他事争論

File168 2005年女性音楽シーン総評〜シーンは再び混迷期


さて、少し早いような気もするが、今年の邦楽女性音楽シーンを振り返ることにする(他事争論File136および11月10日の日記なども参照ください)。

今年初頭の予想や、「映画には歌姫がいっぱい〜女性音楽シーン復活か?」において、「女性音楽シーンが低迷状況から脱するのでは・脱したのでは」的文面を書いた。しかし、結論から言うと、このような見解は「まちがい」ないしは、そこまで言い切らなくても「そう判断するのはまだ適当ではなかった」と言わざるを得ない。以下、このことの説明を今年の女性音楽シーンの大まかな動きを振り返りつつ行っていく。

このサイトにおいて何度か述べているが、今年は「2002年以降大きな動きもなく、低迷状況にあった女性音楽シーン」がようやく明確に動きを見せた年である。以前File136やそれ以外のところでも書いたので細かくは述べないが、その根拠として、1・「BoA・平原綾香をはじめとした21世紀デビュー組の台頭」。2・「ハードな音楽の台頭」、3・「人気作・話題作の邦画・アニメへの楽曲起用によるヒット」などを示した。
特に2の項目は、映画「NANA」やテレビアニメ「ガンダムシード」に象徴される3の項目と一体化することにより着実に成果を挙げた。また、依然として純愛路線や癒し系路線の映画の人気が強いことから、そういった映画に起用された平原綾香・浜崎あゆみ・宇多田ヒカル・柴咲コウ・一青窈などの歌う「王道バラード」曲もそれなりの売上げを記録した。

このような状況を鑑みて、「それなりに女性音楽シーンが盛り返しを見せてきた」と私は考えたのであるが・・・。今年の終盤以降何だか雲行きが怪しくなっているな、というのが現時点での偽らざる本音である。

何故自分自身が示した予想を完全に否定することになったのか? それにはいくつか理由がある。

まずは歴然と数値がそれを示していることにある。

「日経エンターテイメント2005年12月号」を見ると、この雑誌が調査時点では、シングルに関しては上位8位までがすべて男性アーティスト。さらに上位30位に入った女性アーティストがわずか5アーティストと、圧倒的に「男性アーティスト圧勝」の結果となった。一方アルバムに関しても、上位30アーティストのうち女性アーティストが8アーティストで、しかもその中で上位2作品である倖田來未とBoAの作品がともにベストアルバムであることを考えると、こちらも同様の結果と言わざるを得ない。

とはいえ、宇多田や浜崎の失速ばかりが話題となったここ数年の状況に比べると、YUI、高橋瞳、HIGH and MIGHTY COLOR、中ノ森BAND、大竹佑季、愛名、as、ナナムジカ、伊藤由奈、植村花菜ら有力な新人が出てきたこともあるし、それら新人の中でチャート上位を取るものも出てきていることから、シーンそのものは活気づいているようには思う。が、実はここに大きな落とし穴があるように思えてならない。それは、上記アーティストも含めた今年のヒットアーティストの「売れた理由」に他力本願さが否めないからである。

今年ヒットした曲に顕著に目立っているのは、特定作品のタイアップになっていること。その最たるものが、映画「NANA」であり、アニメ「ガンダムSEED」であろう。もちろん、曲そのものにも人を惹きつける何らかの魅力があったのは間違いないだろう。だが、曲やアーティスト、および各々の魅力・完成度よりも、「タイアップ元である作品」の圧倒的な人気に引きずられ、売れた感が否めない。つまりは、「だれだれの曲だから」とか「この曲いいね」ではなく、「NANAの主題歌」「SEEDの主題歌」という点がヒットの理由のほとんどを占めてしまっているのである。実際問題、ハイカラや高橋瞳を始め、SEEDで人気を得たアーティストはその後作品を出すごとに売り上げが落ちている。ハイカラに至っては最新シングルの初動売上が1万枚を切るという「GIZAアーティスト並」の結果になってしまった。
一方の「NANA」に関しても、主役を演じた中島美嘉が、今後発表するであろう「NANA」と全く関係のない曲が同様に売れるかというと、「NANA」以前の中島のシングルの売上げを見ればわかるが、おそらくありえないだろう。伊藤由奈に関しても、同様である。これが超大型タイアップの怖いところ。大ヒットをもたらすこともあるが、タイアップ元の作品に対する絶大な人気が故に曲を作り・歌っているアーティストの顔や活動を一方で不透明なものとし、単なる一発屋を量産する結果になってしまうという危険性も同時に存在するのである。

実は私の予想が大きく外れる結果になったのは、この両ビックタイアップに密接に絡んでいるソニーのダメさにあった・・・。

今年女性音楽シーンに顕著に見受けられた「ハードロック」系音楽の人気を支えていたのは、ハイカラ・高橋瞳とSEEDでデビューし人気を得たアーティスト。しかし、その受け皿となっていた「SEED」そのものの終了とともに「ハードな音楽」の人気・売上げも失速することになる。
また、SEEDやNANAとは関係ないものの、ハードな音楽もやっている木村カエラに関しても、モデルとしての彼女の人気や「SAKUSAKU」に頼りすぎた面は否めない。この手の歌い手の場合、楽曲の出来や歌唱の出来ではなく、歌い手本人の人気や、アイドル・女優を含めた「人気女性のタイプの変化」によって売上げが大きく左右されやすい。次の時流がきたら一気にそちらへと人は流れてしまう・・・。長続きはしないのである。
結局ソニーは、自ら作り上げた人気を自ら潰してしまった。その結果、今年の下期において、ハードな音楽とは別の流れが女性音楽シーンを席巻することになるのだが、ソニーの一件とあわせこのことが復調傾向をいくばくか見せていたであろう女性音楽シーンを再び低迷へと陥れてしまう危険性を秘めているのだ・・・。

続く。






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