File151 最強音楽・最強アーティストを追い求めて〜RENAISSANCE列伝〜B


garnetcrow00.jpg・「ASHES ARE BURNING」 (100点OVER 最高最強作品) (1973年)

1・Can You Understand  2・Let It Grow
3・On The Frontier 4・Carpet Of The Sun
5・The Harbour  6・Ashes Are Burning 


@Can You Understand
ルネッサンス史上を代表する名盤の1曲目。
名盤が名盤足りえる理由の一つに、その作品の1曲目の出来が素晴らしいことがある。1曲目をして、聞き手をどれだけ作品の世界に引きずりこめるのかが、聞き手の作品に対する評価を決定づける重要要素であるのは間違いないだろう。ガーネットクロウの1stや4thアルバムの1曲目である「水のない晴れた海へ」「夕月夜」でもそうだが、優れたアルバムの1曲目イントロは、シンプルでありながらも奥深い魅力を見せているものが多い。わずか数小節の旋律をもって、聞き手をすばらしき音楽の世界へと導くのである・・・。まさに音楽の持つ神秘の魅力というべきものであろう。
70年代プログレ、いや、女性ボーカルグループ史上に燦然と輝く今作の1曲目は、この作品の素晴らしさや世界観を象徴する圧巻のイントロである。

ドラの音色が響き渡るや否や、高貴・華麗・深遠としかいいようのないピアノの旋律が鮮やかに刻まれる。なんて美しく、なんて軽快で、なんてドラマティックな旋律なのだろうか。もうこの世のものとは思えない。紛れもなき天上界の調べである。残念ながらガーネットクロウの「水のない晴れた海へ」の名旋律もこれには全く勝てない。
2分30秒付近まで基本的に同一旋律の繰り返しなのだが、その旋律のすばらしさならびに、要所要所における転調や盛り込む楽器をひっきりなしに変えていくことによる緩急、強弱の秀逸極まりないつけ方によって、何度でも聞きたくなる&何度聞いても飽きることなき悪魔の魅力を有している・・・。23秒あたりの強烈なピアノのバッキング、ティンパニーの響き、その後の半音さげた旋律への移行、いぶし銀のドラミング・・・。さらに同一旋律の繰り返しを経て、複雑なベースラインが旋律にさらに重みと荘厳さを加えていく・・・。そして1分23秒あたりから突如チェンバロが絡んできて、一転華麗さを見せ付けていく。また、この後にギターのディストーションがかった旋律を合図とし、高低・明暗を巧みに表現する転調がひっきりなしに行われる。恐ろしいほど重厚且つ華麗なピアノの旋律である。「墓場まで持って行きたいイントロ」があるとしたら、間違いなくこの曲を選出する。バツ丸が選ぶ最高傑作イントロの一つ。

この怒涛のイントロが終わった後に展開されるのは、のどかなブリティッシュフォークやカントリーロック的旋律。イントロとのあまりの違いにびっくりしつつも、ここで展開される軽快さと雄大さ、哀愁さを余すことなく出しているアニーの歌唱に問答無用に引きずり込まれる。アニーの歌唱をひとしきりに堪能した後に続くインスト部分もいい。徐々に重層的になっていき広がりと盛り上がりとを見せていく演奏にしびれる。と思いきや、再びボーカルが復活し、また重厚な演奏が展開されると実に激しい動きを見せる。そして8分33秒からは、冒頭フレーズを転調したものに壮大な管弦楽器が加味された「パワーアップ」盤とも言うべき旋律が展開され怒涛のクライマックスへと流れ込む。凄すぎる、あまりに凄すぎる。この1曲をして、彼らはピンク・フロイドやキング・クリムゾンらとは全く違うプログレの形態を高らかに示したと言える。圧巻の1曲目。

ALet It Grow
穏やかでピアノの調べから始まるバラード曲。出だしから5オクターブあると言われるアニーの超絶歌唱が冴えに冴え渡る。つき抜けるかのようなハイトーンボイスは世の中の汚れから隔絶されているかのような美しさを見せ、聞き手を彼女の歌が構築する極上の世界へと導いていく。中盤以降から巧みに入っていくピアノのバッキングやベースライン、控えめながら存在感を示すドラムなどが絡んでいき、アニーの美しい歌唱と曲とを大いに盛り上げていく。終盤の混声コーラスとピアノとギターのバッキングが絡むところは感動することしきり。

BOn The Frontier
カントリー音楽的な要素を感じさせる軽快なロック曲。彼らがイギリスの土着の音楽からの影響を受けていることを感じさせる曲である。
男性とのデュオ形式の歌唱が実に牧歌的な雰囲気をかもしだしており、聞いていてすがすがしい気分になってくる。曲名が示すように、古きよきイギリスを表現したものであろう。
基本的にフォーク、カントリー主体の曲であるが、中間奏のピアノ演奏や管弦楽器の絡ませにクラシックの旋律を取り入れているのは、ルネッサンスならではのこだわり。どんな曲であってもインストの旋律の素晴らしさや演奏技術の凄さを見せ付ける「ルネッサンスイズム」炸裂の佳曲。

CCarpet Of The Sun
ミドルテンポの軽快なネオアコ曲。3分少々と大曲だらけのルネッサンスの中にはきわめて短い。とにかくアニーの歌唱の美しさ・凄さを見せ付ける歌唱と、それを守り立てる美メロの見事さに尽きる名曲。アニーの突き抜けるかの歌唱は、「歌の女神」と形容するのが最もふさわしい。叙情性をこれでもかと放出するサビのメロディーの美しさとの相乗効果は神掛かっている。無駄な要素は一切なし。曲を構成するすべての要素が、各々の魅力を発揮しながら、それ以外のものの魅力を効果的に高めている。完璧。

DThe Harbour
民族音楽の要素を多々感じさせるミドルテンポの雄大な曲。
ドビュッシーの「沈める寺」の旋律を拝借した重厚なピアノが思わず姿勢を正してしまう荘厳さをもたらす。しかし、このイントロが終わると一変、アコースティックとイギリス民族音楽からの影響を受けたアニーの歌唱とが構築する郷愁の世界へと誘われる。その心地よさ哀愁は絶品という他ない。行ったこともないくせに、古のイギリスの田園風景を連想してしまう説得力がこの曲にはある。厳粛さと穏やかさ、この相反する要素を見事に同居させるのも、ルネッサンス音楽の醍醐味であろう。

*東芝EMIから発売されている(品薄ですが)今作には、「大人の事情」でドビュッシーの旋律部分がカットされています。その部分をお聞きになりたい場合は、ドイツ盤(こちらも品薄)をお求め下さい。但し、後者はデジタルリマスターではありません。ご注意を。

EAshes Are Burning
今作の表題曲。それにふさわしく、11分を越える大作バラード曲である。陳腐ながら、圧巻の一言しか発する言葉を思いつかない。
冬の大地の冷たさを連想させる効果音と悲しすぎるピアノの音色が哀愁を醸しだす。哀愁さ悲愴さを見せ付けるAメロ・Bメロと時折ポップさを見せるサビメロ、ならびに上手くそれを切り替えられているアニーの歌唱にただただ聞きほれるだけ。特に2分40秒からのアニーの絶唱コーラスは、まさに「天使の歌声」としか形容のしようがない。
曲が進むにつれ、ピアノ、チェンバロ、ベース、ドラムなど様々な楽器の入り乱れる挿入が曲に様々な表情をもたらしているのは、お見事。しかし、真に圧巻なのは、美しく雄大なピアノソロの旋律に酔いしれている最中、重厚なベースの響きに端を発する3分33秒あたりから展開されるインストバトルである。
強靭なピアノのバッキングとチェンバロの華麗な音色がガチンコでぶつかり構築する旋律は、すさまじいまでの美しさと緊張感とを有している。鍵盤楽器ろくに弾けないくせに、思わずピアノを弾いているみたいに指を動かしたくなってくる。
聞き手を散々高揚させた後に続くのは、荘厳なハモンドオルガンソロ。美しい中にも、クラシック音楽や教会音楽と称すにふさわしいピリッとした雰囲気を演出している。一端ここで聞き手の気持ちをクールダウンさせるのだが、それも長くは続かない。激情的なピアノの演奏といぶし銀のドラミングが入ることによって再び曲は盛り上がっていく・・・、クライマックスに向けて。そして一瞬の静寂が突如構築された後に放たれるアニーの独唱。凄すぎる。
さらに最後の2分間展開される、パイプオルガンの旋律に乗った怒涛のエレキギターソロが最後の盛り上がりを見せつける。彼らがロックバンドであることも思い知らされる一瞬。あまりに完璧すぎる圧巻の最終曲。どんなに言葉を尽くしても、その凄さを表現することは敵わない。また、そうする意味もないだろう。美しい音楽は耳と心で聞くだけでいいのだから・・・。

総評:
前作ではまだ個性を確立していなかった彼ら。今作は、彼らのすさまじい才能が一気に開花し、クラシック・トラッド・フォーク・ロック・ハードロックなどを巧みに融合させた彼らならではのプログレッシブロックを存分に見せ付けた一代傑作である。この作品をキッカケに、彼らは叙情派プログレバンドとしての地位を確立する。
作風としては、彼らの中でもトラッドやフォークといった「イギリス音楽」の影響が最も出ているのが特徴である。それが独特の温かみや牧歌的な雰囲気を生み出しつつ、彼らの他の大きな側面たるクラシック音楽やロックと融合することにより、中世クラシック音楽に匹敵するぐらいの美しさや壮大さ、緊張感を生み出しているのが、彼らの凄さ、特殊性なのである。1曲目と、表題曲であり最終曲である6曲目はこのことを証明する歴史的名曲である。もちろん、これら以外の曲も隙などは微塵もない。
超絶技巧を有すメンバー達が、ピアノ、チェンバロ、アコースティックギターなどの生楽器の魅力をふんだんに生かしつつ、音楽の持つ美しさ、雄大さ、力強さ、楽しさ、深遠さなど、多種多様な要素を、収録曲全部を通して余すことなく見せ付けた贅沢この上ない今作は、英国が生んだ至宝というにふさわしい。まさに完璧。
個人的には英国ロックシーンが生み出した最高作品であるビートルズの「アビー・ロード」や、ZEPの「レッドツェッペリンW」と比べても、なんらひけを取っていないすら考えている。
個人的にも、最高最強作品の一つ。女性ボーカル限定で考えるのなら、間違いなく「No.1の作品になる。
30年ほど前のイギリスに、こんなすさまじい音楽が存在したことを是非とも知って欲しい。好き嫌いはともかく、その凄さを前に間違いなく音楽観が覆るように思う。





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