他事争論

File166 映画には歌姫がいっぱい〜女性音楽シーン復活か?


まずはお詫びを。以前の予告に書いた「バツ丸私論編」ですが、寄稿文の「上半期総評&05年下半期要注目アーティスト」に書いてしまったので、そちらを御参照下さい。よってここでは割愛とさせていただきます。ということで本編。


物事には流れというものが必ずある。どんなに盛況でもそれが永遠に続くことはなく、逆に低迷し続けていたとしても、何かの拍子にその状況が好転することも往々にしてある。人気が出れば、それに対するアンチの勢力が出たり、反動が出たりするのも、エンターテイメント業界によくあることだ。音楽の流行り廃りなどもその典型であろう。

1998年から続いていた邦楽における女性アーティスト優位のチャートは2002年で終了し、それ以降は常に男性アーティスト優位のチャート状況となっていた。また、チャートのみならず、「癒し系」の動きから中々脱却できないなど、売上の低迷を反映するかのようにシーン自体が硬直していたのも、男性アーティスト優位状況を生み出してしまった大きな理由でもある。だが、どうやら上半期終りぐらいから下半期の今にかけてその動きに変化の兆しが見えようとしている。そう、再び女性アーティスト活性化(=男性アーティスト低迷)の状況になりつつあるのでは、ということである。
その根拠として、男性アーティスト優位のチャート状況の象徴的存在であるオレンジレンジの新曲の売上が、「いま、会いにいきます」「電車男」と巨大タイアップであったにも関わらず、昨年曲の初動を越えられなかったこと。完全に勢いは止まったと言える。また、ラウドロック勢のアーティストが一部を除きかなり淘汰されてきたことを見ても、男性アーティスト人気の状況にある程度の歯止めがかかったと言えるのではないだろうか。さらに、以前の他事争論で記した通り、「制御された情念系」や「ハードロック」系列音楽の流行など、女性音楽シーンにおいて「癒し系音楽」からの脱却が顕著に見て取れることもあろう。
そして最後に、本論のテーマである、「邦画」における女性アーティスト曲タイアップが初夏の映画あたりから著しく増えていることがあるのではないだろうか。現に、

・平原綾香 「Etarnally」 (「四日間の奇蹟」) (6月)
・YUI 「Tomorrow'a way」「HINOKIO」(7月)
・浜崎あゆみ 「HEAVEN」 (「SHINOBI」) (9月)
・北出菜奈 「Alice」 (「深紅」) (9月)
・一青窈 「かざぐるま」(「蝉しぐれ」)(10月)
・中島美嘉 「GLAMOROUS SKY」(「NANA」) (9月)
・伊藤由奈 「ENDLESS STORY」(「NANA」) (9月)
・ユンナ 「タッチ」 (「タッチ」)(9月)
・YUKI 「歓びの種」 (「タッチ」) (9月)
・宇多田ヒカル 「Be My Last」 (「春の雪」) (10月)
・RIN’ 「Flashback」「夢花火」 (「仮面ライダー響鬼」) (9月)
・柴咲コウ  「Sweet Mom」 (「この胸いっぱいの愛を」) (10月)
・拝郷メイコ 「蒼い花」 (「変身」) (10月)


と邦画の話題作、人気作を軒並み占めている。
(また、「シン・シティ」の日本でのイメージソングとして安室奈美恵の「Violet Sauce」の使用が決まっている。)

以上のことから見ても、邦画作品において女性アーティストが重宝されていることがよく分かる。
そして、このことは、当然のことながら売上にも影響を与えている。

浜崎曲は既に20万枚、伊藤由奈は17万枚、中島美嘉は30万枚を越えるなど、まずまずの健闘ぶりを見せている。また、ユンナも映画タイアップをきっかけに一気に人気を上昇させてきた。まだ映画が公開中であるので、さらに数値を伸ばしてくるのは間違いないだろう。映画タイアップによって女性アーティストシーンが盛り上がりを見せてきた、といってもいいのではないだろうか。

ここに来て何故女性アーティスト曲の映画起用が増えてきたのだろうか? その理由としては、「邦画作品の好調とそれを支える癒し系・純愛系作品の存在」、があるからだと考えている。

その先駈けとなった2003年(それ以前には癒し系・純愛系に相当する作品がない、及び収益上位に入ってはいない)の「黄泉がえり」は収益30.7億円で邦画4位、洋画を入れても15位と大健闘。さらに2004年においては、この動きを決定的にした作品である「世界の中心で、愛をさけぶ」と「いま、会いにゆきます」がそれぞれ、「収益85億円・邦画2位・総合6位」「収益48億円・邦画3位・総合9位」と有力作品がひしめく中ですばらしい結果を残している。かつての邦画ではありえなかった大ヒットぶりである。(参考:社団法人日本映画製作者連盟「日本映画産業統計」より http://www.eiren.org/index.html)
また上記今年上映作品に関しても、「深紅」「仮面ライダー響鬼」以外の殆どの作品が「愛」「純愛」をテーマとなっているなど、依然としてこの系統の作品の需要が多い・人気が高いと言えるのではないだろうか。

で、このような系統の作品を考える上で重要となるのが、映画の世界観を伝え、映画の内容を補足し、さらに映画の宣伝にも繋がるであろう「主題歌」の存在である。女性アーティストの曲の起用が増えてきたのは、実はこの点にある。このような作品の、いわゆる「ピュア」で壮大な愛世界を示すのに女性アーティストの曲が、特に「王道バラード」曲が「ふさわしい」、ということであろう。レコード会社やアーティスト側にとっても、大量収益が見込め&多くの人が目にするであろう映画に曲が使用されるのは、何よりも大きな宣伝となる。双方の利益の一致が、今回の流れを構築した。「黄泉がえり」の主題歌、柴咲コウの「月のしずく」以降、この風潮が強くなっていると言えるのではないだろうか。上記曲も、中島曲とユンナ曲(北出曲は未聴なので不明)以外、すべてバラード系統。シーンにおいては既に「脱癒し系」「脱純愛系」の動きを見せているが、依然として映画業界が「純愛」「癒し系」に支配されている以上、王道バラード曲の優位性は動かない、ということか・・・。

さらに本編とは話がそれるが、面白いことに、映画そのものに女性アーティストが出演する、ということもある。
上記「NANA」においては、中島は主役、伊藤は脇役とは言えライバル役を演じている。また、YUIは来年春に公開予定の「タイヨウノウタ」で主役、木村カエラは10月に公開予定の「CUSTOM MADE 10.30」で奥田民夫と共演している。一青窈に関しても「珈琲時光」で主役を演じるなど、女性アーティストの映画進出も著しい。この動きは、モデル出身のアーティストが増えている現状を見ても、また感性豊かなアーティストが増えているのを見ても、さらに映画・ドラマとアーティストとのコラボが増えている現状を見ても、今後増えてくるのではないだろうか。

下半期の女性音楽シーン及び、2005年、さらに今後の女性音楽シーンを考える上で、「邦画」が大きな鍵となるのは間違いないようだ。






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