File80 女性アーティスト戦線異常あり!!?〜最近の傾向とそれに対し思うことA


前回の続きです。

アーティストやレコード会社同士の仁義なき競争の中で生き延びていくには、専門性と万能性が必要なのではと前回の最後に記した。今回はそのことについて述べていきたい。

まずは@の専門性。これは言葉の通り、自分が最も得意としているもの一点のみに集中し、それを徹底的に伸ばし鍛え上げていくことである。
例えば歌唱技術を伸ばすというのも一つ。とことんR&Bを突き詰めていくのもいいだろう。とにかくある一つないしは、かなり少ない要素において、他者には追随できないものを見せ付けるということである。
洋楽のR&Bにも全く劣らない作品を見せ付けているDOUBLEや、ピアノを主軸とした見事なバラード曲を聞かせてくれる柴田淳な、メロディッアス路線を突き進むDay after tomorrowらは、その典型だといえよう。元ちとせみたいに民族音楽的アプローチを取ったりするのも、このことに含むことができるでしょう。
もう一つの万能性は、自分の得意とする1つないしは2つといった少数のジャンルを主流としながらも、他のジャンルの要素を合わせた音楽をやるということである。例えばR&Bを主軸としながらも、洋楽ポップスや日本のポップス、ロックの要素をとり入れている宇多田ヒカルや、北欧やアイリッシュ音楽、ロックの要素を取り入れている矢井田瞳、日本の歌謡曲を中心としながらもR&BやAORの要素を取り入れている倉木麻衣などがそうであろう。

で、今回主題となるのは後者の万能性。今の女性音楽シーンは、ソロの万能性を有しているアーティストが目覚しい活躍をしているし、非常にいい仕事をしていると、特にここ数年感じずにはいられないからだ。

マライアやマドンナ、ジャネット、セリーヌデュオン、ブリトニーなどを見るに、洋楽シーンの主流にいるアーティストは、ポップス・R&B・ダンスミュージックらを巧みに掛け合わせた、エンターテイメント性溢れる音楽をやっている。そこでは一つの要素(専門性)、というよりも、多種多様の曲を歌いこなせる歌い手の万能性が重要なポイントとなる、ということに恐らく間違いはないだろう。
一方、日本のメジャー音楽というものは、洋楽の影響を常に受けながらも、かつてのアイドル音楽シーンや演歌の隆盛などを見るに、日本独自のものを築き上げられ、展開されていったと考えることができる。メロディー的にもいわゆる日本的な「歌謡曲」という範疇に総じて収まってしまい、洋楽アーティストとの明確な区別化というよりは差別化が生じていたのではないだろうか。90年代はビーイングやエイベックスのアーティスト、マイラバなどのアーティストを始めとし、楽曲の分担製作やプロデューサ制度など洋楽的な製作方式が顕著に見られるようになり、産業音楽シーンのが本格的に展開される。が、しかし、音楽的な好き嫌いや良し悪しといったことはさておき、アレンジやサウンド構築などの完成度に関しては、残念ながらアメリカ産業音楽に勝てていなかったといわざるを得ない。簡単に言えば、スケールと洗練さの違いというべきか。音楽制作やプロモにかけているお金の規模の差が率直に反映されていたといえよう。しかし、このことと同じくらいに、この当時のGIZAやエイベックスのアーティストを始め、どうしても「歌わされている感」が否めなかったことと、洋楽アーティストほどには、歌い手が多様性を有していなかったこと。そして、ビーイングにしろエイベックスにしろ、歌に関しては歌謡曲の路線を色濃く感じることとがあったからだ。それ故に、個人的見解そのものであることは否定しないが、この時点では洋楽ポップス・ロックと邦楽のそれとを同じ土俵で比較することは、全くいっていいほどに考えていなかった。「別もの」という認識がどうしても拭えなかったのである。
その認識を変えてくれたのは1998年にデビューしたMISHAと宇多田の2人。
この2人の優れていた点は多々あるが、曲のアレンジの秀逸さや音質のよさ、プロモの秀逸さ、曲のセンス、そしてそういったことを含め、戦略や曲といったアーティストを構成する要素すべてが、今までの日本のアーティストとは根本的に違う優れたエンターテイメント性に秀でていたということができよう。
90年代半ば以降の、洋楽の一方的な失墜とあいまって、この両名が業界に出た時点で邦楽が洋楽に追い着いた瞬間だったのではないだろうか。
この2人の登場により、日本の音楽シーンは急速に進化を遂げていく。R&Bを中心とした音楽シーンの展開である。これによりこの両名以外にも小柳や倉木麻衣といった優れた資質を有する歌い手が出てきて大いに業界を盛り上げていった。

しかしR&Bを主軸とした音楽シーンは、本家の宇多田及び、その次の売上げを誇った倉木が、2作目において早々とその路線を捨てたことにより、あっさりと終わりを告げる。より普遍的な総合ポップスともいうべき路線へと変化したからである。それ以降R&Bは音楽シーンの中心ではなく、DOUBLEを始めとした本格路線の目指す優れたアーティストによって、一角をしめるだけにとどまる。
2002年には元ちとせや一青窈、MINMIらの活躍により、諸所の音楽の要素を取り入れつつも、一点集中の歌唱の魅力を見せ付けるアーティストが主流となる。そして2003年は、争論にもあるようにシーンを動かす主流の音楽がなかった。しかこの年に活躍したしBOAと中島美嘉が2004年初頭の流れを決定付けたと私は分析する。それは、より洋楽化した総合エンターテイメント音楽と、同じくエンターテイメント性があるものの、日本的歌謡曲の路線を継承する音楽との対立図式である。このことは先ほど述べた宇多田と倉木の総合ポップス化も、恐らくこのことと絡んでくるのではないだろうか。





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