一青窈

一青窈

 一青窈 「月天心」 2002・12・18 72点
もらい泣きの衝撃デビューから間髪いれずに発表された1stアルバム。彼女の魅力的な歌唱と独特の世界とを存分に堪能できる。しかし、業界やファンからの強い期待とは裏腹にアルバムの完成度には問題があった。まずは名曲「もらい泣き」を超えるとまではいかないでも、匹敵する曲がなかったこと。「あこるでぃおん」を始めとした、前半の落ち着いた曲調の曲はよかったのだが、中盤以降は、多様性に富んだ、というよりは、まとまりに欠けた完成度の低い楽曲が続いていたことが致命的であった。実験的といえば聞こえがいいとは思うが、不幸なことにもらい泣きのできが良すぎたがゆえに、このことはよりマイナス要素として認識されることになった。ネットの書き込みでも同様のことを書いていた人は多い。「翡翠」が入っていれば5点アップだったのだが。
今後は曲の絞り込みと楽曲の完成度を挙げる努力をしていかないと、いばらの道を歩まされることになるのではないだろうか。
 一青窈 「一青想」 2004・04・07 75点
一青窈待望の2ndアルバム。詞・歌・曲どれをとっても、1stアルバムからのより一層の進化・深化を感じ取ることができる秀作である。その深化・進化によってもたらされる音楽は、もはや孤高の存在といっても差し支えなかろう。作曲しているわけでもないのに、ここまで自己の世界観を表現することができるのは、詞・歌を始めとした一青窈のアーティストの資質の高さ以外の何者でもない。それは率直に尊敬に値する。但し、今作がよくできた作品であることは間違いないのだが、個人的に今作を「好き」かというと、残念ながらそうではない。
曲それぞれには、文学的素養を有した詞、並びにそれらによって表現された心象風景、さらに有力な作曲家によって作られた曲らによって、様々な趣向が垣間見えることもあり、面白みを感じる。しかし、完成度のばらつきや曲種の多種多様さが、作品全体としてのまとまりを希薄なものとし、全体として聞かせる魅力を低減させているように感じるからだ。デジタルチックなアレンジがいただけない「うやむや」や、やたらと長い語りを入れることに疑問を感じてやまない「一思案」、存在自体がよくわからない「INTERLUDE」。それ以外にも曲としてはかなり出来がよく面白い「面影モダン」「金魚すくい」といった曲らも合わせ、これら超個性的な曲の存在が、「大家」「ハナミズキ」といった王道的楽曲の魅力を低減させているように感じてならない。
上記ことも含めた彼女の根本的な問題、それは、トータルな作品性を打ち出すにはアルバム各曲のまとまりがなさすぎて、かといって個々の楽曲の魅力で勝負するには、完成度の低い曲が結構あり、ということで1stアルバムと同様に「総じて中途半端さを否めないこと」である。それを克服しない限り、私にとって彼女は、「力量を高く評価しながらもそれ以上のものを感じることはないアーティスト」で居続けるだけだろう。彼女に必要なのは、個々の曲によって確固たる個性・アーティスト性を打ち出すこと以上に、個々の曲の相乗効果によって全体をよりよく聞かせること、ではないだろうか。ファンの方には申し訳ないが、これが本音。(2004/04/29)



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