| Rie fu 「Rie fu」 | 2005・01・19 | 86点 | |
| テレビ東京系アニメ「BLEACH」で「Life is Like a Boat」が使用されたことにより注目を浴びたソニーの新鋭シンガーソングライター、Rie fuの1stアルバム。その話題性に違わない力作に仕上がったといえる。 アルバム収録曲からは、「古きよき70年代のアメリカンポップス」の息吹を存分に感じ取ることが出来る。美しさと上品さ、気高さ漂う歌メロ・声質・歌唱の高度な融合なくして成立し得ない音楽である。 (一聴してお気づきになった方もいらっしゃるだろうが)2・8・10・12曲目などを始め、ピアノ・ギターとアコースティックサウンドを主軸とした簡素な曲構成や良質の歌メロもさることながら、彼女の歌唱が70年代のアメリカ音楽の象徴的存在であるカーペンターズを意識させる。作品通して感じるさわやかさや明るさもそうであろう。今作発表時には20歳という、70年代ポップスの影響を直接受けることはありえない彼女の年齢もあり、このことは実に不思議である。幼少期をメリーランド州で過ごし、そこにおいて70年代音楽に親しんできた生活環境が大きく影響していると考えられるが、それだけでなく、秀逸な編曲や英語発音の上手さなどなど様々な諸要因の密接な絡み合いと、彼女の優れた音楽的資質とが、30年もの時を隔てて70年代音楽の魅力を堪能させてくれる面白い現象を生み出した。70年代ポップスのファンにとっては、この1点だけを見ても、今作の存在はたまらないのではないだろうか。 しかし、当然ではあるが、彼女はカレンではない。そこにはRie fuならではの個性がある。その最たるものは、60年代〜70年代に活躍したキャロル・キングをはじめとするカントリーロックからの影響であり、彼女が今在学しているイギリスのブリティッシュロックからの影響である。そこにカーペンターズとの絶対的な違い〜元々彼女の声がカレンよりもハスキー&太くて重いことにもあるが〜幻想さ・浮世離れ・理想の描写ではなく、日常生活における取り止めもない現実や心の痛みや感情の描写がある。3・6曲目はそのことを示している。 歌唱技術や表現力、作曲能力に関しては、新人離れしたものがある。良質で健全な音楽性もあり「いいアーティスト」というオーラを放出しまくっているといえる。自分が親であれば、「子供に聞かせたい」と思う音楽最有力候補であろう。それほどに今作は優れているのだが、問題もなくはない。ギターやピアノを主軸とした曲構成やスローテンポのバラードかカントリーロック曲など曲種が限られているのは、「均質的」な印象を抱かれてしまう可能性が常に付きまとう。今作は14曲と収録曲が多かったことからも、若干のダレを見せてしまったように思う。そしてもう一つは個性。曲の質は高いのだが、悪く言えば「70年代音楽のおいしい所を取り再現させた」感がある。このことは、今後も彼女を特徴付ける大きな要素であり、既に今作の収録曲をして、「鬼束のバラード曲」「小松未歩のアップテンポ曲」のごとき「王道の魅力」を構築しているとすらいえる。だが、アーティストとしてさらに上に登り詰めるためには、「Rie fu」ならではのさらなる個性の確立が必要ではないだろうか。残念ながらこの2つの項目が数少ない減点要素となってしまったが、「音楽は時を越えて受け継がれる」ということを証明した良盤であることは間違いないのではないだろうか。個人的にピアノとギターの掛け合いが構築するノリが秀逸な2・3・6・7曲とRie fuのサビでの歌唱が魅力的な11曲目がお気に入り。今後どのような音楽を聞かせてくれるのか非常に楽しみ。(2005/02/15) | |||