File85 輸入権について考えるA


輸入権の問題は多々あるが、特に深刻で且つ重大な問題として以下のものがある。

@市場原理や競争原理の無視
古代の社会ならいざ知らず、ごく少数の例外や程度の度合こそあるとはいえ、現在は資本主義の原理に基づいて、世界のあらゆる国の様々な物品が取引されている。
農作物、自動車や電化製品などを始めとした工業製品、下着などの衣料品など、良くも悪くも国際市場における質と価格の競争を中心とした一定のルールに基づく自由競争にさらされることにより、商品の質の向上並びに価格の低下を促している。
この原理の元では、質の低い商品や価格の高い商品などは出ては淘汰され、また出ては淘汰されという繰り返しは必然以外の何者でもない。
かつて「安かろう悪かろう」といわれた日本の車や家電製品であったが、世界的な市場にさらされることによって、様々な改善が図られた。その積み重ねの結果、各々の分野で世界のトップを独占していたアメリカよりも、安くて質のよう商品を提供することが可能となり、アメリカの多くの企業を市場から追い出し、多くの業種において世界トップの座に上り詰めたのだ。アメリカの代表的な自動車生産都市である「デトロイト」をゴーストタウンのようにしてしまったことは、このことを物語る顕著な例であるといえる。
しかし、逆に繊維商品や果物や野菜や肉に関しては、アメリカを始めとした海外製品の輸入によって、日本の多くの繊維製造業者や畜産家や農家などが廃業に追い込まれた、ないしは追い込まれようとしていることは周知の事実であろう。厳しく残酷であり、個人的に納得がいかないことも多々あるが、これが厳然たる事実なのである。
殆どすべての業界がこういった厳しい状況にさらされている中で、競争社会の中で生き残ろうと厳しい労働環境に従事したり、新たな方策を考えたりして、血のにじむような努力を見せている。にも関わらず、音楽業界だけは法律によってそういった厳しい市場原理から守ってもらおうとするのは、考え方として明らかに間違っているのではないだろうか。
日本の主食であり主作である米においてすら、今では輸入されているというのに。農作物は人々の生存に関わるが、音楽は聞かなくても死ぬことはない。そういった観点から見ても農作物とかを法律によって保護するほうが遥かに有益でありまともなのではないだろうか。
輸入権の容認は、必死になって海外に拠点を移してやっている企業や業種、さらに、海外移転せずに国内において、ですさまじいまでの努力や知恵を絞っている企業や業種に対する侮辱といってもいいだろう。

A消費者の「選択自由の原則」に対する著しい制約
市場原理は、消費者が市場に出ている商品を自由に購入することが出来る環境を作ることによって成立するといってもいいだろう。しかし、この輸入権は「選択自由の原則」という消費者にとって必須とも言うべき権利を著しく侵害する。
洋楽のCDに関しても、日本盤を買おうと輸入された現地盤を買おうとそれは自由である。これは海外で販売されている邦楽アーティストの作品に関しても同様だ。海賊版などではなく、正規のライセンス商品である限り、きちんとお金を支払う限りにおいて、日本国内盤より安いという理由をもって人々がどこでそれを買おうが自由である。輸入権はこの消費者の選択自由の原則を著しく侵害しているとしかいいようがない。これがまかり通るということは、例えばジャスコが、自分たちよりも安い値段で売っている且つそれによって客が来ないという理由で、イトーヨーカドーやダイエーを締め出そうとしていることと同じである。このことは独占禁止法に定められている「取引妨害」に明らかに抵触するものであろう。また、他の国々が同様の理由をもって日本製品を締め出しても文句は言えないということだ。

値段の高い安いといったこと以外にも問題がある。単に「日本語訳やライナーノーツなんかいらない」といった理由や、日本盤と例えばジャケ写が違うとか、CD表面の絵柄が違うとか、ボーナストラックの存在といった理由で、海外盤のCDを求める人も決して少なくない。そういった購入者の思考すら輸入権は縛るのである。(さらにこのことはCCCD問題と絡むとより深刻な問題を消費者に押し付けることになる。そのことについては、次回で詳細に記す)。

B再販制度によってかねてから業界は保護されているし、消費者は不利益をこうむっている
もともと日本の音楽業界は、メーカーが小売価格を決定できる「再販制度」によって保護されているという事実がある。全国どこでも同じ値段で同じ作品を人々が購入することができるという利点をもたらした反面、社会情勢の変化によって一部の高級品を除き、殆どの商品の価格が下がっているにも関わらず、また海外においてはCDの価格が下がっているにも関わらず、日本のCDだけは一向に価格が変わらない。シングル1000円〜1200円、アルバム2500円〜3200円という値段が高いかどうかに関しては、人それぞれの考えがあると思うが(いい作品だったら1万出してもほしいと個人的には欲しいと思うけど、それとこれとは話は別)、少なくともこれが安い、と考える人はそうは多くないだろう。
HMVやネットでのCD販売に関しては、既に値引きがされているが5%〜15%というのが関の山。しかし、ネットでは送料手数料という問題もあるし、洋楽CDや逆輸入盤のCDに比べるとまだ価格は高い。
輸入権の導入によって、世界の市場の流れとは全く反し、日本人は強制的に価格の高い国内盤CDを買わされるのみならず、5年もの間、洋楽CDを購入することも許されないということになる。これが「知的財産立国を目指す政府の方針に合致する」につながることなのだろうか。世界第2位の音楽大国の姿としてあまりに情けないのではないだろうか。

Cこういった保護政策が文化のみならず国際関係にも悪しき影響を与える。
先ほども記したが、世界的には第二次大戦以降、保護貿易から自由貿易へと流れを変えている。自由放任の経済体制の問題も多々あろうが、日本のような経済力がある国は、かつて日本がアメリカを意識し、追いつき追い越したように、今は他国から追われ追い抜かれる立場にある。その立場にある日本は、これら国々の挑戦を受け、より他国がまねできない優れたものを生み出していくようにするのが筋であるのに、それとは全く逆の、前近代的な保護貿易政策へと走る。GDPの0.1%にも満たない音楽業界、しかし、世界的にはよく知られている音楽業界が、そういった政策を露骨に打ち出せば、他国もそれに対抗する政策を打ち出してくることは容易に想像できる。こういったことが原因で、他業種に関して日本が不利な立場に立たされるだけではなく、対外的も著しく落ちるだけだ。

普段はあまり意識しないものの、こういった観点で見ていくと、日本のCD購入者は日本以外の国のCD購入者に比べ、かなりの不利益をこうむっているといえる。そういった状況で輸入権を容認することは、メーカ側の言い分を果たすどころか、CDを買う人にとってさらに不幸な結果にしかならないといえよう。

では、こういった愚考を犯すメーカー側の狙いは何なのだろうか。CCCDの件と併せ、次回はそのことについて記していく。





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