奥華子

 奥華子 「vol.best」 2005・04・20 88点
1.小さな星      2.雲よりも遠く      3.涙の色
4.そんな気がした      5.楔            6.笑った数
7.片想い        8.愛されていたい       9.境界線
10.虹色の目     
11.その手          12.伝えたい言葉        13.自由のカメ       14.笑って笑って
ジャンル区分ピアノ系バラード曲
良い点・加点要素心に突き刺さる奥の声質とメロディー、及び詞世界 繊細なピアノ
悪い点・減点要素録音状態がよくないのか歌声が割れているところが多い ピアノバラード曲が大半を占める
柏を中心に積極的に路上ライブを展開しているストリートミュージシャン、奥華子。今作は、彼女の自主制作CD4作収録曲から選出されたベスト盤ともいうべきものである。ライブにおいて、その歌声・曲・ピアノの素晴らしさに多くの人が足を止めるだけでなく、数多くのCDの購入へとつなげたことが、半ば伝説的に語られている彼女。それに足る理由が今作には詰まっている。

何を差しおいてもすばらしいのは、声質・歌唱・メロディー・詞の一体感。奥の音楽には、鬼束ちひろや柴田淳のような圧倒的な歌唱力や、その他ピアノ系バラード曲のような壮大・華麗極まりないオーケストレーションがあるわけでもない。また、圧倒的な個性や激情があるわけでもない。あるのは、不可分とまでいえる強烈な一体感によって表現された、溢れんばかりの優しさ・愛情・さわやかさ、ユーモラスさ、心地よさ。ならびに、心に突き刺さる痛みと悲しさ・・・。
日常のさりげない風景の描写を通し、作中主人公の赤裸々な心象風景や感情を詳細に表現した詞と、繊細で伸びやかな歌唱との強烈な一体感により奏でられる音楽が、「自分がかつて体験してきたもの、かつて自分が持っていたもの、大切にしていたもの、または辛い記憶、幸せな記憶」などを思い起させる。だから、多くの人が足をとめて彼女の音楽を聞き、胸をうたれ、ファンとなるのであろう。曲の完成度がどうとか、とか、歌の技術がどうのこうのではなく、人間の様々な心情を表現した音楽に理屈ぬきで心揺さぶられる。
また、ピアノと歌唱とによる「ミドルテンポのバラード曲」がメインではあるものの、通して聞いてもそうくどさや飽きがないのも高評価にした理由である。ごくごく自然で、気持ちが乗った歌唱がそうさせるのであろう。
但し、数少ないが問題もある。
一番の問題は、音質。特にボーカルのそれがよくないこと。4曲目を始め、ところどころで声が割れてしまっているのは、彼女の歌唱の問題なのか音処理の問題なのか判然としないが、せっかくの良曲と良歌唱の質を落としてしまっている。今作が優れた作品だかこそ、気にならずにはいられない。そしてもう一つは、前半5曲に良曲が固まり過ぎたこと。ベスト盤とはいえ、盛り上がるところであるはずの中盤から後半にかけての流れが、前半5曲の勢いと比べるとやや弱いように思う。
とはいえ、あまたいるピアノ系バラードアーティストの作品と比べても、今作の出来はかなりのものがある。また、井川遥が出演した東京電力のCMで使用された「TEPCOひかりの唄」を聞くに、バラードだけに縛られない器用さもあるので、今までの魅力を維持しつつ、今後如何に楽曲の幅を広げていくのか、非常に楽しみである。
4曲目「そんな気がした」は特にお勧め、「君の心を殴りつけてた」「血だらけのこの空が」の旋律がいつまでも頭の中でこだまする。(2005/05/28)



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