File81 女性アーティスト戦線異常あり!!?〜最近の傾向とそれに対し思うことB


2003年は、今にして思えば日本の女性アーティストの洋楽的アプローチが著しく進行した1年では、と感じるところがある。その顕著な事例は、Crystal Kayの躍進、Melodyの登場、そしてBOAの曲における音楽性の広がりである。この中でBOAの作品は、今年の音楽シーンを占う上で非常に重要な作品になったと感じずにはいられない。今までどちらかというと打ち込みと本人の踊りを生かすような作品であった。しかし、最新アルバムにおいて、どちらかというとマライアやマドンナにも通じるような洋楽の王道ポップス的多様性を感じさせる曲たちと、それに対応できる歌い手としての成長を見せ付けたことにより、今までは音楽的な接点があまりなかったように思えた宇多田や倉木らとかなり近い領域へと進出したのではないだろうか。
上記アーティストらを含め、本場の洋楽をも上回る優れたアーティスト並びに作品によるせめぎ合いが、2004年早々勃発しており、それが非常にシーンを面白くしているのではと個人的に感じずにはいられない。その鍵となり主軸となるアーティストは、宇多田ヒカル・BOA・Melody・Crystal Kay・中島美嘉・倉木麻衣ではないだろうか。さっそく分析をしていこう。

この面々のうち中島とBOA以外の4人に共通するのは、R&Bの新たな要素を既に提示したこと。それぞれの魅力や才能及びそれを最大限に生かした曲によって、得てしてくどくて聞き苦しくなりがちなR&Bをいかにして人々に聞かせるのか、という問いに対する見事な答えを作品を通して提示してくれた。総じてR&B的要素と高度なポップ性との融合ならびに歌い手の声質の魅力に、その答えが集約されていたといえる。
この5人の出自を見ていると非常に面白いことがわかる。
倉木・中島は、共に日本人の両親で日本育ち。Melodyは両親は日本人であるものの、生まれと育ちはハワイ。宇多田も両親は日本人だが、生まれはニューヨーク。BOAは韓国生まれだが、英語も日本語も堪能。クリスタル・ケイは確かアメリカ人と韓国人のハーフだが、日本育ち。
何故にいきなりこのことを記したかというと、前回の最後に示した「より洋楽化した総合エンターテイメント音楽と、同じくエンターテイメント性があるものの、日本的歌謡曲の路線を継承する音楽との対立図式である。」ということに大きく関係があるからである。

この5人を、対立図式に当てはめると、前者にBOA、Melody、クリスタルケイ、後者に倉木・中島、そしてその中間に宇多田が入るのではないだろうか。前者の3人に関しては、その出自と人生経験が、洋楽ポップスといってもなんら遜色のないエンターテイメント性を生み出したことは間違いない。彼女らの作品はたまたま日本のレコード会社が出しているというだけで、そうでなかったら「洋楽」といっても何ら問題がないものであろう。
いわゆる帰国子女である宇多田は、1stこそR&B、2ndは洋楽王道ポップス、3rdで日本的歌謡曲要素の導入という流れを経て、今では洋楽ポップスと邦楽ポップスのちょうど中間的な音楽性になっていると判断する。後者の2人は、洋楽的な要素を取り入れつつも、基本的には日本の伝統たる歌謡曲の要素が色濃く残っていると考える。特に中島はこの5人の中でも最も邦楽的要素を見せているのではないだろうか。

しかしこの5者に共通しているのが、皆すばらしい声質の持ち主であるということ。そして曲のレベルが高いということ。それらアーティストが歌う曲の完成度は、本場アメリカの同系列アーティストよりも完全に上回っている、といってもいいのではないだろうか。かつては洋楽上位論を露骨に取っていた私ではあるが、はっきりいってそんな私ですら、今の洋楽ポップスのレベルの低さを強く感じずにはいられない。ブリトニーしかり、アブリルしかり、ヒラリーダフやケリークラークソンしかり・・・。
HR・HMやプログレッシブロックといったジャンルならいざ知らず、少なくともポップスに関しては、もはやアメリカのアーティストの方が優れているという論理は成り立っていないと私は断言する。ここにあげた5組のアーティストの作品を上回るものは、殆どないといってもいいくらいだろう。(かろうじてエヴァネッセンスが匹敵するくらいである。)。

今年は年早々にBOAが出した3rdアルバムは、元来のダンスミュージック主体の作品から総合ポップスとしての洋楽的作品へと変貌を遂げた。Melodyも繊細で透明感溢れる高音域の歌唱を生かした多種多様で完成度の高い作品を提示した。つまりは、宇多田や倉木が在住する領域と完全に接点を持ったということである。
宇多田も倉木も、そして中島も、今年数多くの曲を発表することは間違いないだろう。その彼女らの送りだす音楽のせめぎあいに大いに期待したい。今年の音楽シーンは非常に面白いものになるのではないだろうか。とても楽しみである。





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