File150 最強音楽・最強アーティストを追い求めて〜RENAISSANCE列伝〜A


今回から、彼らの音楽性について、アルバムレビューを中心に記していく。ただその前に彼らの音楽の概略について簡単に説明しておく。

彼らの音楽は、ジャンル区分で言うと「プログレッシブロック」になる。
(この説明は長くなるのでここでは省略します。内容に関しては3月21日の日記に記してあるのでそちらを参照してください)。
ただし、卓越した音楽理論、演奏技術、最新テクノロジーの導入、哲学的・思想的な詞や内省的な問いかけを表現した詞などで、「前衛的(プログレッシブ)」で奇抜且つ難解な音楽を構築した、「ピンク・フロイド」「キング・クリムゾン」「イエス」「エマーソン・レイク&パーマー」らプログレを象徴する「プログレ四天王」とは全く違う方法論で独自のプログレを構築した。それは、生楽器中心の演奏で、「クラシック」と「イギリスのフォーク・トラッド」と「ロック」の融合を果たし、幻想的で深遠、且つ雄大な世界観を表現した点である。その美しさに関しては、プログレッシブロックの中でも間違いなく最高峰であろう。クラッシク音楽の持つ構築美や壮大さ、フォークの持つ叙情性や雄大さ、ロックの持つ勢いと迫力・力強さなどが高度に融合し、バロック音楽や交響曲にも何ら引けを取らないスケールの大きさと美しさとを感じさせる音楽。これこそがルネッサンス音楽の醍醐味と言えよう。以下、彼らが世に産み落とした作品の数々についてレビューしていく


・「Prologue」 (97点) (1972年)

1・Prologue   2・Kiev
3・Sounds of The Sea  4・Spare Some Love
5・Bound For Infinity  6・Rajan Khan


1・Prologue
ジョン・タウトの奏でる劇的なピアノのイントロから始まるアップテンポでややハードな曲。イントロは、ショパンの「革命のエチュード」の旋律を盛り込んだものである。第二期ルネッサンスの始まりを高らかに告げるデビューアルバムの1曲目としてまさにうってつけ。このドラマティックな旋律とその後に続くアニーのスキャット気味の力強い歌唱に、強烈に惹きつけられること請け合いだろう。
この後は、ジャズピアノの要素とクラシックピアノの要素をふんだんに盛り込んだピアノの演奏を中心とした、ピアノ・ギター・ベースのインストバトル、ならびに、アニー&男性コーラスのスキャットが延々と続くのだが、各々楽器の卓越した演奏と旋律が実に見事。すさまじい疾走感と躍動感を巧みに演出している。ボーカルのアニーとピアノのジョン・タウト両名を主軸としたメンバーの卓越した技量を余すことなく見せ付ける渾身の1曲である。

2・Kiev
表題曲とは違い、ゆったりとした美しいピアノの旋律から始まる壮大な混声バラード曲。第一期ルネッサンスからの影響を感じさせる、叙情的なフォークロック曲である。
イントロに続く、もの悲しさと劇的さとを感じさせる、切れ味鋭いピアノの演奏が終わるや否や、男性歌唱によるフォークソング的な叙情的歌メロが耳を惹く。軽快でありながらも泣きの要素を大いに含んだピアノ演奏が、言いようのない郷愁を感じさせる。男性歌唱、アニーのバックコーラス・ピアノと実にシンプルな構成であるにも関わらず、そこから感じ取れるスケールの大きさや美しさは尋常ではない。故郷に対する強い思い(ここではキエフ)が全面的に出た曲だからだろうか。ロシアをテーマにした曲は、ルネッサンス音楽を考える上で重要な要素なっているが、それが何によるものなのかはわからない。ただ、一ついえるのは、聞いていて鼻の奥がつんとしてくるような感動を味わえる曲だということ。そして、中盤から後半にかけての超人的クラッシックピアノソロが圧巻だということ・・・。

3・Sounds of The Sea
さざ波の音とかもめの鳴き声の効果音と、煌びやかとしかいいようのないピアノの演奏、そしてアニーの力強い歌唱が何ともいえない高貴な雰囲気を作り出しているスローテンポのバラード曲。とにかくピアノとアニーの歌唱に酔いしれる、ただそれだけの曲。

4・Spare Some Love
ピアノとギターのバッキングを主軸とした雄大なネオアコバラード曲。牧歌的な雰囲気をかもしだしつつ、ルネッサンスにしか出せないであろう煌びやか美しさが全編にわたる曲。アニーの抑え目の歌唱で情感たっぷりの歌唱と、切れ味鋭いピアノのバッキングとサイケ色を感じさせる歪んだギターの音色とが絶妙に絡み合うインストがすばらしい。歌とインストの技術と表現の豊かさが、美しさと爽快さの両立を可能としたように思う。

5・Bound For Infinity
穏やかなピアノの旋律と、アニーの囁きかけるかのような低音歌唱が心地よく響き渡る雄大なバラード曲。しかし、それで終りかと思いきや、2分20秒あたりから突如畳み掛けてくるダークな歌唱とコーラスが曲を一気に盛り上げる。この部分の官能的なアニーの歌唱は鳥肌もの。

6・Rajan Khan
どちらかと、クラシックやフォークの要素を含んだバラード曲や穏やかな曲主体の今作において、異彩を放っている唯一の曲。イントロの電子音とノイズを出しまくるギターの音色が不気味さを巧みに演出している。と思いきや突如エスニックな演奏が入り、それに合わせアニーのサイケデリックなシャウトが展開される。いや、シャウトというには、あまりに美しすぎる。空につけぬけんばかりの絶唱というべきか。それを守り立てる演奏、特に4分20秒以降から展開されるキンキンしたシンセの音色と重厚なピアノのバッキングが重なるインストは圧巻。完全にイッている。サイケデリック音楽と言うべきものである。
終盤に展開されるキレ気味のアニーの歌唱とコーラス、加速度的にスピードと重厚さを増していくピアノを中心としたインストも実にドラマティックでいい。彼らが優れたプログレバンドである所以を強烈に示した、今作ラストを飾るにふさわしいすばらしい曲。

総評:
デビューアルバムということもあり、音楽性に関してはまだルネッサンスらしさが完全に出てはいない。楽曲に関しては、フォーク・クラシック・ロックが融合したプログレ、というよりも、第一期ルネッサンスの様な、叙情派ロックと称した方が適切ではないだろうか。第一期ルネッサンスのリーダーであるキースが今作製作に関わったのが、その理由として挙げられよう。キースからの影響を随所に感じ取ることができる。
ただし、キースからの影響だけでは到底収まりきれない深遠で美しい音楽性を認識できるのは、第二期ルネッサンスのオリジナルメンバーの存在と力量の高さであろう。2・6曲目などの曲風や作品全体から漂う幻想的な雰囲気は、オリジナルルネッサンスをこの時点で凌いでいる。また、ルネッサンス音楽の核となる、アニーの個性的で美しい歌声、ジョン・タウトの切れに切れまくったピアノ演奏を中心とした美しくドラマティックなインスト、クラシック音楽的な大曲路線、フォーク音楽的な温かみなどが今作で確立されているのも、実に興味深い。そして、実験的要素や荒削りな点が多々あるものの、一枚の作品としてすさまじいレベルにあるのが何よりも驚くべき点である。
しかし、このアルバム名「プロローグ」が物語っているように、この作品の素晴らしさすら、「序章」でしかなかった。第2作目であり、彼らの最高傑作と称される「ASHES ARE BURNING」以降、彼らのすさまじい資質が爆発的に開花する。

その話は次回以降に・・・。





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