File154 ゴシックメタルとは何ぞや!!?2〜初心者にも分かるゴシックメタル講座?


今回から「ゴシックメタル」に関する説明を行っていきます。出来るだけどなたにも分かっていただけるように解説していきますが、その説明のためにどうしても音楽用語を用いなければならない場合も出てきます。最小限にとどめるよう努力しますが、ある程度は許容していただくようお願いします。それと今回の論考は、「BURRN」1999年6月号内、「特別企画:メタル耳試聴質 第4回ゴシック編」を参考にしつつ、管理人独自の解釈に基づき書いていきました。当然のことながら様々ある解釈の一つに過ぎません。それがすべてで完璧に正しい、というわけではないので、あわせてご了承下さい。

1:ゴシックメタルの語源 音楽性の形成

「ゴシック」、英語綴りで書くと「gothic」になる。意味としては「ゴート人の」とか「ゴート風の」になる。この言葉を用いたもので最も有名なのは、「ゴシック建築」であろう。世界史や美術史の授業において絶対に出てくるのでご存知の方も多いはずだ。
12世紀の北フランスを中心に発祥・発展し、ヨーロッパ各地へと広がっていた建築様式で、石または煉瓦作りを基本とし、尖塔アーチ、リブ・ヴォールト、ステンドグラスを特徴としている。16世紀初期までヨーロッパ各地で作られるのだが、ルネッサンス絶頂期である15〜16世紀において、中世の美術を粗野で野蛮なものとみなす風潮が形成されたのに基づき、「洗練されていない」「野暮ったい」という意味を込めてこの言葉を用いたのが語源となっている。つまりは蔑称である。

また、18世紀から19世紀にかけてイギリスで流行したゴシック様式の建築物を舞台とするオカルト的な殺人小説・ホラー小説を総称して、「ゴシック小説」と言われていた。

そしてもう一つ忘れてはならないのは書体の「ゴシック体」(ゴシック文字 ゴシックフォント)。日本では縦画と横画が均一な太さの書体となっているが、ヨーロッパでは装飾的な筆記書体のことを指していうらしい。ヨーロッパでは装飾、多くの文書において明朝体を基本とする日本においては、何らかの意図があり文字を「強調」するときに使用される。
「ゴシックメタル」の語源・意味を考える上で、この3項目は念頭に入れておく必要があろう。

音楽史においてこの「ゴシック」なる言葉が登場したのは、1991年。デスメタル(獣の咆哮のようなディストーションボーカル、まがまがしく・暴力的なサウンドと演奏、殺人的なスピード感、死・消滅を絶えず連想させる詞を特徴とするメタル)、ドゥームメタル(キンキンとした金属音、必要以上に誇張されたギターリフ、うねるようなサウンド構築、テンポの遅い曲調、ダークな世界観を特徴とするメタル)的音楽をやっていた「PARADAISE LOST」の2ndアルバム、その名もズバリ「GOTHIC」。実はこの作品で示された音楽性がゴシックメタルの雛形・原点としてメタル界及び、アーティストに絶大な影響を与えることになる。この当時、メタルシーンにおいて、デスメタルにメロディー性・叙情性や正当派メタルの音楽性を取り入れた「メロディックデスメタル」(通称メロデス)が形成されつつあった。ゴシックメタルと同様、メロデスもデスメタル・ドゥームメタルといった音楽をルーツにしていることから、共に相互作用を繰り返しながら進化・発展し、メタルシーンの中における地位を拡大していったのである。
ゴシックメタルの原点となる音楽に関しては、デスメタル・ドゥームメタル以外にも、パンクムーブメントの次に80年代英国を席巻したニューウェイブからの影響も大きい。コンピュータテクノロジーをふんだんに用いた、共鳴音・反響音の導入、リズム感の重視といった特徴は、その典型といえるだろう。また、同一旋律の繰り返しが多いアンビエントな要素を見せるのは、ビョークからの影響もあろう。


2:ゴシックメタルの音楽的特徴

より具体的なゴシックメタル解説へと移る。ゴシックメタルの音楽的な特徴として、以下の点があると言える。

A:曲のテンポは遅目
B:徹底した対比表現を見せる歌唱・演奏・サウンド構築に基づく、荘厳・美麗・耽美且つドラマティックな音楽性
C:宗教的な問いかけ、哲学的な問いかけ、死生観、退廃感、耽美などが内包された詞やジャケデザイン


ここで注目すべき最たるものは、やはりBであろう。このことこそが、ゴシックメタルの真髄であり、核となる要素でもあることから、以下そのことについて説明をしていく。

とにかくゴシックメタルという音楽は、過度な対比表現による装飾・強調が基本になっているとすらいってもいいだろう。それは歌唱、演奏、音作り、ビジュアルなど音楽・アーティストを構成する多種多様な要素にまで及んでいる。

●歌唱
元々がデスメタル・ドゥームメタルから派生した音楽ということもあり、ゴシックメタル初期においては、男性ボーカルによる低音でゆがみのある「ディストーションボイス」が主流であった。しかし、シーンの拡大・進化により、音楽表現に対する美意識や可能性を追求していく過程で、パラダイス・ロストがそうしたように「女性ボーカルの登用によるダブルボーカルの形態」がとられるようになる。男性ボーカルと女性ボーカルとによる対比表現〜「美女と野獣」の如くの「美醜」表現は、ゴシックメタルのスタンダードモデルとなった。しかし、男性ボーカルと女性ボーカルによる「美醜」表現も時が進むにつれいくつもの「型」が構築されていく・・・。その主なものとして、

・男単独歌唱
聞く事がないので省略。

・男デスボイスVS女オペラ・クラシック的歌唱
男女混声グループにおいて主流となっているのがこの型。男はひたすら醜くさを、女は何処までも気高さ・美しさを表現し、それらが醸しだす耽美な世界に聞き手を誘う。格好もそれを象徴するようで、中世的な衣装を主としつつも、男がまがまがしいメイクや衣装になっているのに対し、女は美しいドレスとなっている。
代表的なアーティスト:Theatre of Tragedy、ELEND、EPICAなど。

・男デスボイスVS女メタルボーカル・パワーボーカル
耽美というよりは、メロディックメタル的な美しさを構築している。よって女オペラ・クラシック的歌唱に比べるとかなり聴きやすい。
代表的なアーティスト:昔のWHTHIN TEMPTATION。

・男ラップVS女メタルボーカル・パワーボーカル
ゴシックメタルというよりは、アメリカで活動しているラウドロック・ミクスチャー系のアーティストで、ゴシックメタル的方法論を取り入れているものに見られる。美の表現ももちろんそこにあるが、それと同等ぐらいにリズム感や先鋭感、かっこよさの創出に効果を出している。
代表的なアーティスト:エヴァネッセンス、move、HIGH and MIGHTY COLOR


・女性単独
女性ボーカルが上手すぎて、または魅力がありすぎて、男性ボーカルの存在意義を失したもの。個人的に、ゴシックメタルとはいえ男性ボーカルは不必要と考えているので、一番好きな型はこれになる。
代表的なアーティスト:THE GATHERING NIGHTWISH WHTHIN TEMPTATION。

他にもあるが、これぐらいにしておこう。次はサウンド。


●演奏・サウンド
ゴシックメタルの核となる対比表現において、ボーカルと共に重要な要素となるのが、ドラマティックさをもたらすサウンドや演奏である。
上記にあるように、ゴシックメタルはデスメタル・ドゥームメタル、ニューウェイブの影響を受けていることもあり、そこに様々な構造を見て取れる。
主な対比手法としては、メタル的な歪みや重み、鋭さ、暴力的な演奏・サウンドと、キンキンした電子音的な打ち込みサウンドとの対比。または、メタル的な〜と、キーボード・ストリングス、果てはクラシック音楽並に管弦楽器を用いた荘厳で美しい演奏・サウンドとの対比、がある。ある意味プログレッシブロックの要素を受け継いでいるともいえるだろう。前者はメタル的な歌唱スタイルを取るアーティストの間で、後者はオペラ的な歌唱を取るアーティストの間で主に取られている。
また、それのみならず、演奏面において執拗なまでに緩急・強弱・高低が強調されるのも、ゴシックメタルならではの醍醐味だと言える。どんなジャンルの音楽であっても、強弱・緩急などによる対比表現があるが、ゴシックメタルのこだわりははっきりいって尋常ではない。それは、対比表現によって劇的さや美しさ、耽美さを徹底して演出するという崇高な目的意識があるからだろう。その美しさたるや、クラシック音楽と比べてもひけを取っていない。死生観、退廃感、深遠さや耽美さ、宗教的美意識を内包した詞がその音楽性を一層守り立てているのも見逃してはならない。
ただ、こういった音楽性であるが故に、とっつきやすさなじみやすさとは一切無縁である。壮大で美麗な音楽性は、一方で「くどい」「気持ち悪い」「何やっているかわからない」と思われるのは間違いない。ゴテゴテの味付けがされた料理と同様、完全に好みが分かれるところ。また、アーティストのナルシズムが出すぎているきらいもある。自分の作った音楽に完全に陶酔しているというか・・・。ボディービルダーの筋肉美を無理やり見せつけられているような感覚といってもいいだろう。つまりは安易な気持ちで手を出すにはあまりに危険な音楽だということである。特にヘヴィーな音楽を聞きなれていない人にとっては、ヤバさ全開。ということで、僭越ながら入門用として相応しそうないくつかゴシックメタルの作品を紹介していく。但し歌姫サイトなので、女性ボーカル作品となるが・・・。あわせて上記歌唱や演奏・サウンドの特性に関しても併記する。


・Evanessence 「Fallen」(女性単独・メタルボーカル。1曲だけ男性ラップあり。メタルアプローチ)
2003年アメリカでも日本でも大ヒットしたエヴァネッセンスの1作目。音楽性に関しては、ラウドロック、ミクスチャー系、モダンへヴィネス、プログレメタル、といった要素が強いため、純粋なゴシックメタルではない。が、音の作り・曲調、美しさの演出などに関し、ゴシックメタルからの影響が多分にでている。欧州では当たり前のこの手の音楽も、アメリカや日本の一般リスナーにとっては「新鮮」に聞こえたのだろう。
メタル系・ゴシックメタル系のサイトやアマゾンのゴシックメタルカテゴリーにおいて、今作をゴシックメタルの一派と解釈しているものもあるし、ボーカルであるエイミー・リーを新世紀のゴス・クイーンと位置づけているものも少なくない。彼らの支持者の中にはゴシックメタルファンも多いのである。
次回で書く予定だが、今欧州でゴシックメタルの人気が再び出てきているのには、今作の影響によるところが大きい。
尚、今作はゴシックメタルのみならず、メタル・プログレメタルの入門用の作品としてもうってつけ。ガーネットクロウの中村もお気に入りの作品なので是非一度聞いていただきたいと思う。レンタル屋にもあるだろうし、未だに店頭で聞けるところも多いので・・・。

・THE GATHERING 「Nighttime Birds」(女性単独・メタルボーカル メタル・ニューウェイブアプローチ)
ゴシックメタル四天王の一つ、ギャザリングの最高傑作。他のゴシックメタルアーティストと違い、打ち込みサウンドの多用により重たさと冷たさとを構築しているのが特徴。歌い手であるアネクの歌唱は、適度な甘みを有しながらも力強さと伸びやかさとに溢れている。はっきりいってめちゃめちゃ上手い。日本では殆ど知られていない歌い手であるが、ヨーロッパでは人気投票すると上位に必ず入る人気者。
彼女の歌唱と無機質さすら漂う重厚な演奏との対比が見事。ゴシックメタル入門用としても最適。

・Theatre of Tragedy 「Aegis」(女性オペラボーカル・男性デスボイス クラシック・メタルアプローチ折衷型)これまたゴシックメタル四天王の一つ、シアターオブトラジティーの3rdアルバム。オペラチックな女性ボーカルと男性デスボイスの美醜対比による耽美的世界観を表現した、「これぞゴシックメタルだ!!」と言える一品。その音楽性は、聞いていて自殺したくなってくるほどの暗さと、深遠な美しさを放出しまくっている。現代世界からかけ離れまくっている時代遅れの、思わず鼻をつまみたくなってくる「クサ」さ全開。慣れるのにかなりの忍耐が強いられるが、一端慣れると聞かずにはいられない中毒性がある。

・NIGHTWISH 「ONCE」(女性単独・オペラボーカル メタルアプローチ)
ヨーロッパにおいて、現在のゴシックメタルブームを支える人気アーティスト、ナイトウィッシュの5thアルバム。どちらかというとシンフォニックメタル、パワーメタルの色合いが強い彼らであるが、オペラ的な歌唱と屈強でシャープなメタル演奏とが見事な対比表現を生み出している。

・EPICA 「Consign to Oblivion」(女性オペラボーカル・男性デスボイス クラシックアプローチ)
今欧州で人気・実力共に急上昇中であるEPICAの2ndアルバム。まだまだ荒削りな点が多いが、その潜在能力は今後のゴシックメタル界を背負っていくに足るものがある。「エピカクワイア」と名づけられた弦楽団と合唱団がフィーチャーされている点一つ見ても、彼らの人気ぶりやそれにかける期待の高さがうかがい知れる。今起こっているゴシックメタルブームが今後も続いていくか、それともしぼんでいくかに関し、彼らの活動ぶりにかかっている。

・Within Temptation 「The Silent Force」(女性単独・メタルボーカル メタルアプローチであるがクラシックの要素もあり)
ゴシックメタル四天王の一つ、ウィズインテンプテーションの最新作。当初は男性デスボイスとの混声形式であったのだが2作目以降脱却。今では女性オンリーとなっている。その選択は賢明であった。
壮大且つドラマティックなサウンドと、シャロン・アデル嬢の少しかわいめで伸びやかな歌唱が何とも言いようのない哀愁を醸しだす。その美しさたるや、ジャンルを問わず女性ボーカルアーティストの中でも最上級のものがあろう。この作品、ただいまアマゾンで注文中。日本国内版は存在しないのだが、入手は容易なので是非とも聞いて頂きたい一品。


●日本のアーティスト

・move  「Deep Calm」(女性ポップスボーカル・男性ラップボーカル メタル・ラウドロック・クラシックアプローチ)
かつては商業音楽的なユーロビートをやっていたmove。しかし路線変更後2作目となる今作は、過去の音楽性など微塵も感じさせない、実に「メタル然」とした作品である。エヴァネッセンス同様、様々な音楽を内包しているので純粋なゴシックメタルとは到底いえないのだが、楽曲の質は高い。但し、装飾華麗すぎるので立て続けに聞くのは辛いかも。

・Olivia 「The Lost Lolli」(女性単独メタルボーカル 男性ラップもあり メタル・ラウドロック・プログレアプローチ)
エイベックス最強アーティストだと思っているオリビアのソロ2作目。彼女の繊細で突き抜けるかのようなハイトーンボーカルとドスのきいた歌唱との対比、ゴリゴリメタルのサウンドとアンビエントなデジタルサウンドとの対比、美しい歌唱・メロディーと暴力的な演奏との対比・・・、まさにゴシックメタルの精神を体現しているといっても、差し支えないだろう。彼女に関しては、グランジとかビョークの音楽の要素もあるので、これまた純粋なゴシックメタルとはいえないものの、楽曲の質の高さ、面白さに関しては、世界的に見てもかなりのレベルにある。バツ丸重要アーティストの一人。

・HIGH and MIGHTY COLOR(女性メタルボーカル・男性ラップボーカル メタル・ラウドロックアプローチ)
本音を言うとここで紹介したくないのだが、今回の論の発端やこの後の論展開を考えていく上で彼らなしでは語れないので、とりあえず挙げておく。
男性ボーカルと女性ボーカルとの対比、ゴリゴリの演奏とメロディアスな歌メロとの対比など、一応形式的にはゴシックメタルの要素を満たしてはいる。しかし、現時点で彼らをゴシックメタルアーティストとして認めることは出来ない。ヘボラップ、雑魚な演奏、技術的に未熟すぎるボーカル・・・、お話にならない。2ndシングル「Over」の3曲目でもろゴシック路線を見せたのだが、水準レベルの技量を満たしていないアーティストが上っ面でこういう音楽をやるとどのようなものになるか、という答えを見事に見せてくれたように思う。一時は日本におけるメタルブーム、ゴシックメタルブームの旗手になるかも、とすら思っていたのだが、今ではその逆で、起こりつつあるブームを消してしまいそうな感でいっぱい。


他にも紹介したいアーティスト・作品はあるし、ゴシックメタルファンから見ると、「あれもない」「これもないぞ」と叩かれるのは必死であるが、とりあえずここまで。

次回は「何故今ゴシックメタルなのか?」を予定。本シリーズ最終回。





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