File155 ゴシックメタルとは何ぞや!!?3〜今何故ゴシックメタルなのか


何故執拗にゴシックメタルを取り上げるのか?。それは日本の音楽シーンに影響を与えようとしているからである。よって、ゴシックメタルを取り巻く事情と音楽シーンとの絡みを、今回説明していく。またあわせて、ゴシックメタルシーンの今後に対する予想も記していく。

ゴシックメタルというジャンルは、以前の他事争論で説明したようにヨーロッパ文化と深いかかわりがある。日本で言えば、少し強引ではあるが演歌のようなもので、その時々の流行り廃りに影響を受けはするものの、基本的に根強い人気があると言えるだろう。実際、7・8年前にヨーロッパでは、ギャザリング、シアターオブトラジティー、ウィズインテンプテーションら「ゴシックメタル四天王」らの大活躍により、ゴシックメタルはヨーロッパメタル界のトレンドとなった。しかし、この時日本では宇多田・MISIAを主軸としたR&Bブーム。ヨーロッパと日本との音楽事情の温度差を端的に示しているといえるが、ゴシックメタル四天王をはじめとしたアーティストの作品が日本でも数多く発売されるなど、ブームの影響は、小さいながらも確かに存在した。ただ、日本の音楽シーンそのものには全く影響を与えなかったのだが・・・・。しかもブームは一過性に過ぎず、ここ数年は四天王の作品すら日本国内盤が発売されないという状況になっていたのである。
(現時点で、日本で安定した支持を受けているのはNIGHTWISHだけといってもいい状況であるが、彼女らはどちらかというと、ゴシックメタルではなく、メロディックパワーメタルよりの音楽。)
つまり、ゴシックメタルはヨーロッパではそれなりに流行っているが、日本では全くそうでない、ということだ。

しかし、依然として日本ではゴシックメタルは不振であれど、取り巻く状況に関しては、あるアーティストの登場により、一変する。エヴァネッセンスである。

彼らは、ジャンル区分で言うと、ゴシックメタルとはならない。どちらかというと、ラウドロック、メタル、プログレメタルの色合いの方が強いと言えるだろう。しかし、同時に陰影のついたサウンド構築、深遠で美しいサウンドと鋭利で硬質なサウンドととの対比、多彩な表現が見事なエイミーのボーカルなど、ゴシックメタルの方法論が取り入れられてもいる。いや、そういうよりは、彼らの音楽や詞などに、ヨーロッパのクラシック音楽やヨーロッパ文化に通ずるものがあったとすら言える。マイナー調のメロディー、ドラマティックなメロ展開や荘厳なサウンド構築、哲学的問いを内包した詞・・・メンバーは皆アメリカ人であるが、うねるようなラウドロックサウンドとそれがもたらすかっこよさ以外、アメリカンな要素は殆どない。ヨーロッパで400万枚以上(アメリカでは600万枚以上。日本では40万枚くらい)と、アメリカ本国と遜色ない売上を見ても、彼らの音楽がヨーロッパ人の感性に合っていたのは間違いないだろう。
とにかく、今作は純粋なゴシックメタルではないものの、作品のインパクトは絶大で、ヨーロッパのゴシックメタルシーンに起爆剤とも言うべき強烈な刺激を与えた。NIGHTWISHを主軸としたヨーロッパ生粋のバンドと相乗効果を上げ、ヨーロッパのゴシックメタルシーンを再び「ブーム」と言えるまでに盛り上げるに至ったのである。そしてその動きは日本にも影響を与える・・・。

私自身もそうであるが、エヴァネッセンスを契機としてゴシックメタルを聞き始める、ないしは再考する人がかなりいたことは確かだろう。昨年から今年にかけて、NIGHTWISH、新鋭EPICAら有力どころの新譜が日本国内でも立て続けに発売され、日本でもまずまずの売上があったことからもある程度は言えるのではないだろうか。また、NIGHTWISHは既に日本公演を行ったし、EPICAに関しても既に日本公演の話がでている。さらに、今年に入ってからハードロック・ヘヴィーメタル専門誌である「BURRN」において、既に2回もゴシックメタル特集が組まれた。日本国内におけるゴシック熱は確実に高まりを見せているのである。

ここ2年くらい、アブリルやエヴァネッセンス、アナ・ジョンソン、ヒラリー・ダフらアーティストの活躍により、日本でも「女性ボーカルが歌うハードな曲」がヒットした。とはいえ、日本の女性音楽シーンを振り返ってみると、2004年シングル売上上位30位以内に入った平原綾香・柴咲コウ・浜崎あゆみ・大塚愛・一青窈・ドリカムの曲を見るに、殆どの曲がいわゆる「王道バラード」だったのだが・・・。しかし、2005年の上半期の動きを見てみると、HIGH and MIGHTY COLOR(以下ハイカラと記述)や高橋瞳、木村カエラの曲がオリコンでベスト10入りするなど、日本女性音楽シーンや人々の嗜好の「ハード化・へヴィ化」が確実に見て取れる。アメリカとはかなり時差があるが、日本でも女性ヘヴィーミュージックの波が来たということか。
特にこの中でもハイカラの存在は無視することはできない。彼らの音楽は、エヴァネッセンスのようにラウドロックやモダン・へヴィネスからの影響が強くあるが、エヴァネッセンスと同様、音楽性にゴシックメタルの要素を確実に含んでいる。彼らの成功如何では、日本にも本格的なゴシックブームが来ることも夢ではない。もちろん、以前からこの系統の音楽をやっていた、moveやOliviaらの存在も見過ごしてはならない。さらに、日本のこの動きを加速させそうな動きが、一連のブームの火付け役でもあるアメリカでもあるのだ。

今アメリカでかなり人気があり、日本でも先日リリースされたTVドラマシリーズ「トゥルーコーリング」(とても面白い!!)の主題歌「Somebody Help Me?」を歌っているFull Blown Rosehttp<公式サイトは→://fullblownrose.com/試聴もできます>。20世紀フォックス社の新刊ビデオシリーズの宣伝場面においてもこの曲が使用されていることから、アーティスト名も曲名を知らずとも耳にした人はいると思う。まだ、CDがリリースされていない状況で語るのは早いと思わんでもないが、彼らの音楽性も、「ラウドロック+ゴシックメタル」的要素とエヴァネッセンスと共通するものがある。映画サントラがキッカケでヒットしたエヴァネッセンスと同様、このテレビシリーズをキッカケにしてこのグループのこの曲もきっと話題になり、ヒットすることだろう。もちろん、アメリカ音楽からの影響が強い日本でもだ。本家のエヴァネッセンスは、ベン・ムーディーの脱退により完全に失速しているが、Full Blown Roseの活躍により、この系統のアーティストが生み出される土壌が再びできる可能性がある。


・ゴシックメタルの今後

以前の論考で示したようにゴシックメタルの歴史は浅く、まだ10年少ししか経っていない。また、元々がデスメタル、ドゥームメタル、ニューウェイブといった様々な音楽からいろんな要素を組み合わせて出来た音楽でもあることから、今尚進化・変化を繰り返していると言えるだろう。では、ゴシックメタルの今後はどうなっていくのだろうか。何の根拠もないが、以下の3つの流れが強まっていくと予想する。

・脱ゴシックメタル
まずは、音楽性の拡大により、ゴシックメタルの範疇に入らない音楽に転向する、というのがある。ゴシックメタルが有していた各要素の一部が強まることにより、その影響元の音楽〜例えば、プログレッシブロック、フォークやトラッド、ワールドミュージックへと変わっていくパターンが多いと言えるだろう。これは実際多く、ゴシックメタル四天王であるギャザリングやTHE 3RD AND THE MORTALなどは、既にこの路線を選択し、ゴシックメタルとは一線を隔す音楽を今やっている。

・ラウドロック モダンヘヴィネス路線との融合
エヴァネッセンスが作り出したこの流れは、アメリカのアーティストを中心に今後もゴシックメタルの主流となるだろう。特に、日本に対する影響に関しては完全にこの路線に限定されているので、ある意味最も注目する必要がある。本音を言うと、ゴシックメタル云々関係なく、ヨーロッパのアーティストのような、クラシックやオペラにも通ずる荘厳さや徹底した美意識を見せてくれる日本のアーティストも出てきて欲しいと思っているのだが・・・。
(現時点では殆どいない。ガーネットクロウやOliviaと本当に少ない・・・。)

・ヨーロッパ型の強化
アメリカ側からの攻勢が強くなっているゴシックメタルであるが、それに対しヨーロッパも黙ってはいない。本家として、よりゴシックメタルとしての純度を高める動きも出てきている。亜流に対する正統派の抵抗である。四天王の一つ、Within Temptationや新鋭のEPICAはその典型。ヨーロッパのアーティストらしく、オーケストレーションをふんだんに用いてクラシックやオペラにも通ずる荘厳さや美しさを一点の緩みなく追求していくことだろう。文化と歴史、確かな音楽教育がもたらす本家の音楽性は、アメリカや日本のアーティストにはない確固たる魅力がある。


・最後に・・・
唐突な思いつきで始めた今回のシリーズ、如何でしたでしょうか?。まあ、当サイトをごらんいただいている殆どの人には何の関係もない音楽なので、恐らく退屈だったでしょうが・・・。

いい音楽、自分が好きになれる音楽との出会いはそう簡単に果たせるものではなく、時に時間や金の浪費や精神的苦痛といったものを伴います。しかし、「虎穴に入らずんば虎子を得ず」ではありませんが、失敗や不安・不満を恐れていては、何も得るものはありません。どうでしょう?、ここで一つ勇気を振り絞って、深遠で美しいゴシックメタルの世界に入ってみませんか?。10人いれば8・9人が見向きしないであろうゴシックメタルですが、はまれば一生聞き続けられる音楽であるのは間違いないでしょう。残りの1人か2人に入る可能性があなた様にあるかもしれませんよ!!。

次回は「ルネッサンス論」の最終章。その次からは90年代音楽論を始めます。






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