Yumi Shizukusa

滴草由実

 滴草由実 「Yumi ShizukusaU」 2004・10・27 82点
ビーイングの歴史の中でも有数の歌唱技術を持つ滴草の2作目。前作のレビューで、「無理にR&Bにこだわることなく〜」と書いたのだが、その思いとは逆に、海外アーティストや倉木でおなじみのサポート陣営の起用により、1st以上にR&B、ヒップホップ、といった洋楽色を露骨に強めた作品といえよう。それは、1曲目「Missing」をはじめ、この作品で最多の作曲数を誇るYOKOが作る収録各曲の存在が如実に物語っている。このYOKOのみならず、楽曲製作にGIZAが誇る最高峰の作曲家らや海外ミュージシャンらによる楽曲提供を受けたこともあり、その完成度は非常に高い。主軸となるシングル曲のみならず、「大切なもの」「Baby, Love again」「What U need」といったアルバムオリジナル曲も質が高く隙がない。これら楽曲が滴草の抜群の歌唱技術で歌いあげられることで、高い完成度の曲の魅力を大いに増大させているように思う。特にスローテンポのバラード曲ではそのことが顕著で、高音部分やコーラス部分などに彼女の表現力の確かな成長を感じ取ることができる。彼女の資質を生かしきれなかった前作と比べると格段の進化だといえる。
だが、こういった好意的な文面や80点以上の高得点をつけたとはいえ、この作品が「好きか?」「愛聴できるか?」と聞かれたら「う〜む」というのが偽らざる私の本音。前作以上にポップ性が薄れ本格路線へと傾倒した今作は、一作品として評価できるとはいえ、彼女が所属するGIZAアーティストとしての魅力や、これを支持する人々の音楽性の嗜好を考えると、水のような柔軟性で自らの枠を広げていく倉木や、優れた資質を有する4人のアーティストが貪欲なまでの探究心を見せるガーネットクロウとはまた違う意味で、「GIZAアーティストらしさ」を全く感じないからである。露骨に聞き手を選ぶ今作の音楽性は、概ねメロディーや声質志向であるGIZAファンとかみ合っていないように思う。多くのGIZAファンサイトやこのサイトにおいて、この歌唱力・この作品のレベルにも関わらず、ガーネット、小松、倉木、三枝、岸本といった面々と比べると、彼女の名を見ることが非常に少ないのは、このところに起因するのではないだろうか。(私個人としても、この作品より出来が悪くても、滴草より明らかに歌唱技術が低くても、岸本の作品を支持する)。
この不条理さは、滴草というアーティストを考える上で、最大にして最悪の問題である。どこにでも通用する実力を有していながら、GIZAという組織で彼女が主流アーティストになることはありえないし、この組織に所属しているが故に、本格R&Bアーティストとして彼女が世間からの支持や認知を得ることもまた難しいであろう。酷い言葉で言うと飼い殺しの状態。やはりそれを打破するためには、このレビュー冒頭に書いたように、「R&Bにこだわらず、幅広い音楽をやる」に尽きるのではないだろうか。(2004/11/27)



エンタメ問答に戻る



アーティスト一覧へ戻る



バツ丸のヲタク拝見に戻る