| 亜矢 「BAGHDAD SKY」 | 2004・06・09 | 89点 | |
| 90年代を疾走した女性HR・HM。しかし、それらはその時代の終わりと共にほぼ死滅してしまった。しかし、21世紀において、90年代HR・HMの醍醐味たる「破壊と力強さと美しさの高度な融合」という美学を継承した大型新人が登場する。その名は亜矢。今作はその亜矢の2作目。表立って知られてはいないが、アメリカやヨーロッパをはじめ世界40カ国でのリリースが決定したモンスターアルバムである。その扱いが決して過大なものでないことは、収録各曲が如実に証明している。 前作と同様、プロメタ的・グランジ的力強さと美しさを兼ねそろえた1曲目で、聞き手を亜矢の構築する破壊・エロス・耽美的自傷的愛・生きていくことの葛藤を鋭く描き出した音世界へ引きずり込む。王道メタルの基本に忠実な1曲目のつくりだが、だからこそ、それを当然の如くやってのける彼女の非凡さをうかがい知ることが出来よう。その後も重厚なサウンドとそれがつむぐ構築美と、亜矢の攻撃的で絡み付く激情歌唱をふんだんに生かした曲がこれでもかと展開されるのだが、表現力・曲のまとまり感・完成度・幅広さといった多くの点で以前より格段の進化を遂げたことがよくわかる。穏やかなギターサウンドと悲壮で深みのある歌唱とが胸を締め付けるかのような美しさを創出している4曲目「路上の影」、アコースティックサウンドと途中から切り代わる硬質なサウンドとやや気だるさを感じさせる歌唱とが見事なまでの退廃的な雰囲気を生み出している5曲目「We.」などは、1作目にはない多様さと成熟さの象徴であろう。ひとえに彼女の音楽的成長がもたらしたものである。それ以外の曲を見ても、ニルヴァーナ的グランジ曲そのものの2曲目、スラッシュメタル的突進力を有した8曲目、メロディックパワーメタル的9曲目など収録曲の出来は秀逸。見事というほかない。収録曲10曲とコンパクトに作品をまとめた潔さもよし。ただ、唯一気になったのは、音楽的・人間的成長によって、1作目にあった泥臭さや毒気が幾分薄れてしまったことか。人によっては退行と捉える人もいると考える。 ジャンルがジャンルであるし、亜矢のエキセントリックな歌唱、きわどい詞などに抵抗を感じる人もきっと多いことだろう。だが、こういった音楽を求める人であるのなら、きっと満足いただける一品ではないだろうか。ピアノ系バラードやノリのよい明るい曲に飽きた方、音楽に刺激を求めている方、日本人女性のメタルはどうも、と考えている方に是非とも聞いてほしい。世界標準の実力がここにある。(2005/02/08) | |||