倉木麻衣

・2ndアルバム 「Perfect Crime」  ・3rdアルバム 「Fairy Tale」  ・4thアルバム 「If I Believe」  ・5thアルバム 「FUSE OF LOVE」
 倉木麻衣 「Perfect Crime」 2001・07・04 86点
倉木の2nd。宇多田と比較されての強烈な批判にさらされてか、前作で見られたR&Bを中心にすえたポップソング色は相当に弱まり、代わりにAOR的な楽曲が多くなり、曲調も全体的に暗い曲が支配的となった。そのことにより楽曲の多様さは増したものの、残念ながら、それが曲の完成度や楽曲の魅力の向上につながったかというと疑問である。
作風の変更は恐らく意図的であるが、そのことにより、前作より楽曲の完成度(アルバム収録曲)が落ちたのみならず、それ以上の問題は、楽曲が当時の倉木の年齢と歌唱技術に噛み合っていなかった事であろう。まあ、その点を差し引いても良作であるとは思うが、もしこの作品が、倉木が20代半ば近くの時に発表されていたとしたら、恐らく名盤になったのではないかと思う。「Perfect crime」「Reach for the sky」など個々に優れた曲があるだけに残念だ。
「冷たい海」は倉木の曲でも屈指の名曲である。
 倉木麻衣 「Fairy Tale」 2002・10・23 92点
倉木の3作目となる今作は、1stのR&B的ポップ路線でも、2ndのAOR路線でもない、「ファンタジー」をキーワードとしたコンセプトアルバムであった。浮遊感と幻想さを感じさせるアルバム収録曲と、シングル曲を始めとした現実感を意識させられるR&B・AOR的な曲が交錯し、現実と虚構の世界観〜(つまりは「大人の現実」「子供の時からの夢」、「大人とこどもの端境期にいる自己の内面」など、このとき大人になりつつある倉木が直面している心的葛藤)〜を見事に表現している。GIZAお抱えの作曲家の最大限の力量が投入された完成度の高い楽曲、それを表現する格段の成長をとげた倉木の歌唱も見事であり、2002年を代表する作品になったと思う。この作品をもって、1stの時から付き纏う様々な呪縛や中傷から解放され、アーティスト倉木麻衣としての始まりを告げたのではないだろうか。惜しむらくは、一部のシングルの存在からか完璧にコンセプトアルバムに徹し切れなかったことか。これさえなければ歴史的名盤になったであろう。
 倉木麻衣 「If I Believe」 2003・07・08 82点
倉木待望の新譜。期待を持って聞いたのであるが・・・。紛れもなく日本で最高レベルの安定度を見せているものの、アルバムオリジナル曲に関しては、納得がいかなかった。8・9曲目の平凡さが非常に耳につくのだ。それとシングル曲の編曲を変えてあるが、残念ながらそれはことごとく失敗だったように思う。名曲「Time〜」は特に致命的であった。やはり期間をおかずに発表したということと、コンサートツアーが終わったあとで売れるのではという安易な戦略が災いしたのではと感じる。彼女の歌唱が格段の成長を遂げ、歌そのものの魅力を高いレベルで引き出していることから、このことは残念。私が彼女に望んでいるのはいい作品やそれなりに聞ける作品ではなく、1stや3rdのような圧倒的な完成度を誇る名盤である。良作には変わりないが個人的には不満があった。
 倉木麻衣 「FUSE OF LOVE」 2005・08・24 58点
1.Honey,Feeling For Me    2.P.S MY SUNSHINE     3.You Look At Me〜One
4.駆け抜ける稲妻      5.Don't Leave Me Alone    6.Love,Needing      7.ダンシング
8.Tell Me What     9.LOVE SICK     10.明日へ架ける橋
11.I Sing A Song For You     12.Chance For You
ジャンル区分J−pop
良い点・加点要素特になし
減点要素・注意点ダラダラした大野曲 陳腐な英詞と意味不明の倒置表現が目立つ詞 ペラペラな編曲 6〜7曲目の流れ 核となる曲の不在
アルバム発売前から出来に対する不安が多かった今作・・・。戦略も完成度も見るべきものがなかった先行シングル曲、綺麗とは言えない茶髪をただ下ろしただけのジャケ写真と安っぽすぎるロゴ・・・。などが象徴するように、今の倉木の失墜振りを見事に示す問題作。倉木史上はおろかGIZA作品史上においても有数の出来の悪さだと思っている。過去の作品とは違い「1曲も」惹かれる曲がなかった。あまりに問題が多すぎる今作であるが、それをまとめると主に以下の点になろう。

1・今作の核であるはずの大野曲の出来の悪さ〜それ以外作曲家の曲も同じく
2・編曲のショボさ
3・安っぽい英詞の挿入や意味不明な語句の倒置、ワンパターンで実年齢にそぐわない青臭さばかりが目立つ詞
4・1〜3の要素が折り重なって築かれた曲の地味さ
5・4までの理由により必然的に浮き立つ羽目になった倉木の歌唱の弱さ


である。
やはり今作の問題を考える上でまず大きいのは、大野曲の出来の悪さである。8曲目などは今年に入ってから顕著な「抑揚がなく間延びした何の印象もないメロディー」を示しただけ。この曲よりもマシではあるが、11曲目などもそう変わりないであろう。一見良さそうに思えるのだが、聞きこんでいくとメロディーの平坦さと、倉木の歌唱に助けられた感ばかりが目立っているだけ。また、メロのどの部分をとっても単調で流麗さに欠けすぎる9曲目や、サビの印象が薄すぎる12曲目などは、申し訳ないが「凡曲、いや駄曲」であろう。原点回帰の要素を出そうと大野曲を増やしたのであろうが、1stアルバム時とは違い全く逆で、アルバムの質を著しく下げただけ。
しかし、その大野以外の作曲家曲に関してもこれまた酷いから、余計に悲しくなってくる。特に大賀曲は酷く、安っぽさばかりが目立つ4曲目やただたるいメロで引っ張っているだけの5曲目は聞いていて苦痛でしかなかった。
ただでさえ単調な曲らなのに、編曲の出来の悪さと倉木の詞が曲の質低下に拍車をかけてしまっているのは嘆かわしいことこの上ない。
前者に関しては全般的に安っぽい電子音が目立ち、曲から迫力・勢い・荘厳さ・美しさなどをことごとく奪い去っているか、殆ど何の工夫もなくひたすら地味な作りになってしまっているかのどちらかに終始してしまっている。そして、曲の出来の次に個人的に気になって仕方なかったのが後者。「Oh」「Ah」「you」をはじめ安っぽい英単語の羅列や過度な倒置表現で意味の不明確さが目立ち、さらに年齢&専業アーティストとしての活動を始めたことそぐわない青臭い詞は、曲評価において詞を重視しない私でも気にせずにはいられなかった。というか、ここまで詞が気になったのはあまり記憶にないぐらいに・・・。
こういった様々な問題が折り重なって出来たのは、作品に対する「地味さ・印象のなさ」だけ。かつてのようなシャープなメロディー展開や思春期の葛藤を丁寧に綴った詞世界はいったい何処に行ってしまったのだろうか・・・。
で、結局楽曲を構成する要素の殆どの出来が悪かったので、向上した倉木の歌唱が必然的に目立つ結果となる。しかし、元々歌唱技術を売りにしていたわけでもない。そもそもGIZAは「歌唱力よりも声質・曲」を重視してきた組織だ。さらに、「大野曲と倉木の歌唱・声質の高度な融合により各々の魅力を倍化させてきた」というのが倉木の最大の魅力であるので、このことは本末転倒の結果としか言いようがないだろう。このことが出来ていない以上、作品の出来は純粋な歌唱技術に依存することになるが、繊細で癖のない彼女の歌唱に他者をしのぐ実力・魅力はないと考える。

申し訳ないが、まがりなりにもGIZAナンバー1アーティストが出す作品としてはあまりにお粗末ではないのか。というか、曲の出来や編曲の手抜き振り、Yoko曲なし&Cybersound編曲なし(さらに物凄く短い製作期間)を見るに、ナンバー1である彼女の作品として許されたのが不思議でならない。もし、これが倉木の「セルフプロデュース」の結果であるのなら、彼女がこの作品の出来に満足しているのなら、またGIZAもそれに満足しているのなら、「何のために作品を出しているのか」という根本的な疑問を私は持たざるを得ない。GIZA最強の非自作アーティストであるはずの彼女の作品が崩れてしまったことは、GIZAの楽曲製作能力が壊滅してしまったのとほぼ同義であろう。
唯一の評価点は、今までにない実験的な試みが確かにあったことであるが、それはあくまで質が伴っていてこそ意味があるものである。それとGIZAナンバー1の看板を担い、「売上結果も出す」重責がある以上、本人の安易な思考に基づく作品作りは慎み、しっかりとした視点と戦略性を兼ねそろえたプロデューサーに製作を任せるべきであった。結局、今作は、歌唱技術の成長以外のすべてにおいて「倉木の弱さ・問題」をさらけ出しただけだったように思う。
長い活動において、中にはあまり出来の良くない作品が出来てしまうこともある。しかし、そういった作品が出てしまっても後につなげられそうな余裕が今の倉木やGIZAにないこと、問題ある曲や詞に対しきちんと苦言を呈す人物がいないことこそが、今作の一番の問題だと言えよう。ある意味底にまで落ちてしまった感のある倉木だが、そこから如何様に這い上がってくるかに興味がある。但し、今作を聞く限り彼女に対しては悲観的な思いしか沸かない。(2005/08/28)



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