File65 紅白歌合戦私論C


今日、価値観や人々の趣向が多様化する中、最も人々に影響を与えているメディア「テレビ」であっても、その影響を受けずにはいられない。そういった中での番組のつくりとしては、不特定多数の視聴者を取り込んでいくことと同じくらいに、特定少数層を確実に取り組んでいく必要性が生じてきたといえる。不易流行が激しい音楽を扱う番組であればなおさらであろう。そんな中で競争に生き残るためには、かつてと同じ方法論をとったり、最大公約数的物をやるのではなく、確固たるウリであり強みであることを番組を通じて形成していかなくてはならない。それが、番組の主旨であり、目的であろう。年末特番音楽番組においては、ある程度の共通項目があるものの、内容の相違によるシェアわけと番組の主旨・目的ということが見ていて理解できる。
FNS歌謡祭とレコード大賞は、「賞」を与えることと、アーティストの演奏を主目的としている。MステSPはひたすらアーティストの演奏を主目的とし、出演アーティスト数と豪華さがウリであるといえる。日テレの有線歌謡大賞は、人々の投票によってアーティストを格付けし、そのうちの一部がスタジオで歌うという作りである。
TBSのカウントダウンは、年間や過去の作品のランキングの紹介を主目的とし、それに加えアーティストの演奏を行っている。「Hey Hey Hey」や「うたばん」に関しては、アーティストの本音を引き出すトークやゲームなどの各種催しがウリであるといえる。
この目的やウリである要素に対し、好き嫌いは当然あるのだが、番組個々の方針にはそれなりに納得できるところがある。

では、紅白はどうなのであろうか。
残念ながら、紅白ならではの豪華な衣装と舞台装置以外に、ウリと感じることや他局の年末特番音楽番組に勝っていることはないように感じてしまう。「国民の意志の反映」という点では、一般視聴者からの投票を行っている日テレの「有線歌謡大賞」に全く勝てていない。出演者の人気実力に関しても、アーティストの豪華さや数に圧倒的に秀でているMステSPに勝てていない。「時代性の反映」という点に関しては、売れていない演歌が出演者の40%をしめる点のみで、ここに記したどの番組にも勝ててはいないどころか、相手にもなっていない。何度も言ってきてるが、出演アーティスト・番組の流れ・演出の仕方、方針、そのれどれをとっても中途半端であり、番組を通して何を見せたいのかが判然としないのである。依然として高い視聴率を誇っているものの、もはや紅白は、「国民的音楽番組」というには、かなり抵抗を感じてしまうものになっていると認識せずにはいられない。

ただ、文句を言っているだけではらちが明かないので、この先の紅白がどうしたらいいのかについて私見を述べていく。大まかに分けて、今後の紅白がとるべき道は、「演歌・懐メロに特化した音楽番組」ないしは「その年に売れたり人気のでたアーティストを中心とした音楽番組」という一極化路線を目指すか、あくまでどの年代層をも対象にした「総合的音楽番組」を目指すかの2つがあるのではないだろうか。まず前者について。
売筋や人気筋に傾倒しがちな民放の音楽番組では、演歌や民謡などといったジャンルが扱われていないのも事実。どうしても若者〜青年層に支持されているものが中心となってしまうのは、民放の特性上致し方ないと言える。民放が扱っていないこれらジャンルを積極的に扱う、ということも、ひとつの選択肢として挙げられるのではないだろうか。または、その逆に中高年の嗜好を一切排除し、とことん売れ筋・人気筋のメンバーで固めるというのもひとつの方法といえる。民放の番組と被る部分があるが、熱心な営業活動と交渉活動により、民放各局以上の面々を集めることが出来るのなら、従来の高い視聴率を背景に、最たる支持を集めることも不可能ではないだろう。どの道、世代間の見解の相違による音楽嗜好の違いは埋めれるはずもないので、どちらかに特化した出場メンバーにすれば、少なくともどちらかの嗜好は高い次元で満たせられるのではないだろうか。特に「演歌・懐メロ」路線にすれば、これらジャンルが好きな視聴者を総じて取り込むことができよう。

次に後者。万人の要望や趣向に答えきることは不可能なれど、その最大公約数を目指すことは決して不可能ではない。紅白があくまで「国民的音楽番組」を目指すのであれば、やはり一極化路線より、こちらの路線を目指すべきではないだろうか。個人的にもこっちの路線のほうで行ってもらいたいと考えているのですが。
それは、ロック・ポップス・演歌・ジャズなど、どのジャンルにおいても一線級の実力者や人気者アーティストたちで固めるということである。大晦日にしか行われない祭典にふさわしい、民放には決してまねできないそうそうたるアーティストを集めることにより絶対的優位を保つ。国民的音楽番組路線を目指すのであれば、これぐらいまでやらないと、この先の紅白は今以上に伸びるどころか、失墜していくだけであろう。
そういったメンバーを集めることに対し、非現実的と思われるかもしれない。特にポップス・ロックのアーティストに関してそう考えられる方は多いことでしょう。しかし、純粋に歌番組に出演していないのは松任谷由実くらい(厳密には何回か出演しているが)。サザンや吉田拓郎、宇多田ヒカル、元ちとせなどなど民放の歌番組に数多く出演しているアーティストは多々いる。よってNHKにできない、ということはありえないし、それは単なる言い訳に過ぎない。もちろん紅白にどうしても出場する意志のないアーティストもいるでしょうが、そのうちの何人かは、出演交渉のやり方次第で出演させることは不可能ではないと感じる。それには、ちんけなプライドなどかなぐり捨てて交渉する、という姿勢がNHK側に必要であることは言うまでもない。クラシックやジャズといった他ジャンルに関しては、NHKは民放よりも圧倒的に優位な環境を持っている。従来の音楽番組の延長上で紅白出演を依頼すれば、そう不可能なものでもないだろう。
多種多様のジャンルの優れたアーティストたちの夢の舞台、それこそが今後紅白の目指すべき方向性であると感じる。
重複するが、それを為しえるにはNHKが、自分たちの旧態依然とした体制を払拭することが何よりも必要である。まあ、上記のような大改革をなさずとも、少なくとも演歌枠を20%ぐらいにし、代わりにロック・ポップスのアーティストないしは、ジャズやクラシックのアーティストを増加したほうがいい。
また、出場してほしいアーティストをネットや電話などによって募集し、それの実現に向けるとかしてもよいだろう。
それらがかなわないのであれば、「国民的音楽番組」の看板を捨てなければならない。そして、最初に示した「演歌・懐メロ」に特化した番組に移行していかなければ、紅白はその地位をどんどん失墜させていくことはおそらく間違いないだろう。
(個人的に今年は倉木が出るから見るようなものだ。でなかったら猪木祭を見る予定であった。ここ数年、年末音楽番組で必ず見るのはMステSPぐらいか。後は録画してか生で流し見。紅白は全く見ていない)
NHKは、かつての視聴率が異常に高い状況に胡坐をかきすぎた。どういった方向性を目指すにしろ、一向に改善しない今の運営に対し、すべてを変えていくぐらいの気概を持って改革していかないとだめだということである。

演歌を減らした昨年と打って変わり、再び演歌枠を増大させた紅白、果たして今年の結果や如何に・・・。

次回は、2003年音楽総評。その後は、2004年音楽シーン予想、そして新年特集の「女性ボーカルグループ特集」を予定しております。







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