「ベストアルバムらしい勢いのよさや魅力」といった点においては、山口百恵や中森明菜をもってしても勝てないのではないだろうか。こんなことを言うと「耳や頭がおかしい」とか「間違っている」とかいわれそうだが・・・。
山口・中森両名だけではなく、個人的にひいきにしているガーネットクロウや小松未歩、柴田淳らが仮に「シングルベスト」なるものを出したとしても、恐らくこの両名のそれに勝つことはできないだろう。少なくともガーネットクロウや小松未歩や柴田淳のように「作品性」「芸術性」を有し、それを魅力としているアーティストでは、曲の好き嫌いや完成度といった問題ではなく、「ベストアルバム」とした場合に各々の持つ曲の魅力が落ちてしまうのではと私は考えるからだ。倉木・宇多田に比するベストアルバムを出せる可能性があるのは、もはやBOAぐらいではないだろうか。
故に、改めて倉木・宇多田の魅力やアーティスト性などについて述べてみようという結論に至った。書いている最中や、後に変更する可能性が多々ありますが、一応下記のキーワードにそって倉木・宇多田両名に対する比較や分析をしていきたいと考えている。

@キャラクター性
A歌唱
B1st〜3rdアルバム及びベストアルバム比較
C以上を踏まえた点での両名の長所と短所、今後の課題

本論に入る前に一つ明らかにしておきたいのは、一応両名の長所・短所を冷静に分析し論じてはいきますが、基本的に「倉木側」の視点、「倉木優位」の視点で行うということ。よって宇多田ファンにとっては、あまり愉快ではない話になることは確実だと思われますので、ご了承ください。





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