File27 at the BEING STUDIO 90's hits vol.2〜female〜を検証する2


前回のレビューの続き。
まずはBA−JI。織田哲郎プロデュースでデビューした4人組グループ。今までのロック志向やメロディアス志向を目指したビーイングのグループアーティストとは違い、面白さとノリの良さで満ち溢れたさわやかなポップソングを聞かせてくれる異色のアーティストであった。
ボーカルの中沢晶のユーモアと皮肉のセンス溢れた詩のセンスもなかなかのものである。楽曲からにじみ出る独特の世界観も結構お気に入りであり、個人的には結構注目していたのだが・・・。後にBAJIーRと改名・移籍し、作品を発表していたのだが、結局これといった活躍をせぬまま2000年に解散。ちなみにボーカルの中沢は、織田のお気に入りなのか、最近では織田プロデュースである小畑由香里に詩の提供をしている。
次は、秋吉契里。この人のことは全く知らなかったのだが、今作において一番の収穫であったと思う。彼女自作自演の楽曲は、今でいうところの「ネオアコ」的雰囲気を有している。詩・歌唱・メロディーセンスは結構高く、正直驚いた。この作品の解説には「早すぎたアーティスト」と書かれているが、この考えには私も同感。歴史に「たら・れば」はないのは承知だが、ここ最近にデビューであったのなら、それなりの支持を得ることができたのではないだろうか。結局彼女は何の活躍もせず消え去ってしまったのだが、消え去らせてしまうにはあまりに惜しい才能であると感じた。
次は柳原愛子。まさにビーイングの王道をいくロック・ポップを融合させた楽曲。外見もビーイングの王道を体現するよさを有してた彼女であるが、この曲も含め、楽曲と戦略には、残念ながら全く持って恵まれなかったといえよう。悪くはないのだけど、彼女ならではの個性を殆ど感じなかったことが致命的でったといえる。
次は森下愛子。川島だりあ提供の楽曲は、彼女ならではの力強さと勢いを感じるハードロック曲である。楽曲もいいし、それを歌う森下の伸びやかな歌唱もなかなかなかなのだが、ビーイングならではの声質のよさ及び彼女ならではの個性というものを感じなかったのが残念。彼女は93年のデビューだが、同じ年に松田樹利亜、94年に田村直美という同タイプの音楽をさらに高次元で提示できる天才アーティストが出てきたことから、急激に地位を低下させ時代にうずもれてしまった。
最後は中原薫。川島だりあの提供曲であるが、これ以上にない、と思うほどさわやかな楽曲である。しかし、それ以上の感想を述べるには、とりたててものもがあまりにない凡曲である。この曲も悪くはないのだけど・・・。

全体的な感想としては、楽曲そのものは、自分が考えていたよりは酷くなく、それなりに聞けるものであったといえよう。やはりビーイングが送り出してきただけのことはあると思う。そして、いろんなジャンルとポップソングとの融合に常に取り組んできたビーイングの楽曲政策の姿勢は、曲の完成度とは別に評価できる。しかし、歌い手そのものの歌唱や音楽的才能はそれなりのものがあったのだが、坪倉・BA−JI、秋吉らの一部アーティストを除き、同業他社のアーティストを退けるだけの勢いや個性がなかったことが、何よりもまず致命的であった。特に、ビーイングならではの最大要素である「声質のよさ」が彼女らに総じて見出せなかったのが残念でならない。
また、今回収録のアーティストは秋吉・BA−JI・七緒以外は、ビーイング絶頂期である92〜93年にデビューした。既にZARDや大黒摩季、WANDSらが頂点を極めようとしている中で、彼女らのあまりに無計画で戦略性に欠ける乱発デビューが、上記問題を生じさせた最大の要因である。そしてそれは、厳しい意見になるが、当時飛ぶ鳥を落とす勢いのビーイングに対する世間的な反感を生み出し、ビーイング全体の勢いを単に弱めただけのような気がする。94年中盤以降勢いをつけてきた小室系にビーイングが壊滅寸前まで追い込まれたのはまさにこのことがあるからだろう。それのみならず、こういった戦略は、アーティストそのものもだめにしてしまうことからなおさら罪深きものといえるのではないだろうか。何故にこのようなわけのわからない戦略をビーイングはとってしまうのか、その理由は全くもって不明である。

ビーインググループが抱えるこれら問題は、GIZA体制になって少しはましになったといえど、根本的なところでは何ら変わっていない。楽曲の完成度が高いにもかかわらず、いまいち人々から好かれていない・業界の盟主の地位をとれないのには、いつもこのことがあるからである。ガーネットクロウのキャンペーンや相変わらずのアーティスト乱発などはこのことを象徴している。いいアーティスト・いい曲を生かすも殺すも戦略が重要であることをビーイング一派に理解して欲しい。戦略の基本をきちんと抑えつつ、ビーイングやGIZAならではの、良質の楽曲を生み出す才能あるアーティストをきちんと育てて欲しいと切に願っている。

次回以降は「音楽におけるマンネリズムと王道、そして壁」というテーマでしばらく連載したいと思います。これはこのサイトを開設する前から、絶対にやろうと考えていたテーマであります。大作になる予定ですが、お付き合いください。では。







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