志方あきこ

志方あきこ

 志方あきこ 「廃墟と楽園」 2003・08・24 72点
1.Come raggio di sol    2.ロマの娘       3.MARE(Andante molto espressivo)
4.Se l'aura spira      5.ラヂヲ予報    6.廃墟と楽園
7.何処へ     8.Contrasto     9.イゥリプカ
10. 古     11.MARE(Allegretto grazioso)
ジャンル区分民族音楽 クラシック オペラ プログレ その他注記:
良い点・加点要素狂気のハイトーンボーカルとコーラスワーク 壮大且つ深遠な音楽性 様々な言語を駆使した詞項目番号:1 3 9 14
減点要素・注意点曲も歌唱も装飾華麗で癖があり聴き手を露骨に選ぶ 7曲目以降の曲がくどい 項目番号:15
コンピュータを駆使した宅録によるデジタル音源と生楽器の演奏とを徹底融合させた音楽を奏でるネットミュージック界の歌姫、志方あきこの1stフルアルバム。全編に渡り、様々な国の音楽性を取り入れた民族音楽、オペラ、クラシック音楽を渾然一体とさせた音楽が展開されている。
志方のヒステリックで耽美的な美しさを発するハイトーンボーカルや、狂っているとしか思えないほどに執拗に盛り込まれた多彩なコーラス、重厚且つ華麗なオーケストレーションと打ち込みサウンドにより、如何にも民族音楽的な幻想的で深遠で暖かみのある雰囲気とともに、プログレやゴシックメタルにも通ずる前衛的で狂気さをも感じさせる独特の音楽世界を完璧に築きあげている。癒しの中に潜む狂気・毒気とでも言うべきだろうか・・・。まるで夢のような別世界をさすらっているかのように彼女の音楽に包まれると同時に、時折背筋を鞭で打たれているかのような「ピリピリ」した感じを体感できるのは、音楽性や完成度云々以前に「天才的」とも言うべき彼女の作編曲センスによるものであろう。実にイカれている。また、イタリアの古詩や英語、日本語と複数の言語を用いた哲学的・文学的で古の叙事詩のような物語性を感じさせる詞も、彼女の音楽の孤高性や深遠さを高めるのに大いに貢献している。2・6曲目あたりの曲は、彼女の音楽観を象徴すべき良曲。

但し、志方のあまりにマニアックな音楽性が故に、聴き易さとは全く無縁。上記の要素が好きな人であれば、「中毒」になること請け合いであるが、苦手であると全く受け付けられない可能性が非常に高い。また、曲調も比較的似通っているので、通しては聴き辛い面もある。個人的に、7曲目以降の展開にくどさを感じてしまったのが残念であった。だが、この点を気にしないのであれば、今作はかなりの良盤だと思う。

新居昭乃・書上奈朋子・菅野よう子あたりが好きであれば必聴。(2005/11/06)
 志方あきこ 「Navigatoria」 2005・07・20 85点
1.Siren     2.Navigatoria     3.睡恋
4.西風の贈り物      5.花帰葬       6.HOLLOW
7.カルナヴァル
    8.Sorriso    9.空の茜 空の蒼
10.La Corolle     11.Makada〜Queen of Sheba〜
ジャンル区分民族音楽 クラシック ハードロック ラウドロック オペラ プログレ その他注記:
良い点・加点要素冴えるハイトーンボーカル 楽曲の幅が広がった 彼女の自然な歌唱が堪能できる項目番号:1 3 9 14
減点要素・注意点聴きやすくなったことを進化と捉えるか退化・迎合ととるか・・・ 項目番号:
ネットでの楽曲販売において、記録的なダウンロード数を誇る志方あきこの2ndフルアルバムにして、エイベックス系レーベルからの記念すべきメジャーデビューアルバム。
作風に関しては、今までの基本路線である民族音楽やクラシックをふんだんに取り入れた前衛的でスケールの大きな曲をやっているという点で何ら変わりがない。が、メジャー市場を意識したのか、ヒステリックなハイトーンボーカルや恐ろしいまでのコーラスワーク、打ち込みが減るなど、前作で感じたマニアックさや先鋭さ、前衛さがだいぶ薄まっている。その分、彼女の素の歌唱の魅力、歌い手としての実力の高さを存分に感じ取れるようになったのが、今作の大きな特徴であろう。作品全体から発せられる深遠さや美しさに関しては、彼女の歌唱の成長と録音環境の向上により確実に進化している。
また、声にディストーションをかけラウドロック的な色合いを出した6曲目やジャズ的の要素を盛り込んだ9曲目など、今までになかったタイプの曲があるのも興味深い。実に意欲的である。

但し、今作に多々見受けられる恣意的な路線の変更や実験性に対し、「聴きやすくなった」と捉えるか、「メジャー路線に迎合し本来の魅力がなくなった」と捉えるかが、評価の最大のポイントであると思う。某ネットCDショップのレビューにおいては、後者の方がずっと多かった。前作にあったような狂気さや聴きづらさが確かに彼女の大きな魅力ではあれど、それにいささかしつこさを感じていた私にとっては、今回の路線変更はいい意味で洗練さや一般性が増した「進化」であると捉えている。

それにしてもエイベックスはいいアーティストを雇ったと思う。大塚や浜崎を柱とした商業路線で全面展開しつつ、一方で笹川やOLIVIA、そしてこの志方と芸術性や独特の音楽観に溢れる非商業的なアーティストも雇う・・・。いい判断だとは思うが、皆雇っただけで後ほったらかしになっているのが気に入らない。確かに断じて大ヒットが見込めるアーティストではないが、いくら何でも放任しすぎ。しかし、彼女らこそ業界や視聴者に対し誇るべきアーティストのように思う。この志方もしっかりと売っていってほしい。今後望むのはそれだけ。(2005/11/10)



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