柴田淳 「わたし」 2005・03・30 83点
メジャーアーティストとはいえないが、歌姫好きからは確かな支持を得ている柴田淳の4thアルバム。先行シングルに対して厳しい評価をしたこともあり、今作の出来にかなり不安を感じていたのだが・・・。結果としてはそれが半分当たって半分外れたという感じか。

シングルバラード曲を中心に、自身の人生経験が確実に反映しているであろう「自虐的悲恋世界」や「生きている上で避けようのない心的葛藤」を描いた詞を、彼女の優れた歌唱力とメロディーセンスで表現していくという構成に変化はない。ただ、1・7曲目をはじめ、今まで以上に、ピアノ主軸の曲構成から一歩引いた力強い編曲やノリのよい編曲が施された曲があるのや、ピアノを排したインスト曲があるのは、曲作りに苦労し、悩んだ彼女が、その上で引き出した一つの答えだろうか・・・。
1・7・9といった曲においては、「さすがシバジュン」と力強くうなずきたくなるよさがある。優れた歌唱とメロディーセンス、そしてピアノ演奏とが織り成す、暗く美しくも悲しい曲世界は極上というにふさわしい。この手の曲を作り・歌わせて彼女に勝てる存在は殆どいないと確信させる、そんな曲らである。その他の曲についても、彼女の歌唱の魅力の賜物であろう、まずまずの出来である。「いつか王子様も♪〜」もよし。ただ、通常に評価を下せば、間違いなく「良作」と言えるものであるが、同時に、彼女を特別な位置に置いてきた立場から見ると、複雑な気持ちが心の中にあるのを隠せないでいる。ファンには申し訳ないが、この点数・この程度の作品では到底納得いかないのが、私の彼女や今作に対する偽らざる本音。残念ながら今までの彼女の作品で最も問題が多かったように思う。
その中でも最たるものは、シングル曲を始め、過去の名曲らに匹敵できる曲がなかったこと。「幻」「道端」「おかえりなさい」なども、業界最高峰レベルのものであり、いいのだが、「隣の部屋」「月光浴」レベルの曲を求めている私には不満が残る。また、前作と同様最終2曲の勢いが、歌唱・メロディーともに失速しているのも残念。1・2作目のようなスケールの大きさが、少しなくなってきて、代わりにメロディーの冗長さが目立つようになってしまった。今作は80点以上という高得点をつけたものの、自分にとって、彼女が特別な存在から優秀なアーティストの領域に落ちてしまったことを意味する点数である。

日記でも散々見受けられるが、今彼女が曲作りでかなり苦労しているのは間違いないだろう。その彼女の苦悩が収録曲に表れてしまったのではないだろうか。今作では無理だったが、今度こそ、その苦悩を克服し、新生シバジュン・これぞシバジュンとも言うべき彼女の音楽を聞かせてくれることに期待している。彼女は、それが出来る素晴らしいアーティストだと思うから・・・。(2005/04/05)



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