File152 最強音楽・最強アーティストを追い求めて〜RENAISSANCE列伝〜C


・「Turn of The Card」 (100点OVER 史上最高最強作品) (1974年)
1 ・Running Hard  2 ・I Think of You
3・ Things I Don't Understand  
4・ Black Flame
5・ Cold Is Being   6 ・Mother Russia


@Running Hard
クラシックピアノ調の旋律から始まる壮大なオープニング曲。9分以上に及ぶ大曲である。
疾走感と躍動感に溢れるピアノの旋律や交響組曲的な楽器編成が奏でる旋律は、すさまじいまでの緊張感と迫力とを有している。前奏部分だけ聞いて、この曲がボーカル入りと思う人はいないだろう。何せ2分半くらいしてからやっとボーカルが入るので・・・。
しかし、「待ってました」とばかりに入るアニーの歌唱は、すさまじいバックの演奏から一瞬にして「この曲における主役の地位の座」をかっさらう。恐ろしいまでの伸びやかさ、圧倒的な表現力、芸術的なハイトーンボーカル。この凄さを形容する言葉は見当たらない。
中間奏のインストバトルも圧巻。マカロニウエスタン映画での犯人追跡シーンを髣髴させる雰囲気がある。
「Ashes are Burning」の「Can You Understand」に負けず劣らずの名オープニング曲。これまた心を奪われる。

AI Think of You
穏やかなギターのバッキングから始めるバラード曲。壮大且つ緊張感を秘めた1曲目とは違い3分少しと短い。1曲目で上がったテンションをいったんクールダウンさせる意味合いの曲であろう。
アニーのゆったりとした歌唱と終始バックで奏でられるピアノとチェンバロの旋律が、穏やかな中にも曲に深みと荘厳さを与えている。ここでも神々しいとしか言いようのないアニーの歌唱が冴えに冴えまくる。なんて美しい歌唱なんだろうか。

BThings I Don't Understand
迫力のあるドラの音色と渋すぎるドラミング、ピアノの厳粛なバッキングらがどっしょっぱつから冴え渡り、否応無く聞き手を圧殺する大曲。その後に続く、ひたすら低音を駆使したアニーの歌唱が怖いほどに不気味さと鋭利さとを見せ付ける。しかし、既に完璧としかいいようのないここまでの部分も、その後に存在する2つの山場の前では単なる序章に過ぎない。
一つ目は1分45秒あたりから1分半以上にわたり展開される、切れすぎるピアノのバッキングとアニーの絶唱コーラスとの壮絶バトル。あまりにかっこよく、あまりに美しすぎる。昇天し天上世界へと誘われているようだ。
そしてもう一つの昇天ポイントは、中間奏の壮絶なピアノソロの後5分過ぎから展開されるアニーのシャウト。歌の女神がこの世に存在するとしたら恐らくそれは彼女ではないのか?。そう思えるような美しさがある。しかも、徐々にピアノとドラミングが加味され、アニーの絶唱を大いに守り立てる。大曲の終焉に相応しいクライマックスである。

CBlack Flame
ルネッサンスを代表する名曲中の名曲。ファンの間でもかなり人気が高い曲である。
ハープシコードをふんだんに効かせたクラシカルなギターとチェンバロの演奏がすさまじいまでの寒さと荒涼さ、そして美しさをこの上なく演出する大曲。今までのルネッサンスの曲にはない、「凍てつくような寒さ」「底なしの暗さ」を感じ取ることが出来る。
アニーの、感情を抑えた歌唱は、逆に心の中で抱えている葛藤や哀しみを恐ろしいまでに表現しているように思えてならない。そうまるで曲名である黒き炎がくすぶるかのように・・・。
アニーの歌唱を守り立てる各種楽器の演奏も完璧で、それらが奏でる旋律の美しさはクラシックの名曲に匹敵するといっても言いすぎではないだろう。

DCold is Being
3分弱と短い曲であるが、曲の持つ凄みや壮大さが曲の時間で決まるものではないことを思い知らされる秀曲である。
終始奏でられるパイプオルガンの旋律とオペラティックなアニーの歌唱は、教会音楽のような厳粛さと美しさをまざまざと見せ付ける。それを前に、思わずひざまずき目を瞑って祈りたくなってくる。アニー恐るべし。

EMother Russia
ルネッサンス史上どころか、プログレ史上、いや20世紀を代表する名曲中の名曲。この曲の有す凄み・美しさ・壮大さ・深遠さは、もはや時間と空間を超越するようにすら思える。
出だしのピアノの旋律と管弦楽器の旋律が、曲名である「母なるロシア」に相応しく、すさまじい寒さを演出する。それは、聞くものすべてを極寒の地へと誘うかのような凄みとスケールとを有している。
2分にわたり展開される、ひたすらに寒く・重い前奏が終わるや否や、主役であるアニーの歌唱が入る。もうそこでの歌唱は、歌姫の領域を超越し神の領域に入っている。それだけでなく、交響組曲的なバックの演奏や力強いドラミング、美しいピアノ演奏が歌の女神であるアニーの歌唱を守り立てるべく、これまた神がかり的といってもいいぐらいの緊張感と壮大さ溢れる渾身の演奏をたたきつけるかのように提示する。音楽の持つすべての素晴らしさ・感動がこの曲に集約されているのではないか・・・、心の底から私は思う。音楽を愛するすべての人に聞いていただきたい。

総評:
空前絶後の名作である「Ashes are Burning」からわずか1年で発表された今作も、前作に負けず劣らずのすさまじい作品である。この2作を聞いて、自分の音楽観が根底から覆されたのを認めざるを得ない。「これほどまでに美しく、すばらしい音楽を残りの人生で聞くことができるのか?」、その問いに対する答えは既に「ありえない」ということで結論付けてもいいだろう。ビートルズやレッド・ツェッペリンに匹敵、いやそれ以上の音楽的影響を私に与えた、自分にとっての史上最高のアーティストであると、この作品をもって本決まりとなった。

作品解説に移ろう。
牧歌的、トラッドやフォークといったイギリス伝統音楽といった前作を構築した要素が殆ど消失し、代わりに、クラシックの交響曲のような荘厳さや壮大さ、迫力、緊張感が作品を支配するようになった。それゆえ、幻想的でリアルさには欠ける彼らの作品の中で「最も地に足のついた作品」「分かりやすい作品」と言うことができよう。交響曲の要素をふんだんに取り入れ、ダークな曲調や凍てつく雰囲気を見せた4・6のような曲が、このような意識を持たせた最たる要因ではないだろうか。
そういったこともあり、ルネッサンス作品の中では最も聞きやすい作品だと思う。作品評価としては、わずかに「Ashes〜」の方が上であるが、好みで言うと完全にこっち。ルネッサンス入門用の作品として最適の一品であろう。
殆どが廃盤の憂き目にあっているルネッサンス作品の中で、現時点で確実に入手が可能な作品。是非とも聞いていただきたい。
かなり乱暴な物言いになるが、ルネッサンスの「Ashes are Burning」と「Turn of the Cards」を聞かずして「歌姫を語ることなかれ」とあえて言わせていただこう。

追記:
この作品を契機にして、彼らはファンタジックさや難解さを前面に押し出した、現実離れした音楽に傾倒していく・・・。作品のレベルとしては、全く下がらないし、はっきりいってとんでもない作品なのであるが、方向性に関しては幾分やばくなってくるのである。
(ただし、次回で詳細に語るが、実はプロローグ以降にリリースされた4作品はすべて最高峰の位置に属する歴史的名盤である。よって、未だに「ルネッサンス史上の最高傑作」に関しては、識者とか私のような一般人関係なく、現時点においても、ある程度納得がいくであろう統一した見解が得られていない。)

時代は既にプログレ衰退期。時代を作りし多くの名プログレバンドが進化の方法論の模索に行き詰り、あまりに現実離れしたファンタジックな音楽か自己満足の難解な音楽、極端な大曲主義の音楽、または進化することをあきらめありきたりな音楽へと傾倒していくようになる。プログレは、巨大化した自ら体を自らの手足で支えられなくなり自壊していくのだ・・・。
70年代半ばにおいて、最前線で活動していた名プログレバンドは、このルネッサンスとピンク・フロイドぐらいになった。しかし、そのルネッサンスですら、時代の流れに抗えず・・・。
次回はプログレ衰退期の最中に発表された2作(ないしは3作)についてのレビューと、「ルネッサンス音楽」の総評、そして「ルネッサンス音楽が残したもの」について独自の見解を記していく。日記の「音楽を辿る物語」とリンクさせていた本シリーズの完結編である。





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