矢井田瞳

矢井田瞳

 矢井田瞳 「Here today−gone tomorrow」 2005・08・15 71点
1.Chapter02   2.マワルソラ     3.七色ピエロ
4.マーブル色の日    5.月を見ていた      6.NOT A PERIOD
7.believe or doubt      8.Pajama Holiday     9.モノクロレター      10.彼女の理由
11.ビルを見下ろす屋上で〜whitfield version〜     12.雨と嘘       13.ゆらゆら
ジャンル区分J−pop ロック
良い点・加点要素成熟した楽曲と歌唱
減点要素・注意点初期の頃の勢いやアイリッシュ音楽の要素がない
メジャーアーティストとしての活動から離脱し、マイペースな活動を始めて以降初となる5thアルバム。以前のような破天荒な勢いやシャープさはないが、今までの着実な活動がもたらしたであろう成熟さや集大成的なものを感じ取ることが出来る。
まず、かなり牧歌的で勢いに欠けるここ2作と比べると、3曲目を始め、独特の旋律と歌い回しによる矢井田ならではの勢いと個性が少し回復しているのはよかった。それと、9曲目など緩やかなバラード曲において、以前よりも深みや存在感を見せ付ける矢井田の優れた歌唱もお見事。勢いや派手さはないが、しみじみと楽曲に浸れる上手さや魅力がある。長きに渡る精力的な活動と彼女の天性の才能がもたらしたものであるのは間違いない。このことが、初期の作風と4thアルバムあたりで顕著に出てきた作風両面の提示を可能にしたと考える。さらに、それだけでなく、古典的なロックを感じさせる5曲目やプログレっぽさやフュージョンっぽさを醸しだす7曲目など今までになかった感じの曲があるのも、今作の面白い点であろう。売れ線に拘らない製作姿勢が作品に深みと新たな音楽性をもたらしたように思う。とは言え、では今作がすばらしい作品なのかと言うと、素直にそう言いきれないものがある。
その最たる要因は、多少は勢いを回復したとは言え全体的に作風がおとなしくて地味ということにある。彼女の歌い回しや声質がなまじ印象的なので、曲によっては地味さと彼女の個性強さとの合わさりがイマイチとなり、彼女の癖だけがやけに目だってしまう曲があったのは大きな減点材料である。赤字表記にした8・11曲目はその典型で聞いていてかなり辛かった。彼女ならではの面白さはあるのだが、それが魅力として提示できていないように思う。やはり良メロディーあっての歌であろう。
また、核となる曲がないのも痛い。このことは「過去の作風」との比較と彼女に対する個人的な考えが大きく関わっているのだが・・・。
結局のところ何だかんだ言っても彼女の個性であり大きな魅力として捉えていた「My Sweet Darlin'」「アンダンテ」といった切れ味と勢いを有す過去のシングル曲のような曲や、「I'm here saying nothing」「もしものうた」といったアイリッシュ音楽からの影響を感じさせる曲がないことがある。いいアーティスト・いい作品であるのは間違いない。音楽性の変更も非常に自然でいい。だが、心のどこかに彼女には一歩引いてしまった作品ではなく、第一線で圧倒的な存在感を見せ付ける勢いある曲を作ってほしいという思いがどうしても拭えないのである。(2005/09/10)



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