キミノウタ
 下川みくに 「キミノウタ」 2004・11・24 79点
森高千里以来のマルチアーティストと勝手に思っている下川のオリジナルアルバム3作目。彼女の優れた歌唱力と美声を生かしたさわやかですがすがしい魅力満載の曲をこれでもかと堪能することが出来る。ディーバー系や3大ピアノ系やガーネットクロウノの中村、竹井らなどとは違い、類まれな歌唱技術や声質をもって聞き手をぐいぐい引き込むとか、聞き手に圧倒的なプレッシャーをかけるとかではなく、実に耳なじみよく、すっと体に入ってくるかのような歌唱に、「癒し」ともいうべき心地よさや魅力を感じ取ることが出来る。その心地よさや耳あたりのよさが故にあまり作品性や思想性を意識することはないが、実は聞き手に対する確かなメッセージを内包した詞と良質なメロディーの良曲らで作品全体が満たされているといえるだろう。曲に関しては総じて王道であり、取り立てての特徴はない。だが、下川の歌い手としての資質の高さとこのこととが、上記アーティストらを含めどのアーティストにも感じ取れない下川独特の曲世界をもたらしている。このアルバム屈指の曲である「君に吹く風」「遠い星」「Missing」はまさにその象徴。アルバムタイトル「キミノウタ」の意味は、歌い手が曲の世界に自己を投影して何かを感じ取ってほしい、という気持ちではなく、聞き手にそう思ってもらうように聞き手に対し向けられた下川の気持ちそのもののように思う。それぐらいに彼女の歌唱は丁寧で好感が持てる。
しかし、各曲の出来のよさや上記文面に反し80点以上の点をつけなかったのには、この作品に致命的な問題があるからである。それは1・4・11曲目を除いた殆どの曲が「ミドルテンポのさわやかなバラード曲」であること。中盤その傾向が強かったのがこの作品唯一にして致命的な要素になってしまった。彼女が柴田や竹井のように特定のジャンルに特化した歌い手ではないことから尚のこと問題になったといえよう。この何曲かに代わり「TRUE」「tomorrow」のような曲があれば、80点台の半ば以上は堅かった。彼女は中島や宇多田とは別の意味で自身の優れた才能すべてをアルバムに反映させられていないと思う。それさえできれば、孤高の存在になれる可能性があるのだが・・・。(2004/11/29更新)



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