File86 輸入権について考えるB


レコード業界が「輸入権」を導入する理由は、言わずもがな、アジアからの逆輸入CDへの対抗であることは見え見えであるが、このことによって得をするのは、「レコード会社」だけである。確かに、「企業」である以上、どんなに綺麗ごとを並べようとも、利潤をあげていなければ活動していくことはできないし、そこに所属するアーティストや従業員も生活していくことはできない。それは真理。
今は小売や外食産業を始め、泥沼の競争になっており、企業や従業員を取り巻く環境は決していいとはいえない。しかし、音楽業界は拡販のための努力のあとを見せたのだろうか。定価販売の上に胡坐を欠き、既に状況が変わっているのにも関わらず、いつまでもバブル期の栄華から抜け出せずにかつてと同様のばら撒きにも等しい金の使い方、無計画なまでの新人の乱発にいそしんでいる。CDが売れなくなったことに対する分析を放棄し、その責任を完全に購入者に押し付けようとしているといっても過言ではない。
このことは、それどころかCCCDの問題と絡むことによって、より卑劣さと醜さとを見せる。先ほどアジアからの逆輸入CDへの対策ということをあげたが、それと同じくらいかそれ以上の理由として、「海外からの非CCCD作品の輸入を止める」ということがあるといえよう。
ビートルズの「ネイキッド」やクイーンの「ベストアルバム」に見るように、膨大な売上げを上げたものの、これら作品に対するCCCDの導入に対し、熱心なファンを中心として猛烈な批判や不買運動が起こった。不正コピーを防ぎ、売上げを増大さそうとするメーカー側のもくろみは、CCCDではない現地盤のものや以前のベストアルバムがチャートの上位に入った事実を見ても、もろく崩れ去ったといえる。
ただでさえ日本の音楽業界は売上げが低迷し、カバーやトリュビュートといった手段で、60年代70年代の名アーティストらの栄光にすがっているという情けない姿をさらしまくっている。ビートルズやクイーンを見るに、往年洋楽名アーティストの作品が「儲けになる」ということを知った業界は、これからも多くの過去の名アーティストらの作品を送り出し続けることは容易に想像できる。その際、CD輸入の差し止め期間が5年もあることから、その期間を耐えることが出来ない人は嫌でも国内のCCCD盤を手に取らなければならなくなる。メーカ側は表立っては決していわないものの、輸入権導入の真の目的は、「非CCCDである海外現地盤を人々に買わさせず、CCCDである国内盤を買わす」ということにあることは、もはや自明の理だ。

CCCDの一件といい、輸入権の一件といい、音楽業界は自分たちの儲けためには、文化である音楽だろうと、それを買う人々だろうと、国際関係や国際経済に波風立てようとしったことではない、と考えているように思えてならない。

よくも悪くもグローバル化の時代において、モノの価格というものは、高いほうが低いほうへとむけて落ちていき、ある程度の所まで下がり均質化していくのが常。
まあ、様々な分野で行われている過酷な競争や行き過ぎた儲け主義は、従業員の就労環境の劣化や従業員のモラル低下といった深刻な問題を生じさせているのは事実。日本だけに限定しても今世間をにぎわしている養鶏場の対応を始めとして、枚挙に暇がない。輸入権の一件もそのことを証明する顕著な例ではないだろうか。

確かにレコード会社側の主張のように、輸入権を導入している国は少なくない。しかし、導入している国と日本とで明らかに違うことは再販制度がないということ。つまりは既に価格競争にさらされているということを意味する。正規の流通云々といったり、輸入権に関し「他もやっているから」と言い張るのであれば、少なくとも再販制度を廃止してから言ってほしいと思わずにはいられない。しかし、そのこと以前に、他業種とは違い、音楽業界は廉価版の輸入CDによって壊滅的被害を受けているわけではないし(現に輸入CDは約68万と全体の0.4%に過ぎない)、そもそも壮絶なまでに厳しい競争世界にさらされているわけでもない。過酷な競争を経た上で、輸入権といったものを言い出すのであれば、まだ納得いくところもあるが、その以前の段階から、保護を国や政府に求めようとするのはいかがなものか。

以上、散々述べてきた理由から、個人的にはCCCDと同様、この輸入権に関しても断固反対の姿勢をとる。音楽ファンをあまりにも馬鹿にし、なめているとしかいえない。

輸入権によって海外盤の作品を締め出し、再販制度によって価格が守られたぬるい競争によって、ある程度の売上げをレコード会社は守ることができよう。しかし、井の中の蛙に等しい世界の中での、さもしい利益の追求が、真の意味での音楽の発展をもたらすものなのかどうか、聞き手も売り手も真摯に考えて欲しいと思う。個人的には、苦境の状況の中で一人でもいいから世界に通用するような優れた才能の持ち主を必死に探し、その才能の持ち主を優れた販売戦略によって売っていくことこそが、国際競争に勝つのみならず優れた音楽を生み出すことにつながるのではと、理想ではあるものの思わずにはいられない。

次回の他事争論は、「宇多田VS倉木論」か「評価の4類型について」を予定。ひょっとしたら変わるかもしれませんが・・・。

今回の他事争論を書くに当たって以下のサイトを参考にしました。

・輸入盤を「非合法化」する著作権法改正
・レコード輸入権問題について
・ネット&デジタル





botan2.gif
他事争論過去一覧へ


botan1.gif
ホームへ