鈴里真帆 「23 stories〜best 14 singles + proud 9 songs〜」

鈴里真帆

 鈴里真帆 「23 stories〜best 14 singles + proud 9 songs〜」 2002・03・21 96点
1.heaven     2.永遠      3.紅いソファ
4.恋よりも大事なこと     5.Summer love affair    6.ココロガイタイ
7.ロマンス~ワタシの真実~    8.stray    9.D.D.D
ジャンル区分J−pop ハードロック
良い点・加点要素鈴里の優れた感情表現 各曲の完成度の高さ 
減点要素・注意点5曲目が他曲に比べて質が落ちる
評価はDISK1のみが対象。
鈴里真帆の5thアルバム。前作「I’m」において、発表当時には殆ど考えられなかった「ラウドロックやプログレを柱とした情念系音楽」を提示した鈴里。2002年に発表された今作においても、前作で培ったハードロック・ラウドロック路線を一部継承しながらも、今作発表当時には考えられない音楽を見せつけた。それは、ハードロックを柱としながらも、轟音サウンドや詞・歌唱による劇場表現ではなく、精緻なサウンド構成や丁寧な歌唱・詞表現などにより人間の様々な感情をより詳細に描いていこうとする「制御された情念系」である。
この音楽性は、技術より気持ちを歌に乗せることやや轟音サウンドが重視されがちな「情念系」と違い、詞・歌・演奏・編曲といった曲を構成するすべての要素において、レベルの高さとバランスのよさとが要求される難しい音楽である。

バンドサウンドをやや後退させたものの、デジタルサウンドや鍵盤楽器の積極的な導入と、それらとバンドサウンドととの高度な融合を果たした一部の隙もない丁寧な編曲。大人の女性の恋愛模様や葛藤を赤裸々且つ詳細に綴った詞。9曲の収録であるにも関わらず、ジャンル特定が不可能なくらいに多様性に秀でた曲を作れる作曲力。そして、それら優れた各要素につぶされることなく成熟した歌唱表現を見せる鈴里の歌唱力・・・。それらが高度に一体化し、激情表現や哀しみだけに縛られない様々な人間の感情を表現した音楽は、
軽快なギターと重厚な打ち込みによるグランジサウンドが秀逸なロックナンバーである1曲目、気だるさや退廃感を感じさせるサウンドとやや絞ったような歌唱が印象的な2曲目。切ないバラード曲である3・4曲目。ダークなハードロックバラードである6曲目。軽快なデジタルポップ曲である7曲目。鈴里の退廃感と切なさとを感じさせる歌唱とソウルフルなバックコーラス、隙なく打ち込まれる電子サウンドというみょうちくりんな構成が印象的なアップテンポナンバーである8曲目。軽快なギターサウンドと鈴里の早口歌唱が気持ちよい9曲目。
と実にすばらしい。優れたサポート陣営と、陳腐であるが、鈴里の天才的な資質によるものであろう。癒し系ブームが形成されている当時において、このような音楽を平然と生み出したのは驚きの他ない。しかも鈴里が今作で示した音楽性は2005年上半期において、ソニーや東芝のアーティストら中心に見うけられていることから、如何に時代を先取りした音楽をやっていたかということがわかる。だからこそ、商業的には成功しなかったのだろうが・・・。優れた資質を持ちながら時の流れに恵まれない人はいるものだ。

唯一の難点は5曲目が他曲に比べ弱かったことか。この1点がなければ、至高レベルの評価にしたのだが・・・。だが、それを差し引いても、勢いでは負けるものの完成度に関しては前作を凌ぐ物凄い作品だと言えるのではないだろうか。(2005/08/20更新)


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