File30 臨時特集〜倉木麻衣「If I Believe」を斬る


音楽を本格的に聞き始めて○○年、数多くのアーティストと楽曲とに出会いつつ今日まで至ってきたわけですが、新曲やニューアルバムが発売されることを「わくわく」しながら心待ちにするアーティストというのは常に少ない。しかし、倉木麻衣はその少ない中に入るアーティストである。 前作が間違いなく名盤として残る傑作であったこと、そして先行シングルの出来が非常に良かったことから、今作に対する思いは並々ならぬものがあったのだが・・・。結論から言うと残念な出来だといわざるを得なかったというのが正直な私の感想だ。

歴史的名盤たる1st、コンセプトアルバムとしての世界観を、優れた楽曲と当時の彼女の持つ力量を如何なく発揮したことにより描き出した3rdを上回ることはないと、最初から思ってはいた。が、しかし、先行シングルから推測するに、今作は倉木麻衣のアーティスト性ではなく、産業音楽として多様性と優れた完成度を如何なく見せ付ける作品であるとは確信していたのである。
今作に対し私は2ndと同じ86点をつけた。これが他のアーティストであるのなら賞賛に値するといってもいい点だ。しかし、彼女に関しては、誠に勝手ではあるものの常に90点以上の作品を期待している私にとって、大いに不満が残った。今回このような結果になったのには、

@アルバムオリジナル曲の少なさと完成度の低さ
Aシングル曲の編曲の問題
B大野愛果の楽曲の少なさ
C作品としての統一感の希薄さ

ということを感じたからである。一個ずつ詳しく見ていこう。まず@アルバムオリジナル曲数の少なさに関して、わずか4曲と過去最低の作品であった。これは客観的に証明できる。これはCの要因にもなっていると思うが、アルバム全体としての完成度を考える上でまずマイナスになった。ただ、そのことよりも私が問題にしたいのは、その完成度の低さである。悪くはないものの、最終曲である「Tonight〜」以外の楽曲、特に8曲目の「SAME」と9曲目の「Just〜」のイマイチさがいただけなかった。それ以外の曲に関しても結局はシングル曲を越えるどころか、匹敵することもできなかったように思う。例えば1stでいうなら「dalicious way」「Happy days」、2ndでいうなら「Perfect Crime」「What are you waiting for」、3rdなら「Fairy Tale」「Key to my herat」のような完成度の高さと魅力溢れる楽曲に恵まれなかったのが致命的であった。
A如何なく魅力を見せ付けていたシングル曲ではあるが、当作に収録されることによって編曲が変えられた。しかし、その結果はことごとく失敗だったように思う。特に今作は愚か倉木作品を代表する楽曲である「Time after time」「Make my day」に関してかなり問題があった。それは名画に凡人が勝手に書き加えたかのように酷いと感じる。当初のシングル版の方が圧倒的によかったと思うのは私だけであろうか。
今回、殆どの楽曲の編曲を1stで名を馳せた「cybersound」が担当したのだが、これは失敗であった。
私は編曲に関しては、実力者や有名人物が担当するのではなく、有名無名を問わず、その楽曲の魅力を最も高く引き出すことのできる人物が担当すればいいと考えている。実力があるからといって、全部をサイバーサウンドにさせるのは、楽曲を考える上で最適な方法とは言いがたい。そのことが悪い面で顕著に出てしまったのである。。
Bこれも客観的にいえる。今作はなんと3曲のみ。しかもその3曲すべてアルバムオリジナル曲ではなく、既に知っている曲であることからも非常に残念である。大野はやはりGIZAの楽曲提供者の中でも最高の実力者であるし、何より倉木との相性が最もよく、そして間違いなく彼女の魅力を一番引き出すことのできる人物であるからだ。今作の大野楽曲を聞いていて、アルバムの楽曲の中でも際立った完成度を誇っていることから、やはりアルバムの鍵を握る最たる要素の一つに大野の存在を感じずにはいられない。
そして最後のCである。上記内容と重複するが、今回シングル曲4曲、カップリング曲2曲といったことがその要因になっているといえよう。1stは「R&B的要素を取り込みつつ和製ポップスの枠を広げた作品」、2ndは「R&BとAOR的要素を融合させた大人的な作品」、3rdは「ファンタジーをキーワードとしたコンセプトアルバム」というように、各アルバムを称するなんらかの言葉を思いつくことができるが、今作に関してはそういった言葉をつけることができない。つまりは中途半端なのである。

他にも述べたいことがあるのだが、ここまでにしておこう。
以上様々なことを述べてきたのだが、やはりこうなってしまったのには、前作が発表されてから今作が出るまでの期間が非常に少なかったことにあろう。しかも製作にひたすら打ち込んだということではなく、コンサートツアーと学業とを平行させながらであることから、倉木や製作陣やGIZAにこのアルバムを冷静に振り返ったり、熟成させたりする時間が果たしてあっただろうか。恐らく夏にGIZAが企画しているであろう何らかにあわすため、発売が早くなったのではと思う。だが、早く発売されることによって完成度が下がるのであれば、いっそのこと待たされてもかまわないから圧倒的な完成度を誇る作品を出して欲しかった。今作における倉木の歌唱が非常によかったことからもこのことは非常に残念である。
散々厳しいことを言ってきたけど、86点という点が示しているようにアルバムとしての完成度はそれでも高い。実際問題、今年の残り半年弱でこの作品を超えるものがいくつでてくるかというと、恐らく指の数もでてこないと思う。優れた楽曲の安定供給に関しては、依然として業界でトップクラスであると私は考えている。でも冒頭やレビューで言っているように、倉木に関して「いい作品」「聞ける作品」を望んでいるわけではない。あくまで「名盤」、それも「歴史的名盤」である。次こそは名盤であることに期待したい。

次回は「転向・マンネリズムと王道、そして壁」の続きをやります。







botan2.gif
他事争論過去一覧へ


botan1.gif
ホームへ