File153 ゴシックメタルとは何ぞや!!?1〜女性音楽シーンの傾向分析


自分で言うのもなんだが、当サイトの各種評論において気を配っていることに、アーティストや音楽に関し、単一の楽曲や単一のアーティストに対する「点の分析」ではなく、他アーティストや他ジャンル・他時代の音楽、他の文化・芸術・世相といったものを含めた「線の分析」「面の分析」を行っていることがある、と思っている。それは、ありとあらゆるものが、他の要素との関係性や脈々と続く歴史の継承により成り立っていると考えているからだ。
で、今回小評論的に「ゴシックメタル」に関し記していくのだが、その前に日本の音楽、ここでは女性アーティストになるが、そのシーンの動きの傾向に関しする見解を先に述べてからにする。

「ゴシックメタル」。最近High and MIGHTY COLORのレビューを始め、やたらとこの言葉を使用する機会が増えたように思う。とは言え、このサイトをご覧頂いている皆様の殆どにとって、恐らくなじみのないものだろう。だが、実は今、密かにではあるし、波というよりはさざ波に近いものがあるが、この「ゴシックメタル」が日本の音楽シーン〜女性音楽シーンに影響を与えようとしている・・・。

日本の音楽シーンは、その市場構成において、世界に類を見ない特殊性がある。それは、「日本が世界第2位の音楽大国」でありながら、日本国内のCD売り上げに占める洋楽の割合が3分の1を占めるのに対し、国内で生産された邦楽の売上の99.5%が「日本国内で占める」という極端な「輸入超過」の状況になっていることである。
(参考書籍 鳥賀陽弘 「Jポップとは何か」 岩波新書 第五章(日本という音楽市場のかたち)。

簡単に言うと、「邦楽は日本以外の国で全く消費されないのに、日本人は様々な国の音楽を幅広く且つ貪欲に聞いている」を意味している。
実はこのことは、日本の音楽シーンの形成に大きな影響を与えている。そのブームの形成に関し、「国内独自の動き」と「海外から」、特にここでは最も輸入されている「アメリカ音楽からの影響による動き」とが、並列または混在しているのである。例えば最近の事例でいうと、
宇多田やMISIAらが構築したR&Bブームはアメリカ音楽からの影響を顕著に受けている。が、その後に続いた癒し系ブームに関しては、それを形成する歌い手そのものはアメリカ音楽からの影響があるにはあるが、ブームそのものの動きは海外〜アメリカの動きとは全くリンクしていない。
またここ2年、アブリルやエヴァネッセンス、アナ・ジョンソンらラウドロックやミクスチャー系の影響を受けた音楽が流行ったが、ハイカラが登場するまでにこの手の音楽をやるアーティストがチャートの上位を占めることはなかったし、そもそもそれ以前にシーンに目立った形で登場してはいない。トータルセールスで上位を占めた女性アーティストは、宇多田であり、浜崎であり、倉木であり、中島であった。
このいびつとも言うべき構造が、日本の音楽を多様且つユニークなものとしている大きな理由ではないだろうか。

そしてもう一つ。ここ数年の女性音楽シーンに関しては、アメリカ、日本に匹敵する音楽市場である「欧州圏」からの影響が殆どないことである。かつては、ロクセット、クランベリーズ、クラウドベリージャム、ガービッチらといったアーティストが、それほど遠くない昔に日本でも絶大な支持を集めた。しかし、ボニーピンクやガーネットクロウ、Mizらそういった音楽からの影響を感じさせるアーティストが個々にはいるし、それ以外にもプログレやメタルの影響を受けているアーティストもいるにはいるが、シーンの動きとは隔絶してしまっている。
日本の音楽シーンに大きな影響を与えているアメリカ音楽とは違い、欧州の音楽に関しては、特にその中でもプログレやメタルといった音楽に関しては、日本で作品は売れはするが、そういった音楽をやる日本人が日本の市場で支持されることは絶無の状況にあるのである。

だが、今、欧州圏の動きがアメリカを経由するという迂回経路をとりながら、日本の音楽に影響を与えようとしている。そう、その一つがゴシックメタルなのである。





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