File49 GIZAアルバム詳細評論その2〜小松未歩A


今回は各曲について感想を述べていく。

@「Mysterius love」
久しぶりに聞く小松節前回のアップテンポナンバー。「君の瞳には映らない」以来であるといえる。彼女の彼女たる所以が、まさにここに集約されているといえる。出だしからサビ、そして中間奏の情熱的ギターソロにいたるまで、終始上質のメロディーで貫かれており、構成などに一切の隙がないのは、まったく持って見事としかいいがない。だが、過去の彼女の同種の曲と比べ、明らかに違うのは曲に、スパニッシュギターフレーズを取り入れることにより、情熱性を強く感じることだ。それにより、同種の曲にもかかわらず何か新鮮さを感じた。

A「ふたりの願い」
シングル曲としては、サビが少し冗長で弱いかなと感じていたのだが、アルバムで収録されたのを聞くと、シングルで聞くよりもずっとよく聞こえる。特に出だしのメロディーの秀逸さが光る。サビのテンポのいいメロディーの流れも、すっと且つ心地よく耳に響く。これは、やはり編曲の小林の仕事振りによるところが大きいだろう。彼は編曲者としてなかなかの力量があるし、小松との相性も結構いいのではと感じる。しかし、そうであるにもかかわらず、今作ではこの曲のみというのが悲しい。何故?。

B「通り雨」」
カップリング曲であるが、アルバム収録曲として日の目を見た曲。小松ならではの抜群のメロディーセンスとリズムセンスが高次元で融合された良曲だと思う。打ち込みサウンドが主軸であるにもかかわらず、不思議な空気感を感じるのは、徳永のアレンジがよかったことにあるからだろう。今回この曲が収録されことは非常に喜ばしい。個人的に「きっかけはいつも〜のめり込んでいる」の部分がとても好きである。

C「楽園」
冒頭のピアノの旋律により、もの悲しい雰囲気をこの上なく提示しながらも、情熱的な愛を歌い上げたバラード曲。曲の展開はシンプルであり、悪く言えば単調でもあるのだが、それでもしみじみとした魅力を感じるのには、彼女ならではのメロディーのよさがあるからだろう。メロディーの弱さが多少あることも否めないが、聞けば聞くほど味が出てくる曲ではないだろうか。アルバムならではの曲として、また、前半を締める上でも非常に重要な曲なのではと私は感じる。

D「明日を待てずに」
女性の恋に対する複雑で且つ単純な心理を描いたアップテンポナンバー。歌詞は少しさびしさや悲しさが描かれているが、曲としては、非常にさわやかであり、聞いていてとても心地よい。何気ない曲のようでいて、彼女ならではのよさというものを感じる曲だ。

E大空へ
Field of viewに提供した曲のカバー。曲名どおり澄み切った空のようなすがすがしさを感じる。Field of viewの曲の中でも名曲として誉れ高いだけあって、文句のつけようがない優れた曲である。

F渇いた叫び
Field of viewに提供した名曲中の名曲。このアルバムの中でも10曲目の「Last latter」と並び最も好きなものの一つ。出だしの独特なメロディーは圧巻。これだけで、もうゾクゾクしてきます。そのあと、重みを強調したAメロBメロの展開は、今回収録された曲の中でも最高であると思う。もちろんサビも秀逸。中間奏のフルートの演奏もすばらしいとしかいいようがない。唯一の問題は、サビ最後の部分の歌唱にもう少し力があればということか。

G君さえいれば
DEENに提供した楽曲。これまた名曲といっていいものであるが・・・。小松の歌唱はまずまずといったところだが、残念ながら大賀の編曲が最悪だ。ショボイ打ち込みサウンドによって曲のよさが台無しになっている。正直失望以外の何者でもない。私は、編曲者としての大賀の実力に対して、小松の熱心なファンほどにはうるさくいってはいなかったのだが、この曲を聞いて考えが一変した。ここ最近の彼の仕事の中でももっともひどいものであると感じる。今作に池田・小林といった小松の曲にあった優れた編曲者がいたことから、なおさら大賀のだめっぷりが浮き彫りになってしまった。もう彼は小松の編曲者として必要はないと思う。
話はまったく変わるが、「渇いた叫び」「君さえいれば」の2曲は、曲もさることながら詩がすごい。今の小松にはあまり感じ取れなくなった、詩の端々に潜んでいる毒気や「何かちくちくする感じ」が存分に味わえる。ある種「狂気」といっていいものではないだろうか。個人的にこの時代の彼女の詩が、彼女の詩人としての絶頂期であると思う。

Hチャンス〜RECHANCE
2ndのアルバムに収録されたシングル曲で、今なお人気が高い小松の名曲。タンバリンズの麻井が編曲を担当した。できはというと良くも悪くもないが、わざわざアルバムに収録するほどでもないな、というのが正直な感想だ。この8・9曲目の2曲が、アルバム全体の流れを断絶してしまった感が否めない。どうせなら最後にするか、いっそのこと収録しない方がよかったのではないだろうか。

ILast Letter
今回の収録曲の中で個人的に最も好きな曲がこの曲である。曲全体から感じる極上のもの悲しさが、この上なく聞き手に感傷を抱かせる。曲の構成は非常に地味であるし、単調であるのだが、名手池田大介の秀逸なアレンジによるサウンドと小松の抑えた歌唱、読んでいるだけで何か泣きそうになってくる詩、それらが渾然一体となり、小松の作る悲しみの世界へと聞き手を誘っていく。
特に、中間のシンセ演奏を経、一瞬の静寂を経た後での、「ありきたりな〜」と「思い出のベンチに腰かけ」の詩・メロディーは、ともに、今年の曲の中でも最高峰であると感じる。文句なしの最優秀楽曲候補。

J特別になる日
バラード曲でもないし、かといってアップテンポでもない。暗いわけでも明るいわけでもない。曲に対する分類ができない、まさに小松ならではの独特の雰囲気を味わうことのできる楽曲であろう。GIZAの一職人としての岡本の編曲の仕事振りもなかなかのもの。世のヒットチャートでありふれている曲に比べると、なんと印象の薄いこと。しかし、この曲のようなしみじみとした魅力を有する曲を作ることができる才能は、本当に並外れたものであると感じる。まさに職人と呼べるものであろう。

K僕にあずけて
比較的もの悲しさを感じさせるAメロBメロから一転、アップテンポで明るいサビの展開がなかなかに印象的な曲である。「チャンス」と共通のものがあると感じる。編曲は大賀であるが、とりたてての問題はない。やればそれなりのものはできる人だと思うのだが、それゆえ「君さえいれば」の仕事振りは理解しがたいものがある。

L私さがし
ゆったりとしたバラード曲で、今作を締める曲としてふさわしいと思う。今までの彼女の最終曲と違い、話の終わりではなく、新たな一歩を踏み出そうとする意気込みをも感じる。彼女の今の前向きな心境が率直に反映されたのだと分析する。この曲も、曲調自体は非常に単調であるものの、聞けば聞くほど味わい深いものを感じ取ることができる。4th以降の小松の音楽的変化を象徴する曲といえるだろう。

総評:
曲を聞きながら分析をしていると、小松のソングライターとしての力量を存分に感じ取ることのできる傑作であるといえるだろう。しかし、そうであるにもかかわらず、きちんとした形でのGIZA販売戦略がないことから、売り上げは惨憺たる物となっている。これは本当に悲しく、怒りがこみ上げている。
まあそんなことはさておき、今後の小松がいったどのような楽曲を提示してくれるのか、本当に楽しみである。次回の他事総論は愛内里菜の新譜を分析。その次は菅崎茜です。

追記:そういえば、過去の他事総論「転向とマンネリ、そして壁」で述べた、「4作90点をとったアーティストはいない」という私にとっての不文律を、この作品で払拭してくれた。また一つ小松未歩が私にとってかけがえのないアーティストとしてまた一つ歴史を刻んだ一瞬でもある。さあ次はガーネットクロウ。私にとっての最強の不文律、「デビューしてから4作連続90点以上をとったアーティストはいない」を崩壊させてくれるかどうか。今年の音楽シーンの行く末だけではなく、自分にとっての音楽史を考える上でもまさにもっとも重要な作品となるであろう。







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