上木彩矢 「ROCK ON」

上木彩矢

 上木彩矢 「ROCK ON」 2005・09・21 96点
1.CRAZY    2.NEED YOU   3.TO.. heaven    4.SAY!! WOH!!!!!
5.tear     6.DEEP     7.Amaze-迷宮-    8.January 28 〜two of us〜
ジャンル区分ハードロック ラウドロック パンクロック ヘヴィーメタル
良い点・加点要素天性のロッカーぶりを見せる歌唱 ロックの根源的な魅力を認識させてくれる優れた曲
減点要素・注意点もっともっと音質がよければ・・・
GIZAを代表する&ビーイング史上有数のハードロッカーであるのに、未だにインディーズ扱いである上木の2ndミニアルバム。しかし、その出来に関しては、インディーズ云々どころか、この手のジャンルの盟主として君臨できるぐらいのものがある見事な作品である。以前から彼女を高く評価していたし、その大物ぶりに舌を巻いてはいたが、まさかこれほどまでの作品を送り出してくるとは、私の想像の範疇を遥かに超えていた・・・。

作風に関しては、歌謡曲っぽさや小悪魔的魅力を押し出していた曲が減り、今作のタイトルが物語るように徹頭徹尾「ロック」した構成になっている。もはやそこに、アブリルっぽさや洋ロックの亜流的要素は微塵もない。「叙情性・退廃感・先鋭さ・攻撃性・反骨精神・人間愛・かわいさ・おちゃめさ」が渾然一体となった上木ならではの、上木にしかやれない音楽がある、ただそれだけである。しかし、それは彼女の優れた技術・天性のキャラクター性、優れた楽曲と演奏もあり、尋常ならざる完成度と魅力とを伴い聞き手を叩き伏せる。
すさまじい疾走感と流れるようなピアノ旋律、搾り出すかのようなエモーショナルな歌唱らが強烈なごあいさつとなっているピアノハードロックの1曲目。哀愁漂うラブバラード曲の2曲目。畳み掛けるような強引な歌い回しがお見事なハードロック曲の3曲目。ユーモラスな詞とそれを小悪魔的魅力をふりまきつつ愉快痛快に歌いあげているパンクロック曲の4曲目。「アイアン・メイデンですか!!?」と突っ込みを入れたくなるほどに、攻撃性と叙情性溢れるギターと力強く悲壮な歌唱がさえるメロディックメタル曲の5曲目。うねるようなサウンド攻勢と退廃感と慟哭に満ち満ちた歌唱がすさまじい6曲目。自ら作曲した王道ハードロックバラードの7曲目、情感たっぷりな歌唱が涙を誘う8曲目・・・。そのどれもがすさまじい。収録曲が少ないとの批判があるかもしれないが、それが、様々な人間感情を高密度に凝縮した楽曲を有効に提示するのに、多大な効果を果たしているように思う。その潔さはあっぱれと言う他ない。

今年に入ってからというものの、ハードな音楽が好まれる傾向となり、大手・マイナー問わず数々の実力者が出てきている。それらと上木との決定的な違いは、「荒々しさ、攻撃性」に溢れていることと、そのどれもでとことん「エモーショナル」であることにあろう。このことは、今のハードロックブームを構築しているラウドロックや様式美・構築美に重きをおいた「制御された情念系」にはない、または失いつつあるロックの根源的な魅力と言ってもいいのかもしれない。さらに、往年のロックの要素を見せながらも、決して古臭さを感じさせず、それどころかどこかしらおしゃれさも感じてしまうのは驚愕である。若者の鬱屈した感情や狂おしい愛憎を描いた詞もお見事。これはひとえに感情表現の押し引きを自在に演出する上木の優れた歌唱力と、努力や修練では決して得ることの出来ない、「ロッカー」としての天性の魅力、彼女のキャラクターの面白さによるものであろう。細かいところで突っ込むと、技術面や表現面ではまだまだ発展途上で甘いところもあるのだが、ロッカーとしての風格・魅力は圧倒的で、絶頂期の相川七瀬に比するかそれ以上のものを感じてならない。1・4・6曲目での歌唱を聞いて慄然としてしまった・・・。それでいて、次世代のファッションリーダーになれる可能性もある優れたビジュアルもあるから、怪物という他ないだろう。

唯一残念なのは、前作よりは格段に良くなったとは言え、彼女の実力・魅力に相応しいとは思えない音質レベル。そして今作が未だにインディーズ扱いであるということ。こんな素晴らしい才能を持つ人材を売り出さずして誰を売り出すのというのだ? 「あほかGIZAは」と言いたくて仕方がない。死ぬ気で売り出せや!! ハードロック好きの方は必聴の作品。
最後に。彼女のフェイバリットアーティストにアブリルの名が挙がっているが、個人的に既に上木はアブリルを越えていると思う。この調子で行けば、彼女の野望である「伝説のアーティスト」になるのも不可能でないかもしれない。(2005/09/25)


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